-薬・サプリとセルフメディケーション-
⑪薬剤耐性について知り、正しい指導・対策を
『抗菌薬意識調査レポート2024』の結果より
AMR臨床リファレンスセンター(厚生労働省委託事業)が実施した『抗菌薬意識調査レポート2024』をみてみましょう。ぜひ、薬剤耐性に関する指導の参考にしてください。
Q1 抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける
Q2 抗菌薬・抗生物質はかぜに効く
Q3 抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい
Q4 とっておいた抗菌薬・抗生物質を自分で飲んだことがある
Q5 あなたが抗菌薬・抗生物質を処方された際の行動についてお答えください
Q6 抗菌薬・抗生物質が有効な病気としてあてはまると思うものをすべてお答えください
抗菌薬に関する知識
- Q1・Q2 「抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつける」「抗菌薬・抗生物質はかぜに効く」を「間違っている」と正しく回答した人の割合は、それぞれ16.0%、25.9%であった。2023年との比較では数値の改善を認める。
- Q3 「抗菌薬・抗生物質は治ったら早くやめる方がよい」を「間違っている」と正しく回答した人の割合は30.4%、過去2年と比較すると徐々に低下している。
抗菌薬に関する経験・行動
- Q4 「抗菌薬の不適切な使用」に関連する質問であるため、「ない」という回答がより適切な行動である。
- Q5 「処方された分を最後まで飲み切った」と回答した人の割合は74.1%である。昨年よりも3.8ポイント増加した。
抗菌薬の理解
- Q6 抗菌薬・抗生物質が有効な病気として「インフルエンザ」「かぜ」を挙げた人はそれぞれ39.9%、37.7%にのぼった。一般国民の「抗菌薬がどのような薬か」についての理解は十分ではなく、啓発活動および患者教育の強化の必要性が考慮される。
また、本調査の中では「インターネット検索・AI診断に関して」も問うています(Q9・Q10)。「受診前にインターネット検索やAI診断を活用したことがあると回答した人の割合は24.5%であり、このうちインターネット検索やAI診断の結果で行動変容を促されたと回答した人の割合は25.8%で、特に若年層の方が高い傾向が認められています。
今後、若年層を対象として教育啓発・情報発信を行う場合、インターネットやAIを用いた手法が効果的である可能性が示唆されています。
コラム:ワンヘルスアプローチ
薬剤耐性が問題になるのはヒトだけではありません。抗菌薬は水産業、農業など幅広い分野で用いられています。なかでもよく使われているのは畜産業です。
畜産では、感染症を抗菌薬で治すだけではなく、発育促進を目的に飼料に混ぜて使われることがあります。動物に抗菌薬を不適切に使うと、体内の細菌が薬剤耐性菌に置き換わって、ヒトの健康に影響を及ぼしかねません。
また、川の水を調べると薬剤耐性菌が検出されることがあります。家畜の排泄物に薬剤耐性菌が含まれ、耐性菌が水を汚染したり農産物を汚染したりした結果と考えられます。汚染された野菜を摂取することで、環境由来の薬剤耐性菌がヒトに定着する可能性があります。
ヒト、動物、環境の衛生に関する分野横断的な課題に対し、関係者が連携してその解決に向けて行う公衆衛生の取り組みを「ワンヘルスアプローチ」といい、薬剤耐性の面でも注目されています。
次回は、本連載の総括として「セルフメディケーションの重要性」を解説します。
これまでの「働く人に伝えたい!薬との付き合い方」
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