オピニオン/保健指導あれこれ
日本の元気を創生する ‐開業保健師の目指していること‐
一般社団法人 日本開業保健師協会

No.8-2 中小規模事業場の健康経営に開業保健師が如何に寄与できるか挑戦中(株式会社ヘルス&ライフサポート)

株式会社ヘルス&ライフサポート  代表取締役
齋藤 明子

Ⅰ.個人事業主から法人化へ向けた挑戦

 開業保健師仲間との出会いから触発を受け、平成25年に60歳で個人事業主から法人化しました。開業にあたり中小企業庁の創業補助金を活用しました。法人化の目的は、個人事業主として実践した経験を幅広く中小規模事業所に展開したいという思いからです。

 中小規模事業所支援活動20年間の結果、“社員を大事にする企業は成長する”という実感を持ちました。企業の成長とともに社員も成長することが求められます。実例として、100人で受託した事業所が、現在一部上場企業に成長し、国内3拠点、海外5か国で事業展開しています。会社の成長を支援できることは喜びであり、モチベーションにもなります。

 経営資源である「人」をより健康にしていくことが、企業活力を生むという経験から、「社員を大事にする企業は成長する」「引き継ぎカンパニーから積み上げカンパニー」をスローガンに、社員の離職防止や、活性化をめざし企業経営を健康面からサポートしています。ただ、産業保健サービスといっても幅が広く、業種、業態により求められる機能も異なります。大規模事業所10年の経験をベースに、中小規模の事業所支援20年の実績を踏まえ、事業所ごとにカスタマイズできるのが当社の強みです。

 アウトソーシングの形で受託します。健康診断事後措置やカウンセリングのみの受託もありだと思いますが、当社は5管理全体を意識した受託を目指します。なぜなら、はたらく現場の環境や働き方を直接見て、わかって支援したいと考えているからです。保健・医療・福祉の資格や経験を活かして、幅広い相談を提供できるのも強みですが、状況に応じ専門家を紹介します。経営基盤や人的資源が脆弱な中小企業の経営において、経営者及び従業員の元気はより重要な資産のため、研修や相談を通じしっかりとバックアップし、社員の健康度をより高めます。また、相談等で得た情報から企業リスク回避にも寄与します。

Ⅱ.保健師として支援の際に意識してきたこと

支援ポイント 行動目標
1.経営者、労働者の信頼を得る ・労働損失をできるだけ減らしたいと願う経営者の期待に応えること、経営層から見えにくいリスクに対して情報提供や提言をする
・社員に対しては、安心して相談できる場の提供をすること。プライバシーの保護は徹底する。
2.個への支援だけでなく集団、組織への展開を意識すること ・従業員にとって健康+よりよい生き方や行動選択ができるよう支援する ・職場環境を視野に入れながら支援する
・「はたらく力」をアップする支援する
・組織の方向性を常に確認する
3.「予防」の視点を忘れないこと ・1次予防、0次予防(発生させない)へ向けた取り組みを重視する(2次・3次もですが)
・相談の垣根を低くし、相談上手な社員を つくっていく

Ⅲ.中小規模の事業所におけるメンタルヘルス支援の意義

 事業規模が小さくなればなるほど不調者の発生による経営への影響は多大です。長期休業になると代替要員確保が困難なため、残された社員への負担も大きく、結果退職を余儀なくされます。対策推進のためには、まずは経営者に対するアプローチが最も効果的です。しかし小規模事業所ならではのメリットもあります。経営者が従業員の状況(仕事や生活)を細かく把握されていて、日ごろからまめに声かけがあるところでは、職場も明るく、メンタル疾患の発生も明らかに少ないと感じます。

 いきいき職場づくりは、中小の方が取り組みやすいとも感じます。以下、メンタル休業者が連続発生、うち1名から復帰希望あったがどのように進めたらよいか対応に困った人事から依頼があり支援を開始した事業所支援の事例を紹介します。

~復職支援からストレスチェック実施、職場環境改善に向けた取り組み~

【事業所情報】
・業種:公益サービス ・社員数: 約130名、男女比が6:4 、休業者5名

【法令遵守事項確認】
①健康診断(契約医療機関で100%実施)、事後措置は課題あり
②産業医契約:非常勤嘱託(健診機関)、来社頻度は年1~2回
③衛生管理者:不在、届け出はあるが、機能していない。
④衛生委員会:設置なし

・実態:メンタル休業者が5名、職場復帰プログラムや規程整備なし

・社内相談窓口:なし 

【実際の取り組み経緯】
① 人事担当者・産業医・保健師でチーム編成、定期ミーティング
② 事業所内の現有資源(就業規則等)や社内制度等の確認
③ 事業所支援計画を立案(1年~3年)
④ 全社ストレス調査を実施、職場分析により部門傾向を把握
⑤ 全職員面談(部署ごと)
⑥ 評価

 職場復帰支援に際しては、産業看護職が中心になりプレ面談を行い嘱託産業医に情報提供することで、スムーズな職場復帰や再休業を減らせます。事業所にシステムが定着し、主体的に展開できることをめざし、現在も継続支援中です。

 多くの事業場に産業保健師が雇用されることが望ましいのですが、開業保健師の活用促進により、産業保健のすそ野が確実に拡がります。そして中小企業ではたらく人が元気になり、会社も活性化することが私の願いです。

著者プロフィール

  • 齋藤 明子
  • 齋藤 明子
    株式会社ヘルス&ライフサポート  代表取締役

    経 歴

     看護師として総合病院およびグループ企業の診療・健康管理を経験したあと、「病気にならないよう支援したい、予防について学びたい」と29歳で保健師学校に進学。卒業後は、保健所(地域保健)に3年ほど勤務、介護退職。先輩保健師の誘いで企業に就職し、安全衛生健康管理活動や健康増進活動に取り組んだ後、平成10年ヘルス&ライフサポートTAKを設立活動を開始し、平成25年に法人化。

    (資格)保健師・労働衛生コンサルタント・産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・介護支援専門員

    株式会社ヘルス&ライフサポート

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