日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会
No.2 保健師は開業できるのか?
一般社団法人 日本開業保健師協会 会長
村田 陽子
私は保健師として独立して今年で28年になります。1981年保健師学校を卒業後、企業に勤め9年間、産業保健の世界で働きました。10年目に自由な働き方を求めて、個人事業主になり産業保健と保健師さん、看護師さん向けの研修講師として仕事を始めました。それから5年後に有限会社を設立し、今年23期目を迎えています。
開業保健師とフリー保健師の違い
どちらも組織に所属しないで仕事をするという点では同じです。また、どちらの場合も個人事業主としての届け出をすれば、開業になります。しかし、私はこの2者を分けて捉えています。フリーの保健師は、仕事の依頼を受けて、自分の空いた時間と保健師としての技術を提供する人。開業保健師は自らが事業を立案、計画して業をなしていく人たちと考えています。
開業保健師の中には最初から事業を立ち上げられる人ばかりではないかもしれません。最初はフリーター保健師として、仕事をしながら自分の事業を立ち上げて行くことも多いと思います。あるいは、半々という形もあるでしょう。ただ、つい自分のできる仕事や目先の収入のことを考えているとフリーター保健師になりがちです。
開業して生活していけるの?
開業して生活できるの?という質問をよく受けます。また、生活の不安から開業に踏み切れない人たちもたくさん会いました。開業には収入の問題は切っても切り離せません。安定した公務員の地位、大企業での仕事、それを捨てて外に出ることは勇気がいることです。
特定保健指導を通して、「保健師」の認知度はあがってきていると思います。企業でも「保健師さんを!」という声を聞くようになりました。2016年11月からスタートしたストレスチェック制度の導入により、企業での仕事は増えてきていると感じます。仕事はあるのですが、単価が安いので自分の仕事を時間売りすると収入が落ちます。ナースの転職サイトで出している時給が私達の仕事に対する報酬の目安にされやすいです。転職サイトの時給は1900円〜2100円で、経験やスキルの程度ではなく保健師という資格があれば一律です。公務員と同じぐらいの収入を得るために、保健指導、フリーターとして時間売りの仕事では、やっていけません。
保健師の資格を持っているだけでなく、しっかり成果が上がる仕事ができること、そこをアピールして良い仕事をいただくことが必要と感じます。
どうしたら開業できるの?
この質問をよく受けます。助産師には開業権があるけど、保健師にはないでしょ、と。その通りです。保健師として開業届けを出すというより、一般的な個人事業の開業・廃業等届出書を所轄の税務署に提出します。その書類の職業欄に保健師と記入しているだけです。
個人事業主の届け出は、事業を始める地域の税務署に行って、用紙を出すだけです。その際、屋号が必要ですので、屋号は決めておいてください。また、納税の際、青色申告にするか白色申告にするか選択をしなくてはなりません。税制の優遇を受けるためには是非、青色申告をお勧めします。家計簿程度に収支をつけ、領収書等の証拠になる書類をそろえておけば、税務上の無料相談等も受けることができます。
私も最初の5年は個人事業主でした。だいたい売上が年間1000万円を超えたあたりから、法人化すると良いと言われています。私の場合は取引相手から法人化して欲しいと言われたのがきっかけで、有限会社(今は作れませんが)を設立しました。
最初から、計画的に、法人でやる!というのも一つですが、こちらは準備に少し時間とお金がかかります。法人にも、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO(特定非営利活動法人)など、様々です。自分のやりたいこと、組織づくりが決まってから、自分のやりたいことにあった法人を作れば良いと思います。
今は創業補助金などの助成金制度が多くあり、起業支援を受けることも可能です。どの形で、どの事業、助成金などの相談は、有限会社ビーイングサポート・マナ主催で独立起業セミナーや起業コーヂングの中で行っています。
知り合いの行政書士さんや税理士さん、中小企業診断士さんも助成金の情報を持っていると思いますので、ぜひ相談してみてください。