オピニオン/保健指導あれこれ
ケアのちから

No.1 老年期の医療と介護をつなぐには

ノンフィクション・ライター
中澤 まゆみ
 会ではふたつの試みを行っています。ひとつは「当事者」性をアピールするためにも、必ず「介護家族・介護者」を毎回パネラーに加えること。もうひとつは壇上と会場の垣根を取り払い「会場参加型」にすることです。シンポジウムというのは、ふつうは壇上でほとんどが進行し、会場が参加できるのはせいぜい最後のおまけというものが多いのですが、私たちのシンポジウムでは「会場参加」の枠を1時間近く取っています。

 区との「協働事業」は2011年度で終わりましたが、その後も助成金を得てシンポジウムなど講座活動を続けています。「顔の見える関係」はどんどん増えてきました。在宅医、病院医と医療スタッフ、訪問看護師、ケアマネジャー、介護事業所、介護施設、患者家族会、他の活動団体・・・そしてシンポジウムに毎回300人近く参加してくださる方々です。

 ここでできたネットワークを通じて、介護保険、口腔ケアと嚥下、在宅看取りなどついて、100人規模の公開学習会も年に数回開いてきました。2012年度からは、シンポジウムや学習会へ足を運べない人たちにも「在宅ケア」の情報を届けたいと、医師や看護師、介護専門職を地域に出前する「出前講座」もスタートしました。

 家族や介護者が在宅ケアを続けていくためには、「ケアのちから」のある医療・介護専門職の支援が必要です。それと同時に家族や介護者自身が「ケアのちから」をつけていくことも大切です。そのため私たちの講座活動では「介護者のちからをつける」ことを目的に、「地域の足元」へと情報を届けようとしてきましたが、地域活動に参加し、自分たちで講座をつくりあげてきたことで、いちばん助けられてきたのは私自身かもしれません。

 認知症の友人の「在宅生活」は、訪問診療も2年間導入しながら9年間続きましたが、骨折が多くなってひとり暮らしがむずかしくなったことと、葛藤やこだわりもなくなり穏やかになってきたので、この1月からグループホームでの生活が始まっています。

 彼女の介護度はいまも要介護度2と、驚くほど進行が緩やかです。「彼女らしい生活を」と温かなケアをしてくれたケアマネさんやヘルパーさんたち、そのときどきの彼女の体調を見ながら連携してくれた在宅医と認知症かかりつけ医の、ケアのちからのたまものです。

 現在の住処のグループホームは、取材も兼ねて世田谷区の全ホームを訪問し、選んだ数件のうちのひとつです。グループホームでは本人の「残っているちから」を大事にするのが基本ですが、家ではなにもしなかった彼女が、ホームに移ってからは率先して配膳を手伝ったり、自分よりも状態の悪い人をいたわるようになりました。彼女のコアにあった「優しさ」が素直に出てきたのかな、と思います。

 アルツハイマー病歴10年。認知症の段階としては中期後半だろうと思いますが、ひょっとしたら、私よりも長生きしそうなほど元気な彼女です。

※「せたがや福祉100人委員会」の活動経過やシンポジウム、講座の抄録は、会のホームページに掲載しています。
「せたがや福祉100人委員会」

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