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メンタルヘルスケアが必要な妊産婦は4万人 育児不安や虐待の原因に
2016年05月18日

メンタルヘルスケアが必要な妊産婦の数は、全国で年間約4万人(全妊産婦の4%)と推計され、介入が必要と考えられることが、厚生労働科学研究の研究班の調査で明らかになった。
半数はメンタルヘルスケアを受けず周囲から孤立
日本産婦人科医会によると、女性にとって妊娠・出産・育児は、ライフサイクルにおけるもっとも複雑なイベントで、特に出産したばかりの女性は、精神障害の発症の脆弱性をもちやすい。
妊娠・出産を契機に生じる母親のメンタルヘルスの問題は、育児不安だけでなく、母性喪失、育児ノイローゼ、育児放棄、児童虐待などににつながりかねない。乳幼児期の体験は脳の発達にも影響を与える。
研究班は、メンタルヘルスケアを必要とする妊産婦の割合を明らかにし、今後の支援につなげることを目的に、日本産婦人科医会の会員で分娩を取り扱う2,453施設を対象にアンケート調査を実施した。昨年11月の1ヵ月間に1,073施設(44.0%)から回答が得られた。
それによると、1ヵ月間の分娩数(3万8,895件)のうち、メンタルヘルスが必要と考えられた妊婦は1,551人(4%)だった。全国の年間分娩数は約100万人であり、この割合を当てはめると約4万人に相当する。
介入が必要と考えられた妊産婦は、24歳以下と35歳以上の年齢層が多い傾向があり、最頻値は25~29歳だった。
メンタルヘルスに介入が必要と考えられた理由は、「精神疾患の診断を受けていた」が29.6%で、17.8%が薬物治療を受けていた。「精神疾患の既往があった」が25.4%、「抑うつ・精神不安の疑いがあった」が38.4%だった。
背景として見られる家庭や生活環境としては、「結婚していない」18.1%、「貧困など生活面の問題がある」15.0%、「両親の離婚」11.7%、「実母と折り合いが悪い」11.3%、「夫との葛藤がある」10.8%などが挙げられた。
明らかに精神疾患と診断されておらず、精神疾患の既往がなかったにもかかわらずメンタルヘルスケアが必要と考えられた妊産婦は24.6%だった。
これらの妊婦は比較的若年で、半数近くはメンタルヘルスケアの専門職のアドバイスを受けることなく、周囲から孤立する傾向が強かったという。

妊婦の心の悩みを早期に発見し、支援に結びつける必要がある
妊産婦のメンタルヘルスケアに対応したのは、助産婦、産婦人科医、看護師などが約80%で、精神科医や臨床心理士が対応した例はわずかだった。産後の精神科医への紹介は22.4%にとどまっていた。
こうした状況をふまえ、研究班は、育児支援ネットワークなどの連携システムの機能的な運用に加え、妊産婦のメンタルヘルスケアを専門とする精神科医らを早急に確保する必要性があると指摘している。
研究代表者の大阪府立母子保健総合医療センターの光田信明氏は、「メンタルヘルスに問題のある妊産婦は実際にはもっと多いとみられる。妊婦さんの心の悩みなどを早期に発見し、支援に結びつける必要がある。産科と精神科との連携強化が重要で、産後の母子カウンセリングを公費負担で行えるよう自治体などに働きかける必要もある」と話している。
日本産婦人科医会妊娠等について悩まれている方のための相談援助事業連携マニュアル─妊産婦のメンタルヘルスケア体制の構築をめざして─(日本産婦人科医会 2014年3月) 関連する法律・制度を確認 >>保健指導アトラス【精神保健福祉】


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