No.3 二年目のいま、保健師自らの立場や役割を一層強固なものに
“新型コロナの次“に備えた安全衛生年間計画の充実、感染症対策の強化を
私の関与している企業では、感染症対策は毎年恒例事業として年間計画の中に位置づいている。ある企業は対人接触が避けられないため、よくみられる感染症対策を演習も含めて毎年実施している。また、ある企業で海外からの人との交流も避けられないため、新型コロナ対策だけでなく、さまざまな感染症対策を強化した。男性の多い企業では、厚生労働省の情報を基に風疹の抗体検査と予防接種の勧奨を実施している。
このような企業では、新型コロナ対策は感染症対策の中の一つとして容易に安全衛生年間計画に追加可能であり、感染症の基本対策は同じということに全担当者が気付き、不足部分の対策の検討が容易にできた。今回を機に、新型コロナ対策にとどまらず、感染症の健康教育が一気に進んだ企業もある。
一方、安全衛生年間計画のない企業や、計画の中に感染症対策が含まれていない企業の中には、何をどこから進めたらよいのかと悩み、手当たり次第に情報収集し、さらに困惑を深めたところもあった。こうした企業はコロナ禍を契機に、安全衛生年間計画の策定を試み、その中に感染症対策を位置付け、可能な形での情報提供や予防対策などを盛り込んでいくことから始めてもよいだろう。
さらには、次の感染症、次の災害に対応できるよう、発生時に慌てて手当てするのではなく、BCP(業務継続計画)への着手や見直しも併せて意識しておきたい。
これからに向けて:
社員の健康度は医療職の立場や役割の強化により向上する可能性大
いつ起こるかもわからないが、起こったら迅速に進めなければならない災害や感染症対策について、産業保健の分野ではこれまであまり重要視されてこなかったように思われる。しかし、こうしたことへの対応はとても目に見えやすい。
冒頭の二つのできごとにもあるように、2020年は医療職・健康管理担当職に対する注目が集まったことは明確であり、このきっかけを今後に活かさずにおくことはありえまい。
保健師が置かれているそれぞれの組織の中で、立場や役割を改めて十分に理解することと、新型コロナをきっかけに一気に進んだ新しい働き方や働く環境に即した産業保健対策の整備拡充について、この一年を振り返りながら今後も計画的に進めていく必要がある。
ある勉強会では20年前、メンタルヘルス対策は「新しい健康課題」と位置付けられていた。新型コロナという昨年からの新しい健康課題は、20年後どのような対策がとられているのだろうか。
社員の関心が健康に向き始め、医療職の活躍がみえやすくなったこの貴重な機会に、最新情報を取り入れながら、それを適切な機会に社内で共有することはもちろん、社内の感染症対策構築の一員として、保健師自らの立場や役割を一層強固なものにしていきたいものである。(完)