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【新型コロナウイルス】うつ病を防ぐための食事スタイル 食事改善でメンタルを強くする
2020年04月28日
食事を変えればうつ病を防げるかもしれない――ストレスとうつ病の間に関係があることは広く知られているが、実は食事スタイルも深く関わっていることが、最近の研究で分かってきた。
食事を改善してうつ病を予防
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、日本だけでなく世界中で、うつや不安障害の症状を訴える人が増えている。
食事を改善することが、うつ病に対する新しいアプローチとして注目されている。
食事で適切な量をバランス良く摂ることに加えて、生活リズムを整え、十分な休養をとることで、心身に良い影響があらわれる。
うつ病を改善するための食事スタイルは、2型糖尿病や肥満を予防・改善するための食事療法と共通する部分が多い。糖尿病や高血圧、肥満などを改善することが、うつ病の予防にも役立ちそうだ。
全粒穀物、野菜、低脂肪の乳製品が効果的
米国のラッシュ大学医療センターの研究によると、「DASHダイエット」と呼ばれる食事スタイルが、うつ病の予防や改善に効果的だ。
「うつ病は高齢者で多く見られます。高血圧や糖尿病、高コレステロール、脳卒中など、血管の障害が起こりやすい人も、うつ病のリスクが高いことが知られています」と、ラッシュ大学血管神経科学のローレル チェリアン氏は言う。
「全粒穀物、野菜、果物、低脂肪の乳製品などを十分に食べ、食事を改善することで、うつ病のリスクを低下できる可能性があります」と、チェリアン氏は言う。
うつ病を予防するための食事スタイル
「DASHダイエット」は高血圧の予防・改善のために開発された食事スタイルで、玄米や全粒パンなどの全粒穀物や、低脂肪の肉や乳製品、野菜や果物、ナッツや豆類などを積極的に摂ることが勧められている。
一方、「地中海式ダイエット」は、野菜・果物・豆類などの植物性食品と、地中海地域の特産のオリーブオイル、新鮮な魚介類などを組み合わせた食事スタイルで、肥満やメタボの予防効果があることが知られる。
ラッシュ大学は、平均年齢81歳の964人の高齢者を対象に、約6年半追跡して調査した。この研究は、米国立老化研究所の助成を受けて行われた。参加者に食事についてのアンケートに答えてもらい、うつ病の発症について調べた。
その結果、「DASHダイエット」を行った人では、そうでない人に比べ、うつ病の発症率が11%低かった。
和食もうつ病の予防に効果的
うつ病の発症率がもっとも高かったのは、「西洋式ダイエット」を続けていた人だった。
「西洋式ダイエット」とは、加工度の高い高カロリーの食品(ハムやソーセージなどの加工肉、ポテトチップス、清涼飲料・菓子類など)を多く摂っている食事スタイル。体に悪い飽和脂肪の摂り過ぎにつながり、野菜や果物が不足しやすい。
こうした食事を続けると、栄養バランスが崩れ、必要な栄養素を摂取できなくなり、カロリーの摂り過ぎにより肥満にもなりやすい。
日本人の伝統的な「和食」も、カロリーを抑えられ、魚が多く飽和脂肪酸が少なく、野菜を多く摂れるので、健康的な食事として人気が高い。
「和食」がうつ病の予防に効果的だと考えられており、その健康効果について研究が進められている。
ただし日本食には、塩分が多く、乳製品の摂取が少なくカルシウム不足になりやすいという欠点もある。塩分を少なめにして、乳製品の摂取をこころがけると、バランスが良くなり、栄養素を過不足なく摂取できるようになる。
うつ病を予防する生活スタイル
うつ病は肥満や糖尿病とも関連が深い
研究グループは、うつ病患者と対照者を含む1万1,876人の日本人を対象とした大規模な調査を実施し、うつ病と体格、肥満、2型糖尿病などの生活習慣の関連について総合的に検討した。
その結果、うつ病は肥満やメタボリックシンドロームと関連が深く、脂質異常症の人の割合は、うつ病の人ではそうでない人に比べ1.53倍多かった。
また、うつ病の人では糖尿病も発症している割合が1.48倍に上昇した。
さらに、うつ病の人は、朝食をほぼ毎日食べる割合が少なく、間食や夜食をほぼ毎日食べる割合が高く、中等度の運動をしている人の割合も低かった。
腸内の善玉菌が少ないとうつ病リスクが高い
これらに加え、腸内環境を整えることも、うつ病の予防に有用であることが分かってきた。
功刀浩氏らの研究では、腸内のビフィズス菌などの善玉菌が少ない人はうつ病リスクが高いことも分かっている。
健康的な食事スタイルは、腸内環境にもやさしい。食物繊維が豊富な全量穀物、野菜や果物を食べていると、腸内細菌が増えやすい。
逆に、肉類や魚介類、卵、乳製品などに含まれている動物性タンパク質や脂質の多い食事に偏ってしまうと、悪玉菌が増える原因になる。
プロバイオティクスが有用である可能性
研究では、ビフィズス菌の便1g当たりの量が109.53個以下である割合が、健康な人では23%であるのに対し、うつ病の人では49%に上り、うつ病の人ではビフィズス菌が少ないことが分かった。
腸内のビフィズス菌が少ないと、うつ病の発症リスクは3倍に上昇するという。
ふだんの食事が腸内細菌に深く影響している。ビフィズス菌や乳酸菌を多く含む乳酸菌飲料、ヨーグルトなどの摂取頻度と腸内細菌の関係を調べたところ、うつ病患者の中で週に1回未満した摂取していない人は、週1回以上摂取している人に比べ、腸内のビフィズス菌の菌数が少なかった。
最近の研究では、腸内細菌は脳の機能にも影響を与えることが分かっており、「腸―脳相関」が注目されている。
ストレス症状に対するプロバイオティクス(生きた善玉菌を含む食品)の効果を報告した研究は増えている。
うつ病の治療や予防として、服薬やストレスの対処などが大きいと考えられているが、それらに加えて栄養学的アプローチも重要な役割を果たしている可能性がある。
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、多くの人が不安な日々を過ごしている。そんな時だからこそ、食事には十分に注意したい。
DASH-Style Diet Associated With Reduced Risk of Depression(ラッシュ大学 2018年2月26日)国立精神・神経医療研究センター
Association of obesity with cognitive function and brain structure in patients with major depressive disorder(Journal of Affective Disorders 2017年8月16日)
Association of depression with body mass index classification, metabolic disease, and lifestyle: a web-based survey involving 11,876 Japanese people(Journal of Psychiatric Research 2018年3月19日)
Possible association of Bifidobacterium and Lactobacillus in the gut microbiota of patients with major depressive disorder(Journal of Affective Disorders 2016年9月15日)
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