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失業や再就職で脳卒中リスクは上昇 男性の方が女性よりも深刻

 失業すると脳卒中による死亡リスクが高まる可能性があることが、大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学などの研究グループの調査で明らかになった。 再就職すると、男性では脳卒中リスクが高まるが、女性ではあまり変化は出ないという。
失業すると長期的な身体的健康が悪化する
 「JPHC研究」は、日本人を対象にさまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。

 今回の研究では、1990年と1993年に岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所に在住していた45~59歳の男女4万1,728人を対象に約15年間追跡した。

 研究では、就労状況の変化が、その後の脳卒中発症や死亡リスクにどのように影響するかを男女別に分析した。

 就労状況は健康に影響を与える重要な要因となり、一般的に失業者は就労者に比べて健康状態が悪いことが報告されている。

 しかし、過去の研究の多くは、気分の低下や抑うつなどの精神的健康に焦点をあてた短期的な影響をみたもので、長期的な身体的健康への影響を調べた調査は少ない。

 今回の研究では、アンケート調査の結果を用いて、研究開始時の就労状況と5年後の調査時の就労状況から、就労状況の変化を、(1)継続して有職、(2)仕事を失った(有職から無職へ)、(3)再就職した(無職から有職へ)、(4)継続して無職の4つに分類し、その後の脳卒中発症・死亡のリスクを算定した。
男性では再就職した人の脳卒中のリスクも高い
 その結果、継続的に就業していた対象者に比べて、失業したことのある対象者では脳卒中リスクが高いことが分かった。

 失業すると、男性では脳卒中を発症するリスクは1.76倍、脳卒中による死亡リスクは3.00倍に上昇した。女性でも同様に、失業すると脳卒中の発症リスクは1.38倍、死亡リスクは1.98倍に上昇した。

 また、再就職した男性でも脳卒中リスクは高く、脳卒中の発症リスクは2.96倍、死亡リスクは4.21倍にも上っていた。一方、再就職した女性では、脳卒中の発症リスクは1.30倍、死亡リスクは1.28倍とあまり変わらなかった。

なぜ失業経験が脳卒中リスクを上昇させるのか?
 研究グループによると、失業の経験が脳卒中リスクを上昇させる理由として、失業による生活習慣や精神状態の変化が考えられるという。

 過去の研究では、職を失うと飲酒量が増えたり、抑うつなどの精神健康が悪化したり、精神的ストレスが増加したり、社会的排除による孤独などが起こる傾向が報告されている。

 こうした職業を失うことにより起こるさまざまな変化が脳卒中リスクを上昇させている可能性がある。
なぜ男性では再就職しても脳卒中リスクが高いのか?
 欧米の研究では、再就職することで、生活習慣の改善、経済的安定による精神的ストレスの減少など、健康に良い影響が出てくることが指摘されている。

 しかし、今回の日本人を対象とした調査では、再就職による脳卒中リスクの上昇がみられた。この理由は、再び得た職業を失わないために無理をすることや、失職を恐れることによる精神的ストレスの増加などが考えられるという。

 再就職の影響では、男性の方が女性に比べて大きく、性差がみられた。「男性の再就職者や失職者での脳卒中リスクが、継続的に就労している人よりも高いので、再就職者や失職者の健康管理にも注意する必要がある」と、研究者は指摘している。

多目的コホート研究「JPHC Study」(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)
Changes in the Employment Status and Risk of Stroke and Stroke Types(Stroke 2017年4月6日)
[Terahata]
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