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更年期を迎えた女性の「ホルモンケア」 がむしゃら世代の4割が「我慢」
2017年04月05日

仕事や生活にひたむきに取り組んできた「がむしゃら」世代の女性が更年期を迎えて、4割以上が体調不調を感じても我慢してやりすごしていることが、「ホルモンケア推進プロジェクト」の調査で明らかになった。
体の不調を相談できる「かかりつけ医」をみつけることが、女性の一生の健康を左右すると、専門家はアドバイスしている。
体の不調を相談できる「かかりつけ医」をみつけることが、女性の一生の健康を左右すると、専門家はアドバイスしている。
女性ホルモンのバランス変化を考えた「ホルモンケア」
責任のある仕事を任されたり、仕事と子育ての両立や介護など、多くの女性が多忙な時期を迎える30代後半以降に、女性ホルモンのレベルは低下しはじめ、仕事や私生活に多大な影響を及ぼす可能性が高くなる。
「ホルモンケア推進プロジェクト」は、医療、美容、栄養、キャリアカウンセリングなどの専門家が集い、女性ホルモンのバランス変化を考えたケア「ホルモンケア」の実践を推進する活動をしている。
同プロジェクトは、更年期にさしかかってくる40歳~50歳代の女性333人を対象に、「更年期世代女性の体調変化と心理状態」調査(2017年3月インターネット調査)を実施した。
がむしゃら世代の女性の4割が不調を「我慢」
それによると、全体の67.3%の女性たちが「他人から"がむしゃらだ"と言われた経験がある」と回答。これらの女性の71.0%が「やりたいこととやるべきことのうち、やるべきことを優先する」などと回答し、責任感が強くストイックである傾向がうかがえた。
さらに、約7割が周囲に助けを求めたり、弱音を吐いたりするのも苦手で、現状に満足せず、約6割が「今以上頑張らなくてはいけない」と思っていることも明らかになった。体調の変化に対してもストレスに感じながらも、誰にも相談せず自身で抱え込み、我慢していることが推測される。
ここ5年での身体や体調の変化について聞いたところ、54.0%が「体調変化を非常に感じている」と回答。ストレスを感じているときに、自身の不調に対して「我慢してやりすごす」(41.5%)という対処をすることが多く、「病院へ行く」(26.8%)という女性は少数であることが示された。
閉経前後のホルモンバランスの乱れにより不調が起こる
女性にとって、妊娠・出産以外で訪れる体の大きな変化は、「生理」の始まり(初潮)と終わり(閉経)だ。日本産科婦人科学会によると、日本女性の平均閉経年齢は約50歳。
こうした調査結果について、世代・トレンド評論家の牛窪恵氏は「40~50歳代女性では、50歳前後から閉経前後のホルモンバランスの乱れによって、頭痛やめまい、ほてり、イライラなどさまざまな不調に悩まされる女性が多い。それにも関わらず、彼女達はその辛さを顔に出したり弱音を吐いたりはしません。なぜならそれは、自分に対する"甘え"だから。多くの40~50代女性は"自分に負けたくない"と考え、がむしゃらに頑張り過ぎてしまう傾向にあります」と言う。
現在の更年期世代の多くは「バブル世代(47~58歳)」で、青春時代、右肩上がりの経済を背景に「頑張ればいいことが待っている」と信じ、何事にも失敗をおそれず、ポジティブに挑戦したきた。1980~90年代のまだ男女雇用機会均等法が社会に浸透する以前の日本で、旧態依然とした社会と戦ってきた。「女性の精神的自立」という新時代を自ら開拓し、「自分に負けまい」という気持ちをもっているという。
「ただ、更年期による体調不良は、誰にでも起こり得る生理現象。この事については、がむしゃらに頑張り過ぎることなく、節目節目で立ち止まり、自分の体の声を聞き、時には外部に助けを求めるなど、適切な情報収集や処置に向けて踏みだして欲しい」と、牛窪氏は言う。
女性ならではの健康リスクを理解したほうが良い
産婦人科医の吉野一枝氏は「過去、女性たちは生涯において閉経までにおおよそ10回程度出産を経験しましたが、現代女性においてはその回数が減っています。そのため、過去の女性たちは生涯での月経回数が約50回程度だったのが、現代女性は約450回と9倍に。しかし、その一方で女性ホルモンの仕組みは進化していません。現代女性たちは、毎月排卵と月経を無駄に繰り返していることになり、排卵月経が増えることで子宮内膜症・子宮体がん・卵巣がん・乳がんなどの健康リスクが増加しています」と解説している。
女性ホルモンは35歳付近からゆっくりと低下していき、40歳代に突入すると急降下する。そして、閉経後はエストロゲンがほとんど出なくなる。男女では健康問題が異なり、女性は女性ならではの健康リスクについてきちんと理解したほうが良いという。
「女性ホルモン(エストロゲン)は健康ホルモンであるとも言え、女性の全身の健康を守っています。よって、エストロゲンが低下していくタイミングで、コレステロール・肝機能異常・肥満・高血圧などの生活習慣病リスクが高まることがわかっています。また、エストロゲンの受容体は全身にあるため、皮膚・髪・骨・精神などにも影響があり、"ちょっとした変化"が女性ホルモン減少のサインと覚えておきましょう」と、吉野氏は解説する。
体の不調を我慢せずに適切な処置を
更年期の症状は、女性ホルモン低下以外に、心因的ストレス(夫婦関係、育児、仕事、介護など)と、「ストレス」をどうとらえるかという性格的要因も大きく関係しており、人によっては日常生活に支障をきたしてしまうことも。女性が健やかに生活していくためには、自身の不調に向き合い、我慢せずに適切な処置をすることが重要になる。
更年期症候群の治療法としては、漢方・ホルモン剤(低用量ピル、ホルモン補充療法)、精神安定剤、自律神経用剤などがある。また、バランスのとれた食事・サプリメント摂取・十分な睡眠・適度な運動・ストレスマネジメントなども、治療効果をより高められると期待できる。
サプリメントの例としては、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンを活性させる「エクオール」などがある。このように様々なアプローチがあるため、ちょっとした不調を相談できる「かかりつけ医(ホームドクター)」をみつけることも、女性の一生の健康を左右するという。
ホルモンケア推進プロジェクト」
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