ニュース

植物性食品ベースの食事療法で2倍の減量に成功 筋肉脂肪を減らす効果も

 減量のための食事は、カロリーだけでなく質に気を配るべきかもしれない。植物性食品がベースの食事療法を6ヵ月続けた糖尿病患者は、同じカロリー制限をしたが内容は従来通りだった患者に比べ、2倍の減量に成功したという研究が発表された。責任ある医療のための医師委員会(PCRM)によるこの研究は、米国栄養学会誌に発表された。
植物性食品ベースの食事療法で筋肉脂肪が減少
 研究に参加した74人の2型糖尿病患者は、ふだんの食事よりもエネルギー摂取量を500kcal減らした食事を6ヵ月続けた。研究チームは参加者を2つのグループに無作為に分け、1つめのグループには植物性食品がベースの食事を(菜食群)、もう1つめのグループには通常の糖尿病食を摂ってもらった(通常食群)。

 PCRMのハナ カフレヴァ氏らの研究チームは、脂肪蓄積を測定するために、磁気共鳴画像法を用いて、研究の参加者の太ももの組成をベースライン時、3ヵ月後、および6ヵ月後に検査した。さらに、HbA1c、空腹時血漿グルコース、インスリン感受性の変化、血糖代謝および制御のマーカー、皮下および皮下脂肪の変化を調べた。

 菜食群のメニューは、例えば朝食にプラムとアーモンドを加えた全粒粉のコーンフレークとミルク、昼食にキャベツとニンジン、レンズ豆を入れたスープ、昼食に玄米と豆腐、芽キャベツを入れたサラダ、間食に低脂肪のプレーンヨーグルト、ニンジン、セロリなどの野菜や果物のスティックなどから構成された。ビタミンB群、オメガ3脂肪酸、カルシウム、ビタミンD、鉄分などが不足しないよう考えられたメニューが作られた。

 その結果、両群とも減量に成功したが、同じ量のエネルギーを摂取していたにも関わらず、菜食群では体重を平均して約6.2kgを減らし、通常食群の約3.2kgの2倍を減らすことができた。腹囲周囲径も、菜食群では6cm減り、通常食群では5cm減った。

 どちらのグループも皮下脂肪、つまり皮膚の下に蓄積される脂肪を減らしたが、植物性食品がベースの食事療法を続けたグループは、従来の食事療法を続けたグループに比べ、筋膜下に蓄積される筋肉脂肪をより多く減らし、脂肪筋を減らすことができた。さらに皮下脂肪を38cm²以上、脂肪筋を1.21cm²以上、全脚面積で脂肪を3.7cm²以上、それぞれより多く減らした。
筋肉量を減らさず、脂肪筋を減らす 糖尿病は改善できる病気
 「筋肉に蓄積された脂肪を減らすと、インスリン感受性を改善できます。筋肉から余分な脂肪を取り除くことで、血糖を下げるインスリンの働きがよくなり、血中のグルコース(ブトウ糖)をエネルギーに換えやすくなります。エネルギーの代謝が良くなることは、特に体重が増え過ぎた2型糖尿病の患者さんにとっては、血糖コントロールを改善するために効果的です」と、カフレヴァ氏は言う。

 参加者には食事療法に取り組むと同時に、運動療法にも取り組んでもらった。驚くことに、植物性食品がベースの食事療法に取り組んだグループの方が、運動療法を維持した割合が高かった。さらに、研究開始後の3ヵ月後と6ヵ月後に、食事で満腹感が得やすくなり、エネルギー消費量も向上していたことが確認された。

 1~2ヵ月の血糖値の平均を示すHbA1cは両群とも7%台まで改善したが、菜食群では糖尿病の治療薬を増やしたり、血中のインスリン濃度が上昇する割合が低かった。

 「多くの人が歳を重ねるにつれて筋肉量を減らしていきます。筋肉量を減らさないことと、脂肪筋を減らすことに着目すれば、植物性食品が中心の食事療法は、健康な状態を維持するために効果的であることが示されました」と、カフレヴァ氏は言う。

 「野菜中心の食事では活力が失われるのではないかと心配する人もいますが、ふだんの食事で不足しがちな食物繊維、ビタミン、ミネラル、フィットケミカルなどの栄養素を十分に摂取するようにすれば、体をリフレッシュした状態に保つことは可能です」と強調している。

 研究に参加したある患者は「以前は明らかな肥満でした。糖尿病は進行性の病気で、歳をとるにつれ悪化していくと考えていました。しかし、体重を10kg近く減らすのに成功した現在では、糖尿病は改善できる病気であると自信をもてるようになりました」と語っている。

Plant-Based Diets Best for Weight Loss and Diabetes(責任ある医療のための医師委員会 2017年6月12日)
The Effect of a Vegetarian vs Conventional Hypocaloric Diabetic Diet on Thigh Adipose Tissue Distribution in Subjects with Type 2 Diabetes: A Randomized Study(Journal of the American College of Nutrition 2017年6月10日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶