日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会
No.5-2 ベビー防災「災害時の自助・共助・民助の普及に向けて」(ナーシングクリエイト株式会社)
ナーシングクリエイト株式会社 代表取締役
押栗泰代
今なぜ、ベビー防災を伝えようと考えたのか
平穏な毎日でさえも赤ちゃんの育児はとっても大変。突然の日常の変化が起こったとき、「私たちはどのように行動をすればいいのだろう。」そんなことを考え出えるようになりました。きっかけは、突然襲ってきた阪神淡路大震災でした。
はじめての大きな震災経験です。その時下の子は生後5か月。小さな子どもたちを抱えて不安な毎日を送りました。その後もたびたび起こる災害によって平穏な日常が無残にも破壊されることも知りました。
東日本大震災以降、私の住む地域でも自主防災活動が活発になり、自分にできることは何だろうと考えた時、あまりにも知らないことがたくさんありました。その時から災害について専門的に学習を始め防災士という資格を取りました。学びの中では、“自助”“共助”という言葉が何度も出てきます。自分の中で“自助”という言葉を繰り返しながら、できることならこの言葉の意味について赤ちゃんを育児するママたちにも伝えたいと思うようになったのです。
災害時の妊産婦や子どもへのケアは?
妊産婦や子どもへのケアは災害時にどう行動するのか、平素から事前に考え具体的な対応や連絡方法など家族で話し合っておく必要があります。妊産婦期は身体が思うように動きませんし、出産後の身体が回復しにくいなど一般の人と同じように行動することは困難な状況にあります。
また、乳児の避難行動は自立していないため、保護者や保育者等が連れて避難をする必要があります。このような観点から、小さな赤ちゃんとその母親は震災時には高齢者や障碍者と同じく配慮が重要であるということができます。
特に、妊娠期~産後の身体は環境の変化にも左右されやすく、衛生状態に敏感に反応しやすい時期です。“自助・共助”を通して、72時間を生き抜くための心構えやどのような準備をすればいいのかをみんなで考えるきっかけを創りたいと考えベビー防災という活動を2016年に立ち上げました。
ベビー防災の取り組み活動
ママたちを対象にした研修会では地域とのつながり、自分が住む地域のハザードマップについて、災害時の対応や準備しておきたい物品の展示、簡易式紙おむつの作り方、おんぶの仕方などママと赤ちゃんの災害時の対応方法について学んできました。
研修を重ねることによって、災害への取り組みについて考えるきっかけができることがわかりました。しかし、この時、「実際にその防災セットってどこに販売しているのですか」というお問い合わせをいただきベビー防災グッズについても企画しました。被災地現地へ赴き、被災されたママさん、ご自分も被災されながらもケアに携わってこられた保健師さん、保育士さん、介護職員さん方の意見を聞いて回ることにしました。
ベビー防災グッズ(ナーシングクリエイト)
災害が起こってライフラインが止まり、寒くて、暗くて、不安で、孤独で、そして混乱が起こる中で過ごされた様子がうかがえました。「あの時こんなグッズがあればもっと苦痛を減らすことができたかもしれない」そんな声を参考に研修会の内容とグッズの開発をさせていただきました。いつ起こるかわからない災害に備えてママたちへ減災の大切さを伝えていきたいと思います。
<参考>
・ ~ベビー防災(商標登録申請中)~
ベビー防災とは、ママになる方、ママになった方を対象に、赤ちゃんと自分のいのちを守るために、災害時に受ける被害をできるだけ小さくするための減災を目的に立ち上げた研修&グッズの名称です。
・ 東京都妊産婦、乳幼児を守る災害対策ガイドラインより一部抜粋
・ 訪問した被災地域とお話を伺った方々
仙台市・南三陸町・双葉町・つくば市・益城町・熊本市・阿蘇市・大津町・宇城市
保健師さん・保育士さん・介護職員さん・フロントマン・お店の方・ママさんたち・タクシーのドライバーさん