第30回 日本産業ストレス学会「産業ストレスの研究と実践の新たな幕開け」
IT活用が進む時代でのメンタルヘルス対策 専門職ができることとは
2022年12月2日~3日、東京都・一橋大学一橋講堂で「第30回 日本産業ストレス学会」が開催された。
本大会は「産業ストレスの研究と実践の新たな幕開け」をテーマに、現地開催およびライブ配信も行われた。会期中(12月3日)の登録者数は約1,100名(現地参加:約700名)。
創立30周年を記念したシンポジウムなどが設けられ、産業ストレス研究のこれまでの歴史から今後のあるべき姿を展望できる2日間となった。
第30回 日本産業ストレス学会10年後のあるべき姿 大きな変貌を遂げた産業ストレスの研究と実践
日本産業ストレス学会(理事長:堤 明純氏/北里大学)は、産業ストレスおよびその対策に関する学術研究ならびに実践活動を行い、働く人々の健康維持増進に資することを目的とした学術団体である。
主に産業医・臨床医・看護職・心理職・弁護士・大学関係者が会員として所属し、2019年には新たに人事・労務部会が創設されるなど、研究分野から実践的な対応まで幅広くフォローできる学際的な構成となっている。
このほど開催された第30回日本産業ストレス学会「産業ストレスの研究と実践の新たな幕開け」(大会長:大塚泰正氏/筑波大学、吉内一浩氏/東京大学)では、同学会が歩んできた歴史の振り返りと今後の展望を語る講演が行われた。
大会長講演1「社会情勢や働き方の変化と産業ストレス」
大会長を勤めた大塚泰正氏が登壇し、日本産業ストレス学会が設立された1993年以降の日本の社会情勢と産業ストレスの変遷を振り返りながら、時代の流れに応じて変化を遂げてきた本学会の歴史を紹介した。
また、2019年11月に設置された将来構想委員会では「学会の10年後のあるべき姿」や目標について検討を行っていることが示された。
近年は、新型コロナウイルス感染症の影響による働き方の変化や、従来の産業ストレス対策の枠組みでは対応が困難な状況も生じつつあり、大塚氏は、テレワークなどの多様な働き方が広まる一方で、企業の「人」に対する投資が減っていることに言及。これからは「人が人を助けること」がキーワードになるとし、時代に合ったソーシャルサポートでストレスを緩和する仕組みづくりを産業ストレス学会が先導していく価値を語った。
大会長講演2「産業ストレス分野で盲点となっている摂食障害の最新情報」
同じく大会長を勤めた吉内一浩氏は、産業ストレス分野における摂食障害を取り上げた。
摂食障害は女性の罹患率が高く、低体重を伴う神経性やせ症では身体合併症による死亡リスクがあることや、自殺率の高さから、若者の精神疾患の中で最も死亡率の高い疾患の一つであることなどをはじめ、その特徴や留意するべき点を紹介した。
吉内氏は、摂食障害に関するガイドラインが公開されている「摂食障害情報ポータルサイト」などを活用し、専門職が本疾患に関する知識を持ち、早期発見・早期治療につなげることが重要と述べ、産業保健の現場でも"摂食障害の可能性"を念頭に置き、サインを見逃さないことが大切だと強調した。
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