日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会
No.11-2 「仕事の軸2」~NPOまな市民後見セーフティーネットとして~
有限会社ビーイングサポート・マナ 代表取締役/日本開業保健師協会 会長
村田 陽子
エンディングノートの作成から見えてきた課題
もう1つの仕事の軸
NPO まな市民後見セーフティーネットについてご紹介します。
時代の流れ、仕事を積み重ねる中で「自己決定」の軸はさらに、高齢者に向けられてゆきました。それは、社会福祉法人伸こう福祉会との出会いでした。専務理事から、ご入居者の喜ぶこと、若い頃の好みなどにあわせた介護がしたいけど、どうしたらいいかしら?という質問がきっかけでした。
たどり着いた結論はお元気なうちに趣味や好み、介護などの希望を聞いておくこと、書き留めておいてもらうこと、すなわちエンディングノートの作成でした。
ある時、エンディングノートのテスト版を某大手銀行のOB会で紹介させていただきました。書くのはたいへんだから録音でいいかな、などの感想の中で、私に刺さってきたのは、「書くのはいいけど、誰が実行してくれるんだい」という質問でした。「お子さんとか、ご家族の方に」と答える私に、「子供達は海外赴任で、近くにはいないよ」「うちは子供がいない夫婦だからね〜」などと言われました。ついには「村田さん、やってくれないの?」と本気とも冗談とも言えない言葉がありました。
私も親族が行うもので、他人ができるものとは思っていませんでした。参加者からの「契約すれば他人でもできるはずですよ」の言葉に「調べてみます」と宿題にして持ち帰りました。
そんな折、ある人の紹介で仲良くなった司法書士に相談すると、第3者でも契約していればできること、世田谷区が市民後見について先進的に取り組んでいることを教えてくれました。ネットで探しているうちに東大で市民後見人養成講座が半年にわたって行われることを知りました。
さっそく、申し込み受講しました。そこで出会った友人とNPOを立ち上げました。
最期まで自分らしくいるための準備をサポート
成年後見人とは、判断能力が失われ、自己決定をできなくなった人に替わって本人だったらこのように選択するだろうことを選択する仕事です。年を重ねると介護や死という課題があります。自分のことを自分でできず、他者の手を借りることが増えます。自分が判断できるうちに、自分でできなくなった時のことを想定して自分の意思で決めておく、そんなお手伝いを始めました。
エンディングノートを作成、望む介護施設の選択、自分らしくいるための準備、そして亡くなった後もご本人の希望を叶える仕事です。
保健師の先輩たちが相談に来られて、自分で諸々決められた後に、「これで安心して、残りの人生を楽しめるわ」と言われた時に私の中になんとも言えない嬉しさがこみ上げてきました。
さらにご自身の親の相談に来られる方が大変多いです。ご両親の意思に寄り添い、できることをしたい、親の人生も自分の人生も大事にしたい、そんな人たちのお手伝いが私には楽しくて仕方ないのです。
NPO まな市民後見セーフティーネットは私自身はボランティアで行っています。しかし、いつまでもボランティアは続かないので、次の人たちにはこれが生活する収入につながるようしっかり仕事にしていきたいと思っています。
私にとっては、私自身の高齢化対策、生きがいです。
【参考】
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NPO まな市民後見セーフティーネット
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