オピニオン/保健指導あれこれ
保健師スピリッツと実践活動
No.3 僕たち、結婚できますか
長野県看護大学名誉教授、 鹿児島大学医学部客員研究員
2016年11月28日
・ 放射線の影響は、放射線を受けた部位にしかあらわれない。
・ 生殖能力への影響を考える必要があるのは、被ばく部位が生殖腺で、かつ、線量が100ミリグレイよりも高い場合である。
・ あなたたちの被ばく部位は指先だけで、生殖腺は放射線に当たっていない。したがって、結婚も子どもをもつことも全く問題ありません。
今はもう、この学生たちもリタイアの年。お孫さんと楽しく暮らしている人もいることでしょう。
被ばくの影響を考えるときは、次を考えることが非常に大事です。
・ 放射線をどこに受けたか(被ばく部位)
・ どのくらい受けたか(線量)
しかし、人々はこの問いを度外視して放射線を怖がります。なかでも顕著であるのが、子どもができなくなるのではないか(不妊)、奇形児が生まれるのではないか(形態異常発生)、子孫に悪影響が及ぶのではないか(遺伝的影響)、という心配です。
次世代に関わる気がかりであり、看護職はこれに対して真摯に向き合うことが大切です。そのためには、次のことをしっかりおさえておかなくてはなりません。
・ 不妊が問題になるのは、生殖腺に高い線量を受けた場合である。例えば、生殖腺やその近くの臓器に放射線治療が行われる 場合など。
・ 形態異常の発生は、人間の発生例は認められていないが、動物実験では、器官形成期に放射線による形態異常が起こることが確認されている。したがって、放射線防護の目的では、胎児が器官形成期(受精後3-8週間)にある時に100-200ミリグレイを超える放射線を受けた場合にはその可能性を考えて対処する。
例えば、腹部CT検査や注腸造影などの、腹部が照射野に入る放射線診断の際には、妊娠の可能性について注意深く問診する必要がある。
・ 遺伝的影響も、人への発生例は認められていない。しかし、動物実験の結果を参考に、放射線防護の観点から、遺伝的影響を考慮した防護基準が設定されている。
最後に、この事故の意味は「今につながっている」と冒頭に述べたことについてです。
図は、1986年のチェルノブイリ原発事故のあと、ギリシャで出生数が大きく落ち込んだことを示しています。ヨーロッパでは、原発事故で奇形児発生という噂が広がり、子どもをおろす母親がたくさんでたのでした。
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