ニュース

「腸内環境」は植物性食品で整えられる 肥満やメタボの人は「腸内エコシステム」が乱れやすい

 野菜、果物、脂の多い青魚、マメ類、ナッツ類、食物繊維の多い全粒穀物、ヨーグルトなどの発酵乳製品などをよく食べている人は、腸内環境が良好で、炎症を抑える脂肪酸が多いことが明らかになった。
 一方、ファストフードや加工食品、糖質の多い食品、アルコールなどをよく摂っている人の腸内では、炎症を促進する腸内菌が多いことも分かった。
肥満やメタボの人は腸内環境が乱れやすい
 食物繊維を多く含む植物性食品を豊富に摂ると、腸内細菌叢のバランスが良くなり、炎症をやわらげる働きをする腸内菌が増えるという研究を、オランダのフローニンゲン大学の研究グループが発表した。

 一方で、動物性食品、加工食品、アルコール、糖質の多い食品を摂り過ぎていると、腸内細菌叢のバランスが悪くなり、炎症が促される可能性がある。食事内容を改善することで、体の炎症を抑えられる可能性がある。

 腸内フローラは複雑な腸内微生物生態系、すなわち「腸内エコシステム」を形成している。腸内エコシステムは健康維持のために重要で、バランスが崩れると1型糖尿病、2型糖尿病、肥満、炎症性疾患、不眠、うつ病など、さまざまな疾患に関わっていることが分かってきた。

 これまで、肥満や2型糖尿病の人は腸内エコシステムが乱れやすいことや、内臓脂肪の多い人は腸内の善玉菌が減りやすいことなどが報告されている。腸内環境を健康的にコントロールすることで、インスリンを産生するβ細胞を増やしたり機能を改善できる可能性があることを示した研究もある。
腸内環境を改善すると腸内の炎症反応を抑えられるかを調査
 ヒトの大腸内には、500〜1,000種類もの腸内細菌がすみついている。この菌のかたまりを腸内細菌叢(マイクロバイオーム)という。マイクロバイオームは、炎症を抑える短鎖脂肪酸などの物質を供給し、宿主の全身の炎症反応に影響していると考えられている。

 この腸内環境は免疫にも影響を及ぼし、バランスが崩れると、糖尿病や肥満、心臓病、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患まで、さまざまな炎症反応に影響すると研究グループは述べている。

 しかし、毎日の食事パターンを改善することで、腸内細菌叢の組成に影響を及ぼし、腸内の炎症反応も改善できるかどうかはよく分かっていない。

 そこで研究グループは、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群)のある患者と腸が正常の対照群、合わせて1,425人を対象に、毎日の食事、腸内細菌、腸内炎症の相互作用を調べた。

関連情報
健康的な食品で腸内環境を整えられる 炎症も抑えられる
 研究グループは、参加者の食事内容については食物摂取頻度調査(FFQ)に記入してもらい、腸内細菌叢については対象者から提供された便検体を解析した。

 その結果、食事摂取量と特定の腸内菌とのあいだに38の関連性があることが示された。さらに、61種類の食品と栄養素は、61種の細菌と249種類の代謝プロセスに関連していることが分かった。

 解析した結果、野菜、果物、脂の多い青魚、マメ類、ナッツ類、食物繊維の多い全粒穀物、低脂肪のヨーグルトなどの発酵乳製品などをよく食べている人の腸内では、短鎖脂肪酸を生成するフィーカリバクテリウムなどの"善玉菌"が豊富に含まれていた。

 短鎖脂肪酸とは、腸内菌がつくる、酪酸、プロピオン酸、酢酸などが含まれる有機酸のこと。腸上皮細胞の重要なエネルギー源となり、炎症を抑えるなどの生理的な作用を発揮する。短鎖脂肪酸には、腸内を弱酸性の環境にすることで、有害な菌の増殖を抑制する作用もある。

 短鎖脂肪酸を増やすために、体内にいる腸内菌が必要で、そのエネルギー源となるのは食物繊維やオリゴ糖だ。

 一方、こうした食品とは正反対のファストフード、すなわち加工肉やフライドポテト、糖質の多い飲料、スナック類など、動物性食品や加工食品をよく食べている人は、食物繊維が不足しており、腸内ではフィルミクテス門やルミノコッカス属など、炎症の誘発を活性する菌が多かった。
ファストフードや加工食品ばかり食べていると腸内環境が乱れやすい
 さらに、糖質の多い食品の摂り過ぎ、アルコール飲料の飲み過ぎも、腸内の"善玉菌"を減らす一因となっている可能性も示された。ただし、赤ワインを飲んでいる人は、短鎖脂肪酸を生成する菌が多い傾向がみられた。

 「野菜、果物、魚、ナッツ類、食物繊維の多い全粒穀物などの植物性食品、ヨーグルトなどの発酵乳製品をよく摂っている人は、腸内細菌叢を介して腸の炎症反応を抑えられている可能性があります。一方で、高脂肪の加工肉、高カロリー飲料、アルコール飲料などは、炎症を促すおそれがあります」と、フローニンゲン大学消化器・肝臓学部のリンス ウィースマ教授は述べている。

 「食事スタイルは、腸内細菌叢に強い影響をもたらします。プロバイオティクスのサプリメントなどを利用するよりも、まずは食事内容を見直すべきでしょう」との見方を示している。

 「今回の研究は観察研究であり、原因を特定することはできません。さらに、食事を改善すると、腸内菌が反応するのにどれくらいの時間がかかるかは明らかになっていません」と、研究者は付け加えている。

Diet rich in animal foods, alcohol and sugar linked to 'inflammatory' gut microbiome(BMJ 2021年4月13日)
Long-term dietary patterns are associated with pro-inflammatory and anti-inflammatory features of the gut microbiome(Gut microbiota 2021年4月2日)
'Ridiculously healthy' elderly have the same gut microbiome as healthy 30-year-olds(ウェスタン大学 2017年10月11日)
The Gut Microbiota of Healthy Aged Chinese Is Similar to That of the Healthy Young(米国微生物学会 2017年10月11日)
Several reasons why whole grains are healthy(デンマーク工科大学 2017年11月2日)
Whole grain-rich diet reduces body weight and systemic low-grade inflammation without inducing major changes of the gut microbiome: a randomised cross-over trial(Gut 2017年11月1日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶