-薬・サプリとセルフメディケーション-
⑫セルフメディケーションの重要性【最終回】
専門家のサポートが「セルフメディケーション」実現に繋がる
しかし、「働く人(大人)」であっても「セルフメディケーション」に対する意識が希薄なのが、わが国の現実です。関連する専門家が積極的にサポートすることが必要です。
専門知識をもとに「健康の維持増進」をサポートする
セルフメディケーションの柱として、以下の事項などが考えられます。
- 健康リテラシー(健康に関する正しい情報)
- 適度な運動・睡眠
- 栄養バランスの取れた食事(食生活)
- OTC医薬品の適切な使用
専門職をアピールして「セルフメディケーション」実現に寄与する
2025年3月に実施された「本人/未就学の子供が風邪症状になった場合、どのような行動を取るのか」というアンケートの結果、「医療機関を自己判断で受診する」と回答した割合は、本人の症状の場合は3割、子供の症状では約6割に達し、さらいその理由を複数回答で聞いたところ、「医師の診断がないと不安・心配だから」と答えた人が、顕著(複数回答で48%)でした。[2]
質の高い「セルフメディケーション」の実現には、医師だけでなく、関連する専門家が自分たちの専門性をアピールし理解してもらうことが不可欠です。専門家であることを積極的にアピールする努力・活動の必要性をアンケート結果は示しているのではないでしょうか。
[2]患者に寄り添った制度改革のポイントとは? 6,000人調査から見た「OTC類似薬の保険適用除外」(三菱総合研究所)
専門家が協働で「セルフメディケーション活動」を実施する
セルフメディケーションに関わる専門家が協働で、さらには地域の自治会などとも協働して健康づくりや介護予防支援を実施し、地域密着型の場をつくり、日頃から市民と接点を持つための活動を行うことが大切でしょう。
こうした支援は、市民の健康維持・増進に寄与するだけでなく、発症時に受診すべきか相談する場を提供し、軽症での受診を抑制する環境を作るなど、セルフメディケーションの実施に必須の行動をサポートすることができるでしょう。
セルフメディケーションでは、必要な時は専門家(医療・保健指導に関わる人たち)のサポートを受けることも大切です。医療に関する知識を持つ専門家の皆さまに、セルフメディケーションに対する情報発信や意識付けをご一緒いただけると、これほど心強いことはありません。
連載のおわりに
今回のシリーズでもセルフメディケーションに重要な多くの情報を掲載しました。文中(丸中数字)はシリーズNo.を示します。これらの情報を、ぜひ指導や情報発信の際にお役立てください。
薬の動態と相互作用
薬(飲み薬)の多くは、胃で溶解したのち小腸から吸収され(①②③)、肝臓で代謝されて(④)残りが血液と共に体内を巡ります(血中濃度)。こうした体内における薬の変化を「動態」といい、「動態」に最も大きく関わっているのが、生体の化学工場といわれる肝臓です。
肝臓を中心に、「薬と薬の相互作用」「薬と食べ物・飲み物の成分との相互作用(⑥⑦⑧⑩)」について学ぶことで、「薬の効き方には個人差、生活環境による違いがある」「薬の効き方は他の成分との相互作用によって変化する」などの重要な点を理解することができます。
薬の正しい使い方
OTC医薬品には使用説明書(添付文書)が同封されており、使用者にとって重要な情報が記載されています。説明書をよく読み、正しい使い方を理解しましょう(⑤⑨⑩⑪)。
「働く人に伝えたい!薬との付き合い方-薬・サプリとセルフメディケーション-」
連載総目次
コラム:小学生にも「薬剤師」を知ってもらう―養護教諭とのチームティーチング
筆者は、小学校で実施する「おくすり教育」で、事情が許す場合は養護教諭とのチームティーチングを推奨しています。
養護教諭 薬はなぜ水かぬるま湯で飲まなければいけないのですか?
薬剤師 それはね、水なしで飲むと......
養護教諭 薬はお茶では飲まない方がいいですか?
薬剤師 ちょっと実験でたしかめてみましょう!
養護教諭 薬にはなぜ飲む時間や飲む量が決められていますか?
薬剤師 それでは、このグラフを見てください......
養護教諭は、学校で体や健康のことを一番よく知っている「健康の先生」として、児童・生徒から信頼されています。そんな先生の質問にも、すらすら答えてしまう薬剤師さんってすごいな! 健康や薬のことをよく知っている専門家だ! と思ってもらうことがねらいです。
児童・生徒には薬の知識を教えるとともに、薬の専門家「薬剤師」がいる・薬剤師に聞けば薬の「適切な使い方」を教えてくれると理解してもらうことが、賢いセルフメディケーション実践者を育てるのに重要だと、筆者は一緒に授業を行う養護教諭に協力をお願いしています。
一般社団法人 日本くすり教育研究所のご案内
日本くすり教育研究所は、小・中・高等学校における「くすり教育」や「薬物乱用の防止教育」に加え、「喫煙や飲酒の害」について、一般社会も含めて広く啓発活動を行うとともに、これらの健康教育に携わる専門職の方々をサポートします。
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