オピニオン/保健指導あれこれ
日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会

No.8-1 事業所外から中小規模事業場を支援するモデルづくりを目指して(株式会社ヘルス&ライフサポート)

株式会社ヘルス&ライフサポート  代表取締役
齋藤 明子

開業のきっかけについて

 私は、臨床と職域看護師を経て、保健師学校に進学。地域保健師を経て大規模事業所に就職しました。40歳で離職後に出会った中小規模事業場の巡回健康相談や24時間の電話相談の仕事を通じて、あまりにも健康格差が大きい現実を目の当たりにし、産業保健のすそ野を拡げたいという思いだけで個人事業主として開業し、一貫して中小規模事業所の産業保健支援を行ってきました。

 このオピニオンでは、実際の中小規模事業所産業保健支援の取り組みについてや個人事業主から法人化へ向けた挑戦についてご紹介します。

Ⅰ.中小規模事業所の実態

 まず、中小企業基本法による分類では下記のように定義されています。

・中小企業者
常時雇用労働者300人以下(卸売業、サービス業は、100人以下、小売業、飲食店は50人以下)または、資本金3億円以下(卸売業は1億円以下、小売業、飲食店、サービス業は5000万円以下)企業を中小企業者

・小規模企業者
常時雇用労働者20人以下(卸売業、小売業、飲食店、サービス業は5人以下)の企業を小規模企業者

 中小規模事業所は、経営基盤も脆弱であり人的資源も限られています。

 法的配置義務のある産業医・衛生管理者も未選任、衛生委員会も未開催のところが数多く存在します。平成22年労働安全衛生基礎調査1)によると、50~99人の事業所の産業医選任率は80.9%で、非常勤嘱託で勤務時間も短い(月1回1~2時間程度)のが現状です。法的選任義務のない看護職の雇用は大規模事業所中心で中小では数%です。

 中小規模事業場に支援展開するとしたら看護職がもっとも適しており、嘱託産業医とペアでの活動が望ましいと考えます。平成24年度総務省 経済センサス・活動基礎調査第5表では、50人未満は、総企業等数の97.3%で、総事業所数の82%となっています。以下の図1平成26年総務省経済センサス・基礎調査(第8-1表)をご覧ください。

 膨大な中小規模事業場支援の裾野を拡げ、中小規模事業所を健康&元気にするためには開業保健師の活用を図っていただきたいと強く願います。


(図1)総務省平成26年経済センサス・基礎調査(第8-1表)

Ⅱ.中小規模事業所産業保健支援の取り組み

 当社の契約事業所規模は、最少10名~最大450名となっています。

 健康診断事後措置保健指導や日常の健康相談、衛生委員会、職場巡視等を通じ保健師として事業所内に深く入り込んでいますので、個の支援から集団(職場)組織全体に関わることができます。

 看護職は、社員にとって気軽に相談できる存在で、普段から相談室のドアを開けていることで、自発的な相談も多々あります。産業医に比べ職場内のローカルな情報が入りやすく、顕在化していない問題にも気づきやすく、組織内関係者のコーディネーター役割がとれます。

 活動内容は、事業所の規模や状況、要望に応じて組み立てますが、困りごとだけに対応するのではなく、法令遵守すべき事項についてまず事業主に伝え、体制構築や法令遵守事項の優先順位づけを行い選択していただきます。着手できるところから段階的に整備することを重視しています。

 中小規模事業所に支援展開するとしたら看護職が最も適していると思いますが、実際雇用は難しく、嘱託産業医とのペアでの活動が望ましいと考えます。

 事業場の取り組みの限界(コストや人的資源等)や事業所外からの支援の限界もあり、事業場が有する機能やキーパーソンを確認ながら、総務や人事と協働し業務遂行します。50人以上でも衛生管理者、産業医がいない場合の体制づくりはまずそこからです。安全衛生委員会や社内行事への参加、支社営業所が点在しているところは、巡回健康相談をします。1度でも面談をしておくと、その後のケアがしやすくなりますので、全員面談にトライします。

 事業所への訪問頻度は、社員数や拠点数に応じて週~月~年単位で取決めます。保健師はメンタルヘルスを含め幅広い産業保健サービスの提供ができます。

 主な業務は、健康診断の企画~事後措置、産業医面談の調整やサポート、衛生委員会への参加からスタートし、健康教育や職場復帰プログラムづくり、復帰支援も行います。順位付けをすると、法令遵守項目(健診事後措置、過重労働対応)は優先順位1次に傷病休業者等の対応(メンタルヘルス含む)です。

 メンタル不調者が多いと、本来の予防活動(健康づくり等)が遅れてしまいますので、こころもからだ両面の支援が重要と考えます。最近は、中小規模事業所を支援している社会保険労務士さんや税理士さんからの依頼も増えてきました。

◆参考文献

1)平成22年 安全衛生基本調査(厚生労働省)
2)総務省.統計局 平成26年経済センサス‐活動調査 事業所に関する集計-産業横断的集計(事業所数、従業者数)、第8-1表 企業産業(中分類)、経営組織(3区分)

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著者プロフィール

  • 齋藤 明子
  • 齋藤 明子
    株式会社ヘルス&ライフサポート  代表取締役

    経 歴

     看護師として総合病院およびグループ企業の診療・健康管理を経験したあと、「病気にならないよう支援したい、予防について学びたい」と29歳で保健師学校に進学。卒業後は、保健所(地域保健)に3年ほど勤務、介護退職。先輩保健師の誘いで企業に就職し、安全衛生健康管理活動や健康増進活動に取り組んだ後、平成10年ヘルス&ライフサポートTAKを設立活動を開始し、平成25年に法人化。

    (資格)保健師・労働衛生コンサルタント・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・介護支援専門員

    株式会社ヘルス&ライフサポート

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