ニュース
「肥満症」を治療して、高血圧や糖尿病など健康障害を一気に改善
2016年10月28日

日本人は少し肥満になっただけで、高血圧、2型糖尿病、脂質異常症などの健康障害が起こりやすい。体重をわずか3%減らしただけで、これらのリスクを下げられるという。
講演会「内臓脂肪肥満の解消とスローカロリーライフ」が、日本肥満症予防協会・スローカロリー研究会・Jミルクの共催で、『STOP!肥満症』推進月間にあたる10月に開催された。開催された。「肥満症」の予防・対策のための具体的な方法を専門家が伝授した。
肥満がなぜ健康障害を招くのか
松澤佑次 先生(日本肥満症予防協会理事長)

日本人は軽度の肥満でも健康障害が起こりやすい
日本では、軽度の肥満でも糖尿病や高血圧、脂質異常症などを合併している人が多い。そうした人の腹部CT画像を見ると、腹腔内(おなかの中の腸の周り)に脂肪が多く蓄積されているケースが多い。日本を含むアジアでは、BMIが低くても内臓脂肪が蓄積しやすいため、内臓脂肪量を減らす治療と指導が重要となっている。
「肥満症」とは、肥満が原因となったり関連している健康障害を合併し、医学的に減量を必要とする病態をさす。健康障害を伴う肥満症は、治療をして体重を減らすと合併している健康障害を改善できる可能性が高いため、治療の対象となる。
一口に肥満といっても、健康障害を伴う場合と伴わない場合がある。健康障害を伴わない肥満も、放置しておくと将来にさまざまな健康障害が引き起こされるおそれがあるので、効果的な指導が必要だ。
軽度の肥満でなぜ健康障害が起きやすいのかを解明する研究の過程で、内臓脂肪の蓄積が病気を起こすメタボリックシンドロームの仕組みが分かり、その結果が特定健診・保健指導の基本的な方針につながった。
また、内臓脂肪はさまざまな「アディポサイトカイン」(生理活性物質)を分泌している。体重が増え肥満となり脂肪細胞が肥大すると、アディポサイトカインの分泌異常が生じ、食欲の増進や代謝の乱れが生じる。例えばTNF-αはインスリンの働きを悪くして血糖を上昇させ、PAI-1は血栓を作りやすくして動脈硬化を促進する。
内臓脂肪型肥満になると、血糖や血圧を下げ善玉といわれる「アディポネクチン」は減少し、糖尿病や高血圧を引き起こす。さらに、肥満になると、食欲抑制作用のある「レプチン」の作用が弱くなり、食欲を抑えにくくなる。
スローカロリーと内臓脂肪の密接な関係
宮崎 滋 先生(公益財団法人結核予防会理事、総合健診推進センター長、スローカロリー研究会理事長、日本肥満症予防協会副理事長)

体重をコントロールすれば健康障害を改善できる

糖質の「質」や「摂り方」にも注目
肥満症を改善するために宮崎氏が提案する食事法が「スローカロリー」だ。「スローカロリー」とは、体内でゆっくりと消化吸収される糖質のことで、糖質の「質」や「摂り方」に着目した考え方を指す。糖質がゆっくり消化吸収されることで、急激な血糖上昇や過激な脂肪蓄積を抑えることができる。
消化吸収の早い糖は小腸の入り口近くで吸収されてしまうので、摂取後の血糖値が急激に上昇してしまう。スローカロリーであれば、小腸全体でゆっくりと消化吸収されるため、血糖値の上昇を抑えることができる。血糖値の上昇がゆるやかであることは、「内臓脂肪がつきにくい」「血圧が下がる」などのメリットが得られる。また、満腹感や集中力を持続できるという。
「カロリー」や「糖質」という言葉を聞くと、多くの人が「ゼロ」「オフ」「カット」などの言葉を連想するが、「エネルギーの量のみで判断するのではなく、糖質の体内での使われ方や吸収のされ方など、"質"を考慮するべきだ」と、宮崎氏は指摘している。
肥満症診療の現在―チーム医療とコメディカルのミッション―
齋藤 康 先生(千葉市病院事業管理者、日本肥満症予防協会副理事長)


掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2021 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2021年01月28日
- 【オピニオン新連載】行動科学に基づいた保健指導スキルアップ~対象者の行動変容を促すには?~
- 2021年01月26日
- 【新型コロナ】接触確認アプリ「COCOA」がコロナ禍の心理的ストレスを減らす? 企業従業員の心の健康をどう守るか
- 2021年01月26日
- スマホの運動アプリで1日の歩数を2000歩増やせる 新型コロナをきっかけに、運動への関心は世界中で拡大
- 2021年01月26日
- 「脂肪肝」が手遅れになる前にスマホで早期発見 病気と認識してきちんと対策 「脂肪肝プロジェクト」を始動
- 2021年01月26日
- 人工知能(AI)を活用して大腸がんを高精度に発見 医師とAIが一体となり、がん検査の見逃しをなくす
- 2021年01月25日
- 「内臓脂肪」と「腸内細菌」の関係を解明 肥満の人で足りない菌とは? 腸内細菌のバランスが肥満やメタボに影響
- 2021年01月25日
- コレステロール高値で高尿酸血症のリスクが上昇 メタボリックシンドロームと高尿酸血症の関連に新たな知見
- 2021年01月19日
- 【新型コロナ】「自然」の豊かな環境でストレスを解消 心の元気を保つために「行動の活性化」を
- 2021年01月18日
- 「和食」が健康にもたらすメリットは多い 5割が「健康に良い」、8割以上は「和食が好き」
- 2021年01月18日
- 冬の「ヒートショック」を防ぐ6つの対策 急激な温度変化は体にとって負担 血圧変動や脱水に注意
最新ニュース
- 2021年03月05日
- 【健やか21】「女性の健康週間」特設Webコンテンツの公開について(厚生労働省)
- 2021年03月04日
- 「新常態の働き方を考える」へるすあっぷ21 3月号
- 2021年03月02日
- 【新型コロナ】ワクチン接種の利益とリスクを正しく理解し判断を 感染症学会「有効性は高く、副反応は一過性」
- 2021年03月02日
- なぜ体重は正常なのに「代謝異常」に? 体脂肪の「質」が肥満・メタボや糖尿病に影響 順天堂大学
- 2021年03月02日
- 女性が多量飲酒をすると乳がんリスクが1.7倍に上昇 女性ホルモンが影響か 日本人女性16万人対象の大規模調査
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ