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「ポケモンGO」を糖尿病の運動療法に活用 運動不足を解消できる

 熱狂的な流行を巻き起こし社会現象となっている「ポケモンGO」は、糖尿病の運動療法に活用できると、英国のレスター大学が発表した。「運動不足を解消する画期的な解決策になる」と研究者は指摘している。
ウォーキングはもっとも基本的な運動
 「ポケモンGO」は、スマートフォン向けゲームアプリで、部屋にこもりがちな人々を外に連れ出すことに成功し、社会現象を起こしている。

 スマートフォンなどの情報端末は、自らの位置を知らせる位置登録システムが付いているものが多い。「位置情報ゲーム」は、スマートフォンなどの位置登録情報を利用したゲーム。位置登録で得られる位置情報によってゲームを進めていく。

 「ポケモンGO」をプレーすると、スマートフォンの画面上に地図が表示され、その地図上にさまざまな情報が表示される。外出しないとスマートフォンに表示されるモンスターを捕まえられない、ポケストップに行かないとアイテムを獲得できない仕組みになっている。

 その効果は抜群で、「ポケモンGO」を始めると1日に数kmを歩くようになる。歩けば歩くほど、経験値が上がり、モンスターを多く捕らえられ、レベルを上げるチャンスを得られる。

 「自宅で過ごすときは、テレビの前の椅子やソファーに座ったままでいるという人が多くいます。ゲームが、立ち上がって外出して、ウォーキングを始めるきっかけになれば、運動療法をサポートする"革新的な解決策"となる可能性があります。ウォーキングはもっとも基本的で気軽に実行できる運動ですが、過小評価されています」と、英国のレスター大学糖尿病センターのトム イエイツ氏は言う。
2型糖尿病患者の80~85%が運動不足
 米国糖尿病学会(ADA)が2015年に発表した新しい治療ガイドラインでは、座らないで立ったまま過ごす時間を1日に1時間30分増やすことを奨励している。

 多くの人が1日の大部分の時間を座ったまま過ごしている。1日に8~13時間をデスクワーク、パソコンやインターネット、テレビの視聴、車の運転などの座業中心の生活に費やしている。しかし、体を動かさないで座ったまま過ごすことが、健康に対する重大な障害を引き起こすおそれのあることに、多くの人が気付いていない。

 ADAは「糖尿病をストップしよう」(Stop Diabetes)というキャンペーンを2010年に開始した。そこでは、2050年までに米国の成人の3人に1人が糖尿病を発症するというショッキングな予測をしている。

 糖尿病の問題を解決する効果的な手段のひとつは、座業時間が長くなったら、意識して椅子から立ち上がって体を動かすことだ。

 昼食時間にはウォーキングをし、手足を伸ばしてストレッチをし、休憩時間には下の階まで階段を昇降し水を飲み、通勤には車ではなく公共交通を使い、移動はなるべく徒歩や自転車で行うなど、「1日の座位時間を1時間30分減らす工夫」が必要だ。

 トロント大学の研究チームは、座ったまま過ごす時間が長いと糖尿病リスクが2倍に上昇するという研究結果を発表している。

 運動不足は肥満や2型糖尿病の最大の危険因子だ。英国では、2型糖尿病患者の80~85%が運動不足で、血糖コントロールの改善を妨げる要因になっているという。運動不足が原因で2型糖尿病を発症する危険性の高い人は500万人に上る。

 「糖尿病を予防・改善するために、中強度のウォーキングなどの運動を150分行うことが必要で、1日に10分は活発な運動を含めるべきです」と、イエイツ氏はいう。

 「しかし、運動をする習慣がない人が"今日からウォーキングを始めよう"と考えても、実行するのはなかなか難しいものです。位置情報ゲームを利用すれば、容易に目標となる運動量を満たすことがで可能です」としている。
気が付かないうちに長時間のウォーキングが可能に
 「ポケモンGO」の配信は、はじめに米国、オーストラリア、ニュージーランドで開始され、英国、カナダ、日本でも始められた。世界中で数百万人がプレイしており、子供だけでなく大人も巻き込んで、熱狂的にプレイされている。

 英国のマーケット ハーバラに在住しているトム ブース氏は45歳。2型糖尿病であり主治医から運動を勧められているが、社交不安障害もあり、運動を続けるのが困難だった。

 「最初はポケモンGOは子供向けのゲームと思っていましたが、流行っているので興味をもち、ダウンロードしてみました。その効果は驚くほどでした。ただのゲームだと思っていたのに、気がつくと夢中になり数kmを歩いていました。こんなことは、この数年ではじめてのことです」と、ブース氏は言う。

 「家に帰ると、体は疲れ切っていました。しかし、外に出てウォーキングをして、気が付かないうちに長時間、運動するのは、素晴らしい体験です」と、ブース氏は語っている。

 「ポケモンGO」の下地とっなった「イングレス」という位置情報ゲームの特徴は、外出しないとプレーできないこと。街に点在するポータルと呼ばれる場所を攻略することが基本であり、ゲームに使うアイテムもポータルから獲得するため、とにかくポータルをめぐってよく歩くようになる。

 こうした位置情報ゲームが作られたのは、開発者が晴れた日に家の中でゲームばかりしている我が子を見て、「なんとか外に連れ出す方法はないか」と思ったのがきっかけになっているという。

 「座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、体を動かし運動をする時間を増やすことは重要です。1日に30分間の運動をしても、残りの23時間30分をじっとして過ごしていたら、あなたの健康状態と活力を改善するためには不十分なのです。ゲームをきっかけに運動量を増やせれば、効果的な解決策なとる可能性があります」と、イエイツ氏は述べている。

Pokémon Go could ease Type 2 diabetes burden(レスター大学 2016年7月25日)
[保健指導リソースガイド編集部]
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