ニュース

運動は認知機能を高め認知症予防に有用 ストレスによるメンタルヘルス不調を抱える人で運動の効果はとくに高い

 運動に取り組むことは、高齢者の脳の機能を高め、その効果は何年も続くことが、高齢者を最大5年間追跡した研究で明らかになった。

 効果が高いのは、心拍数や息が上がるような強度が強めの有酸素運動と、ストレッチなども取り入れ呼吸を整えられる強度が弱めの運動を交互に行う、高強度インターバル運動(HIIT)だという。

 ストレスなどによるうつ病などのメンタルヘルス不調を抱える人で、運動の効果はとくに高いことが、5万人超の成人を対象とした調査でも明らかになっている。

運動により脳機能を高められる 運動の効果は何年も持続

 運動に取り組むことは、高齢者の脳の機能を高め、その効果は何年も続くことが、高齢者を最大5年間追跡した研究で明らかになった。

 効果が高いのは、心拍数や息が上がるような強度が強めの有酸素運動と、ストレッチなども取り入れ呼吸を整えられる強度が弱めの運動を交互に行う、高強度インターバル運動(HIIT)だという。

 研究は、オーストラリアのクイーンズランド大学によるもの。研究グループは、65~85歳の151人の健康な高齢者を対象に、6ヵ月間の運動プログラムを提供し、バイオマーカーと認知テストを実施し、高解像度の脳スキャンも行った。

 その結果、運動に取り組んだ高齢者は、脳の海馬機能が大幅に改善し、加齢による容積の減少が解消され、神経ネットワークの接続も良好だった。

 さらに驚くべきことに、運動プログラムの終了後も5年間追跡した結果、運動を続けていなかった高齢者であっても、認知能力は依然として向上していることが示された。

運動は認知機能の低下を遅らせ認知力を高めるのに有用

 これまでの研究でも、運動は脳の神経幹細胞を活性化し、海馬のニューロンの生成を増やし、認知能力を向上させることが示されている。

 「運動は認知機能の低下を遅らせ、認知力を高めるために有用です。高強度インターバル運動を6ヵ月行うだけで、高齢者の認知力を高められることが分かりました」と、同大学脳研究所のペリー バートレット氏は述べている。

 「ウォーキングなどの運動は費用もかからず、すぐに簡単に取り組めます。運動をすることで、老化にともなう体の不調を抑えることができ、認知能力をより長く健康に保つことができ、認知症による個人・経済・社会の大きな損失を減らすことにつながります」としている。

 なお運動プログラムは、3つの運動強度で構成されており、▼低強度[運動機能やバランスを高める運動にストレッチを組み合わせる]、▼中強度[トレッドミルでウォーキング]、▼高強度[トレッドミルで早歩き、負荷をほぼ最大に高めた運動]を組み合わせたものだった。

運動をすればストレス耐性も高められる
うつ病などのメンタルヘルス不調のある人で運動はとくに効果が高い

 ストレスなどによるうつ病などのメンタルヘルス不調を抱える人で、運動の効果はとくに高いことが、5万人超の成人を対象とした別の調査でも明らかになっている。

 運動を習慣として続けている人は、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが23%低いことが示された。

 「運動を習慣として行うと、ストレスに関連した脳の活動にも影響があらわれます。運動は、心血管疾患や認知症などの予防にも役立っていると考えられます」と、米マサチューセッツ総合病院の心臓血管画像研究センターのアーメド タワコル氏は述べている。

 同病院などの研究グループは、遺伝子や生活スタイル、生活環境などが健康にどのように影響しているかを調べる目的で実施している大規模研究「Mass General Brigham Biobank」に登録された、年齢の中央値が60歳の5万359人の男女のデータを解析した。

 その結果、運動を習慣として行っている人は、ストレスに関連する脳活動が低い傾向があることが分かった。

 運動をしている人は、脳の前頭前野が活発に機能していた。前頭前野は、思考や意思決定、創造性、社会的行動、主観的幸福感などにも関わるとみられている。

 ストレスや不安を過度に感じながら生活していたり、うつ病や不安症などのメンタルヘルス不調を抱えている人は、認知症の発症リスクが高いとみられている。

 「ウォーキングなどの運動は、脳内のストレスに関連するシグナル伝達を減少させ、心血管系にも利益をもたらすと考えられます。うつ病や不安症などのある人にとって、運動の予防効果はとくに大きいと考えられます」と、タワコル氏は指摘している。

UQ research reveals exercise brain boost can last for years (クイーンズランド大学 2024年7月10日)
Long-Term Improvement in Hippocampal-Dependent Learning Ability in Healthy, Aged Individuals Following High Intensity Interval Training (Aging and disease, 2024年7月8日)
Physical Activity Reduces Stress-Related Brain Activity to Lower Cardiovascular Disease Risk (マサチューセッツ総合病院 2024年4月16日)
Effect of Stress-Related Neural Pathways on the Cardiovascular Benefit of Physical Activity (Journal of the American College of Cardiology 2024年4月23日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年07月22日
夏はビールの飲みすぎにご注意 アルコールは心臓病やがんのリスクを高める 男性だけでなく女性も健康リスクが
2024年07月22日
運動は認知機能を高め認知症予防に有用 ストレスによるメンタルヘルス不調を抱える人で運動の効果はとくに高い
2024年07月22日
がん発症の40%とがんによる死亡の半数は予防が可能 タバコの健康影響が大きい 肥満や過体重にも対策
2024年07月22日
健診で発見された心電図異常で将来の心血管疾患リスクが分かる 将来の重症化予防に貢献 協会けんぽ加入者のデータを解析
2024年07月16日
慢性腎臓病(CKD)は健康寿命を損なう要因 生活改善で重症化予防できる 「若い世代の認知は不十分」という調査結果
2024年07月16日
職場の「燃え尽き症候群」にこうして対策 警告サインを知り早期に介入 「マインドフルネス」を導入
2024年07月16日
【タバコの最新情報】喫煙している人は食事が不健康 内臓脂肪も増えやすい 電子タバコは禁煙に役立つ?
2024年07月16日
「熱中症搬送者数予測サイト」を公開 1週間先までの熱中症搬送者数を予測 名古屋工業大学
2024年07月08日
ストレスはメタボ・肥満のリスクを高める 労働者の長期休職をストレスチェックで予測
2024年07月08日
サプリメントは効果がある? マルチビタミンは「効果あり」「なし」の両論が ビタミンDのサプリは推奨
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶