オピニオン/保健指導あれこれ
日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会

No.3 開業に向けて ‐開業準備や時期について ‐

一般社団法人 日本開業保健師協会 会長
村田 陽子

 開業に向けて大事なことは、自分のできること、自分の特技や資格の優位性、人々のニーズ、売れる商品かどうか、自分の知識や経験が活かせるか、今後市場の成長が見込める分野かどうか、ではありません。それ以上に大事なことは自分のやりたい事は何かということです。知らないうちにどうしたらできるかを考えてしまうほどに夢中になれる事がやりたい事だと思います。

 更に、そのことを通して自分は何を変えたいのか、自分が欲しいものは何か、作りたい、変えたい仕組みや社会は何か等を持っていることだと思います。時々、自分にも問いかけています。私は何に怒りを感じ、それを変えたいのか。自分の命(時間)を掛けても惜しくないもの、お金がもらえなくてもやりたくなる仕事は何だろうかと。それをみつけて、向かっていると、困難があっても進んでいけるのだと思います。

 私の中にはいつも「その人らしく生きること、その人ならではの人生を生ききる支援をしたい」そのために「自分のことは自分で決める(自己決定)」ことをお手伝いしたいと思っていました。それができたら、一人一人が幸せを感じ、状況に関係なく幸せを味わえるだろうと信じてきました。「自己決定」を大事に産業保健の場で実践し、講師として自己決定をお手伝いする方法を伝えてきました。

 開業準備

 いろんな方の話を聞いていると、女性と男性でも起業の仕方が違うように思います。男性の方が、資金,必要経費等を算出、経営、ビジネスモデルも考え、計画的に進める方が多いように見受けられます。一方、女性はどちらかというと、「えい!やっ」なんとかなる、と飛び出す方が多いように感じます。どちらがいいとはいえませんし、どちらが成功するとも言い切れないようです。個人的にはある程度の経営能力と見通しをつけて、あとは思い切ることだと思っています。

 という私も無計画に開業してしまったという点では女性的だったかもしれません。しかし、今振り返ると、自分にしかできないもの、自分の売りを準備していたという点では計画的だったとも言えるでしょう。

 企業在籍中から自分の健康相談に対して個人的にお金を払っても受けたいと思ってもらえる価値ある相談にしたいと研鑽していました。

 また、会社に対しては複数いる保健師の中で「この仕事は村田に任せればいい」と思ってもらえる何かが欲しいと思っていました。私が選んだのは健康教育でした。その頃、健康学習と呼ばれていた、今でいうワークショップ型健康教室のプロになることでした。30年前にはめずらしい「コミュニュケーンスキル」「ファシリテータースキル」の講師をお願いや、他の健康保険組合や企業の保健師仲間から講師依頼をいただくようになりました。

 仲間たちの存在は本当にありがたいことです。それ以上にありがたいのは、そのような状況を許し、認めて、共に働いていた先輩保健師さんたちです。今さらながらに先輩たちの助けを思い起こします。

 在職中の開業準備として是非しておいて欲しい事が一つあります。それは、ネットワークを作っておくことです。役所の内外、企業の内外、誰がどのように今後繋がっていくか分からないので、関係がありそうな人とは今のうちにどんどん知り合い、友人になっておくと良いと思います。そして、退職時には挨拶状に開業通知とこれからやっていく仕事を紹介できると効果的だと思います。

 いつごろ開業したらいいの?

 定年退職後に開業することも十分可能です。今まで培ってきた経験と知識をフリー保健師としてではなく、地域や企業に大きく貢献してほしいと思います。また、育児や介護で時間が十分とれない方も、今までの半分の時間で意味ある仕事を続けることはできます。

 自分のやりたいことが固まったら、開業の準備を開始、おおよその収支見通しがついたら、踏み出したら良いと思います。他、家族のこと、自分自身の体力や気力、諸々踏まえてのゴーサインはそれぞれの時があると思います。

 組織で働くことも魅力的なことです。焦らず、自分の人生の経営をしっかり考えてみてください。

 保健師という業種は、いろんな事ができる職種です。そして、たとえ失敗しても、生活をするための収入を得る仕事は見つかります。

   よく考えて、失敗を恐れずに、一度しかない時間と人生を悔いなく過ごしてください。

著者プロフィール

  • 村田 陽子
  • 村田 陽子
    一般社団法人 日本開業保健師協会 会長

    経 歴

    北海道立衛生学院保健師課卒業後、産業保健(朝日新聞、株式会社HOYA、日経BP社)現場で実績を積み、1990年に個人事業主「独立した保健師」になる。

    1995年に「有限会社 ビーイングサポート・マナ」を、2000年にはNPOまなネットを設立。2013年、NPOまな市民後見セーフティネットに名称、定款変更。「生き方を援助する健康教育」という視点で、単なる疾病予防でなく、人生の質を高める基盤としての健康づくりを行うために、「保健医療従事者向けのセミナー」「健康に関する講演」「地域や企業、健保の事業支援」を実施。更にはコーチとして個人をサポート。

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