日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会
No.7-1 開業を決意するまで(エルイーシー合同会社)
エルイーシー合同会社 代表
水越 真代
これを読んでいる皆さんは、開業保健師って??と気になっている方だと思います。そこで、「開業保健師さんてなんだか凄そう~~」と思っていた、ごく普通の保健師の私が「開業を決意する」までと「開業してから」をつづってみたいと思います。私の事例が・・何かのお役にたつことを祈って・・
市役所での仕事、そして大学院進学
卒業後、すぐに市役所に入職しました。老人保健法ができ、地域保健の分野が全国的に標準化に向かっていた時期です。介護保険のないときでしたので乳幼児から寝たきりのかたまで保健師が家庭訪問をしていた時でした。
私がいた保健センターは、歴史的に家庭訪問に力を入れていましたので、たくさんのご家庭に伺わせていただきました。今と比べるとおおらかな時代でしたので、家庭訪問をするときに、「近くに来たので立ち寄ったのよ」といって、予約しないで訪問をすることも数多くありました。その経験は、乳幼児からお年寄りまで経験をしたという保健師としての自信と、初対面の人でも自然に相手の懐に入っていくという社会人としての基礎となっているなあと感じています。
人生折り返しを迎えるころ、「自分自身の仕事がどのように評価していったらいいかという力をつけたい」と大学院に進学しました。
スーパーマーケットの売り場での気づき
大学院修了に当たり、教授に「スーパーマーケットで保健活動を展開したらどのような成果があるのか研究をするので、その実務をしてくれないか」と言われ、取り組むことになりました。
たったひとりで、売り場に立ち、いらっしゃいませと言いながら健康相談をするというはじめての経験です。スーパーマーケットは買い物に来るところです。保健センターでは来た人に声をかければ喜んでもらえましたが、スーパーマーケットではそうもいかず、多くの人は迷惑な顔をして通り過ぎていきます。
保健センター時代に身につけた、初対面の人の懐に入るというスキルがここで大きく役に立ちました。少しずつ顔なじみの人が増えていきました。
そんな時「うちのだんなにもこういう機会があるといいんだけど・・」という声を何人かの方からいただきました。「そうか、働く人たちの大半は保健サービスが届いていないんだ。」とそこで私は初めて、保健師の力が届いていない人たちがいることに気づきました。
「今まで保健師の力の届いていない中小企業の人たちに保健師の力を届けよう」
ある日突然、研究事業が終わることになり、私は無職になりました。
どちらかというと臆病なタイプなので、いきなり起業を決意することはできませんでした。保健師が起業してもお金稼げないしなあとか、お客さん見つけるのは考えられないし・・お金の管理だってできないし・・できない理由を並べ立てていました。
しかし、自分が望む働きかたはどこかに就職することでもないような気がしてどっちつかずのまま悶々として過ごしていました。
また、心のどこかに、「保健師の力がまだまだ届いていない人たちがいる。そんな仕事はできないのだろうか・・」という思いはくすぶり続けていました。
半年ぐらいたったころ、愛知県主催している、「創業道場」というものがあるよと聞き、思い切って出かけていきました。SWOT分析、マーケティング、事業計画を書くとか貸借対照表を読むとか、今まで聞いたことのない言葉が並んでいました。正直十分理解して活用できたかといわれると、やや疑問はありますが、ここで一緒に学び創業を目指しているという仲間の存在が、「私もやってみるか」と大きく気持ちのかじを切るきっかけになりました。
「今まで保健師の力の届いていない中小企業の人たちに保健師の力を届けよう」と決め、12年、個人事業主として開業をしました。
保健師は、「課題を見つけ問題を解決するために事業を立ち上げる」という仕事があります。この過程を経験している人は、起業をするための基本的スキルを持っていると思います。しかし、起業するには、起業するための基本的な考え方や知識、特有な言葉を理解したほうがスムーズにいきます。また保健師業務の知識だけでは足りないことも多くあります。起業を考えているあなた、アンテナを高くして周りを見回してみてください。きっと応援をしてくれる場所が見つかると思います。