メンタルヘルス対策や高年齢労働者のための「労働災害防止対策」取り組み状況を明らかにー労働安全衛生調査(実態調査)

厚生労働省はこのほど、「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」を取りまとめ、公表した。
メンタルヘルス対策や高年齢労働者に対する労働災害防止対策の取り組み状況などについて調査しており、事業所や労働者の安全衛生管理や健康確保の実態を明らかにした。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.2%
労働安全衛生調査は、労働災害防止計画の重点施策を策定するための基礎資料とし、労働安全衛生行政運営の推進に資することを目的に実施している。
今回の調査では、事業所の安全衛生管理や労働災害防止活動のほか、労働者の仕事や職業生活における不安やストレス等の実態について調べた。対象は、常用労働者を10人以上雇用する民営事業所から無作為に抽出した約1万4000事業所と、これらの事業所で働く常用労働者・派遣労働者から無作為に抽出した約1万8000人。うち有効回答を得た8304事業所と8596人について集計した。
本記事では「事業所調査」にフォーカスして結果を見ていく。
まず「メンタルヘルス対策の状況」として、過去1年間でメンタルヘルス不調により1カ月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%。前年度調査の13.5%よりわずかに減っていた。
一方、1カ月以上休業・退職した労働者の割合を事業規模別に見ると、1000人以上の事業所は91.6%が該当するなど、常用労働者数が多いほど割合が高い。産業別では、情報通信業が39.2%で最も高かった。
メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は63.2%。事業所規模別では、労働者50人以上の事業所は94.3%で取り組みをしていたが、規模が小さくなるにつれて割合は下がり、10〜29人の事業所では55.3%にとどまっている。
実施している事業所の取り組みで、一番多かったのは「ストレスチェックの実施」で65.3%。次いで「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)ごとの分析を含む)」が54.7%で多かった。
ストレスチェックの実施状況も事業所規模が大きいほど割合が高く、労働者50人以上の事業所で89.8%だったのに対し、10〜29人の事業所では58.1%だった。
さらにストレスチェックを実施した事業所のうち、部や課など集団ごとに結果を分析した事業者の割合は75.4%、このうち分析結果を活用した事業所の割合は76.8%だった。分析結果は「残業時間削減、休暇取得に向けた取り組み」に活用したという事業所が最も多く、次いで「相談窓口の設置」「上司・同僚に支援を求めやすい環境の整備」「業務配分の見直し」「人員体制・組織の見直し」の順だった。
産業保健の取り組みを行なっている事業所の割合は89.8%
また産業保健についても聞いている。産業保健の取り組みを行なっている事業所の割合は89.8%で、このうち具体的な取り組み内容は「健康診断結果に基づく保健指導」や「メンタルヘルス対策(相談体制の整備、ストレスチェック結果を踏まえた職場環境改善等)」が7割の事業所で実施されていた(複数回答)。
一方、「女性の健康課題(更年期障害、月経関連の症状・疾病等)に対する配慮、支援」は28.9%、「睡眠、喫煙、飲酒等に関する健康的な生活に向けた教育や相談」は27.4%で、まだ取り組んでいる事業所には限りがある。
労働災害防止対策にも関心が高まっているが、このうち転倒防止対策については、「物理的対策」として「設備・装備などの対策(職場内の手すり、滑りにくい床材の導入・靴の使用、段差の解消、照度の確保等)、整理・整頓・清掃の徹底など」に取り組んでいる事業所の割合が77.7%だった。
加えて「身体的要因を考慮した対策」として、「骨密度、ロコモ度等のチェックによる転倒やけがのリスクの見える化」に取り組んでいる事業所の割合は5.8%。「転びにくい、又はけがをしにくい身体づくりのための取り組み(専門家等による運動指導、スポーツの推進等)」に取り組んでいる事業所の割合は13.6%だった。
厚生労働省は令和2年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(エイジフレンドリーガイドライン)を策定。働く高齢者の特性に配慮したエイジフレンドリーな職場づくりを啓発している。
そのような中で、60歳以上の高年齢労働者が業務に従事している事業所のうち、同ガイドラインを知っている事業所の割合は21.6%にとどまった。このうち高年齢労働者に対する労働災害防止対策に取り組んでいる事業所の割合は18.1%だった。
これらの事業所における、具体的な労働災害防止対策の取り組み内容を見ると、「高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(高齢者一般に見られる持久性、筋力の低下等を考慮した高年齢労働者向けの作業内容の見直し)」が62.9%と最多。
ほかには「個々の高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応(健康診断や体力チェックの結果に基づく運動指導や栄養指導、保健指導の実施など)」も半数近くで実施されていた。
最後に、労働安全衛生法第57条の2に該当する化学物質を使用している事業所のうち、リスクアセスメントをすべて実施している事業所の割合は66.1%、同条には該当しないが、危険有害性がある化学物質(労働安全衛生法第28条の2第1項の規定に基づいてリスクアセスメントを行うことが努力義務とされている化学物質)を使用している事業所のうち、リスクアセスメントをすべて実施している事業所の割合は52.2%だった。
また、労働安全衛生法第57条の2の化学物質には該当しないが、危険有害性がある化学物質を製造又は譲渡・提供している事業所のうち、すべての製品に安全データシート(SDS) を交付している事業所の割合は66.4%だった。
令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果(厚生労働省)

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