トピックス・レポート
働く人に伝えたい!薬との付き合い方
-薬・サプリとセルフメディケーション-

⑤風邪薬を飲んだ時に眠くなる理由 抗ヒスタミン薬と副作用

風邪薬(抗ヒスタミン薬)を飲むと眠くなる理由

 ウイルスなどが鼻の粘膜に付着すると、抗原抗体反応により「ヒスタミン」などのアレルギー誘発物質が放出されます。そして、「ヒスタミン」が鼻の粘膜にあるヒスタミン受容体(H1受容体)と結合すると、くしゃみや鼻水といったアレルギー症状が起こります。
 風邪薬の多くには、くしゃみや鼻水の症状を抑える抗ヒスタミン成分が含まれており、ヒスタミン受容体と結合して効果を示します(図2)。

抗ヒスタミン薬の作用と副作用

図2 抗ヒスタミン薬の作用と副作用

a)作 用
抗ヒスタミン薬は、鼻腔にあるヒスタミン受容体をふさいで、放出されたヒスタミンの受容体との結合を阻害することにより、アレルギー症状を抑えます。

b)副作用
一方、ヒスタミン受容体は脳内にも存在し、ヒスタミンはこの受容体と結合し、集中力や判断力、作業能率、覚醒の維持という重要な役割を担っています。抗ヒスタミン薬が脳内に入ると、ヒスタミン受容体がブロックされ、その結果、眠気や鈍脳(自分でも気づかない集中力や判断力、作業能率が低下する)が起こります。

 このような副作用があるため、抗ヒスタミン成分を含む風邪薬には「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください」と記載されています。運転操作が必要な人のために、抗ヒスタミン成分を含まない風邪薬も販売されています。

眠くなりにくい花粉症治療薬

 花粉症治療薬には、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬、ステロイドなどがあり、それぞれ重症度などによって適切なものが選択されます。
 抗ヒスタミン薬(第1世代抗ヒスタミン薬)の副作用(眠気や鈍脳)は、花粉症の治療において、特に好ましくない副作用です。そこで脳内への移行を抑える抗ヒスタミン薬(第2世代抗ヒスタミン薬)が数多く開発され、販売されています。
 ただし眠気・鈍脳などの副作用は、第2世代抗ヒスタミン薬でも起こる可能性があり、「運転注意」の記載のあるものもあります。

抗ヒスタミン薬の進歩

第1世代抗ヒスタミン薬

古くから風邪薬や花粉症治療に使用されていた薬ですが、眠気や口が乾くなどの副作用が起こることがあります。
【例】クロルフェニラミンマレイン酸塩(エスタック)、ジフェンヒドラミン塩酸塩(ドリエル)、ヒドロキシジン(アタラックス)など


第2世代抗ヒスタミン薬

第1世代抗ヒスタミン薬にある眠気などの副作用が軽減されたもので、花粉症治療薬に多く使用されています。
【例】フェキソフェナジン塩酸塩(アレグラ)、ビラスチン(ビラノア)、エピナスチン塩酸塩錠(アレジオン)など(アレジオンには運転注意の記載あり)

 なお、抗ヒスタミン薬は、眠気・鈍脳の他に、排尿困難や口渇、便秘等の副作用が現れることがあります()。これらは、抗コリン作用とよばれ、アセチルコリン受容体に対しても抗ヒスタミン薬が親和性を持ち、アセチルコリンの作用を阻害するためと考えられています。

 抗ヒスタミン薬の主な副作用

副作用 副作用の原因
眠気・鈍脳 中枢への鎮静作用
口喝(口の渇き) 抗コリン作用による消化器系への腺分泌抑制
排尿障害 抗コリン作用による平滑筋の弛緩
視覚障害 抗コリン作用による眼圧上昇
便秘 抗コリン作用による消化管平滑筋の弛緩

次回は「タバコ・お酒と、くすりの複雑な関係」を取り上げます。
これまでの「働く人に伝えたい!薬との付き合い方」

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