No.2 オンライン面談をきれいに魅せる(=スムーズに動かす)ためには
オンライン面談を「②きれいに魅せる(=スムーズに動かす)」ためには
オンライン面談を「②きれいに魅せる(=スムーズに動かす)」ためには、オペレーションをきちんと構築する必要がありました。
コロナ以前の対面式面談の時は、事業所とのコラボヘルスの一環として、特定保健指導の対象者名簿を人事担当者に渡し、面談のタイムスケジュールを作成していただく、もしくは私たちが作成したものを対象者に連絡していただく形でした。
対して、オンライン面談に際しては、事業所側から対象者へオンライン面談のアナウンスおよび保健指導用資料を配布していただき、そのうえで私たちスタッフが各店舗等を通して対象者個人へ連絡し、面談の予約を取っていました。
オペレーションが大きく変わったことで、事業所担当者や保健指導のリピーターにとっては、最初はなかなかわかりづらく、また私たちが不慣れなこともあり、さまざまな戸惑いもありました。が、トライ&エラーで修正を繰り返しながら進めていきました。
デパート健保では、コロナ以前から少しずつオンライン面談を始めていましたが、実施数はなかなか伸びませんでした。普段からパソコン等を使用する仕事ではないことや、 ICT(情報通信技術)リテラシーが高くはない人が多いことがその理由で、人事・総務にオンライン面談実施のお願いをしても、最初から難色を示されることが多くありました。
オンライン面談確立までの壁
ところが、コロナ禍で対面での面談が難しくなった状況が、逆に後押しとなりました。もちろん、実施者側の私たちスタッフや対象者側のICTリテラシーが急に向上したわけではないので、オンライン面談の実施までにはいくつもの壁がありました。
まずは安全性(セキュリティ)の壁。たとえば、面談ツールは安全性が低ければ危なくて使えないものの、高すぎても使いにくい……といった問題がありました。
そのため、日常で使い慣れていないツールをどうやって使っていただくかは、非常に大きな検討課題でした。これは同時に「アプリをうまくインストールできない」などのICTリテラシーの壁とも関係していました。
また、併せて個人情報保護の壁も大きなものでした。さらに、通信状態の壁。実施場所により、面談の音声・画像が途切れ途切れになってしまうこともありました。その他、指導用資料を送る方法やタイミングの壁、通信量の壁などなど。
このようなたくさんの壁を突破しながら、どのオペレーションで実施すれば、よりスムーズに、当健保加入者に利用していただけるかを考え、まずは自分たちで何度も確認をしました。
特に面談のツールに関してはLINE、Zoom、Google Meet、Microsoft Teams、Skype、Facetime、 Google Duoといったさまざまなツールの特性を調べ、また、通信方法に関してはWi-Fiを利用する場合やモバイルデータ通信を利用した場合など、何パターンも想定して検討を重ねました。
その結果、(当然ですが)セキュリティの部分は個人の同意をしっかりとること、オンラインツールはできる限り対象者がアプリをインストールしないで済むもの、通信量を抑えたもの、個人のスマホやタブレットで簡便に利用できるものを採用しました。
現時点では対象者のスマホの機種に合わせてiPhoneの方はFacetime、アンドロイドの方はGoogle Duoを中心に実施しています。ただ、実施開始から1年経ったいまとなっては、また新しい課題も出てきていますので、面談ツールに関しては今後も継続的に検討していく必要があります。
一番の壁は通信量
オンライン面談に個人のデバイスを利用するうえで、一番懸念となったのは「通信量」でした。スマホのデータ通信量を毎月1GB以下で契約されている方も多く見受けられたため、保健指導後の個人携帯利用にできる限り支障が出ないよう、また、通信量の上限を突破した場合でも問題とならないような対策が必要でした。
面談に使用する通信量は、当初各サービスの公式サイトで表示されているものを目安に考えていましたが、実際にテストをすると、利用するデバイスや通信方法(3大キャリア、格安SIM、自宅のWi-Fiなど)によってかなり違い、何回もテストを繰り返しました。
大まかな通信量の目安を把握できた時点で、オンライン面談を実施された方へ経済的な負担がかからないようにと、通信量相当分の対価としてQUOカードをお渡しできるよう準備しました。
このQUOカードを差し上げる対象を、初回にオンライン面談を実施しただけでなく、最終評価のアンケートに回答してくださった方のみとしたため、保健指導継続へのインセンティブにもなりました。
また手前味噌ですが、営業上手なスタッフたちは、電話での保健指導を希望される方へ「オンライン面談を実施していただくとQUOカードを差し上げられますが、いかがなさいますか?」と、電話面談からオンライン面談に切り替える際のインセンティブに活用していました。
オンライン面談数の増加に伴い、予約システム、SMSシステム等を導入
まざまな工夫を凝らした結果、昨年秋の面談実施数は一昨年以前の対面式面談の1.5倍ほどになり、いままでのオペレーションでは面談の実施が追いつかなくなったため、予約システムやSMS(ショートメッセージサービス)配信システムを導入しました。
しかし、こちらもデパート健保の加入者に合わせた形での準備が大変でした。店舗等の現場で働く方がほとんどのため、業務用の個人メールアドレスを持っていない方が大方を占め、また、プライベートでもメールを使うことが少ないことから、メールアドレスを利用するシステムの導入は困難でした。
そこで、対象者がQRコードから直接予約できるシステムを導入しました。また、特定保健指導面談の最終評価アンケートに関しては、それまで手紙で案内を郵送していましたが、携帯番号を使用するSMSにてWEBアンケートのURLを送るようにしました。
さらに、QUOカードをインセンティブにしたものの、金券送付のために郵送料がかかるという課題から、対象者によってはSMSで送付可能なデジタルギフトの「QUOカードPay」も導入しました。
いま振り返ると息つく間もない感じでしたが、さまざまな面から日々オンライン面談のブラッシュアップを重ねてきました。 そのほとんどすべてを、スタッフが頭をひねり、ここでは簡単にご紹介しきれないくらいの工夫をしてきました。
次回は「③効果を示す(=アウトカムを明確にする)」と、オンライン面談により変えてきた“働き方”についてお話しします。
「緊急事態宣言下で前進した特定保健指導のオンライン化と働き方 ―総合健康保険組合の取り組み―」もくじ
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