ニュース
オーガニック牛乳の脂質バランスは理想的 オメガ3系脂肪酸が豊富
2013年12月12日

有機畜産で生産される「オーガニック牛乳」には、健康に良い脂肪酸が通常の2倍含まれているという調査結果が米国で発表された。「オーガニック牛乳を飲むだけで、脂質のバランスを改善できる可能性があります」と、研究者は指摘している。
「オーガニック牛乳」は、牛を育てる飼料に農薬や化学肥料、化学合成物質(殺虫剤、除草剤など)などを使わず、有機畜産で生産している牛乳をさす。 オーガニック牛乳の市場は、海外では急成長しており、牛乳の消費量の多いデンマークやスウェーデン、米国などで消費量は高い伸び率を示している。 ワシントン州立大学のチャールズ ベンブルック教授(農業社会学)らは、米国で販売されている400銘柄のオーガニック牛乳の栄養成分を調べた。 「オーガニック牛乳と通常の牛乳では、栄養の品質に大きな差が出ていることが判明しました」と、ベンブルック教授は話す。
体に良い脂肪酸が理想的な配分で含まれる
有機栽培で作った飼料で育て、放牧によって良好な健康状態を維持している牛から生産されたオーガニック牛乳には、通常の牛乳に比べ、健康に良い脂肪酸が多く含まれることが判明した。
牛乳などに含まれる脂肪酸には、炭素の二重結合の数と位置などによっていくつかの種類がある。大きく分けると、炭素の二重結合がない「飽和脂肪酸」と、炭素の二重結合がある「不飽和脂肪酸」の2種類がある。このうち二重結合を2つ以上含む「多価不飽和脂肪酸」は、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、悪玉のLDLコレステロールを減らすなど、さまざまな作用をもっている。
多価不飽和脂肪酸の中でも特に注目されているは「オメガ3系脂肪酸」(n-3系脂肪酸)だ。動脈硬化を防ぎ、コレステロール値や中性脂肪値を下げ、心臓病、がん、脳卒中、骨粗鬆症など、さまざまな疾患を改善する効果がある。
研究チームによると、オーガニック牛乳には、このオメガ3系脂肪酸が通常の牛乳に比べ約2倍含まれているという。
一方で、食物油などに含まれる「オメガ6系脂肪酸」(n-6系脂肪酸)も体に必要な脂肪酸だが、過剰に摂取すると体内で炎症を引き起こす要因となる物質に変化するため、とりすぎない方が良いと考えられている。
オーガニック牛乳には、オメガ3系とオメガ6系が理想的な配分で含まれている。牛乳のオメガ6系とオメガ3系の配分は、通常の牛乳では5.8対1だが、オーガニック牛乳では2.3対1。これほどの理想的な配分は、オーガニック牛乳以外ではみられないという。
オメガ3系脂肪酸が魚よりも多く含まれる
オメガ3系とオメガ6系は体に必要な脂肪酸だが、オメガ6系に偏り過ぎると、むしろ心臓病などの発症が増えるという研究報告が発表されている。
欧米型の食事では、オメガ6系とオメガ3系の比率が最大で15対1になっており、脂肪摂取の観点からは勧められないという。オメガ6系とオメガ3系の理想的な配分は2.3対1で、オーガニック牛乳の配分と一致する。
オメガ3系は、マグロやサバ、ニシンなどの魚にも豊富に含まれており、「魚を食べると健康に良い」という通説の根拠になっている。
調査では、オーガニック牛乳には、魚よりも多くのオメガ3系脂肪酸が含まれることも確認された。さらに、通常の牛乳よりも、ビタミンEやベータカロチン、ビタミンAなどの必須栄養素も多く含まれることも分かった。
「通常の牛乳をオーガニック牛乳に置き換えるだけで、脂質の摂取バランスの40%を改善できる可能性があります。欧米人は体に良くない脂質をとり過ぎており、今回の調査結果は大きな福音をもたらす可能性があります」と、ベンブルック教授は強調している。
心臓病リスクの高い子供や、妊婦など、とくに健康的な食事を必要とする人にも、オーガニック牛乳は勧められるという。
Researchers see added nutritional benefits in organic milk(ワシントン州立大学 2013年12月9日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「栄養」に関するニュース
- 2025年08月21日
- 歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 【コーヒーと健康の最新情報】コーヒーを飲んでいる人はフレイルや死亡のリスクが低い 女性では健康的な老化につながる
- 2025年07月08日
- 「大人の食育」を強化 人生100年時代の食育には地域や職場との連携も必要-令和6年度「食育白書」より
- 2025年07月07日
- 日本の働く人のメンタルヘルス不調による経済的な損失は年間7.6兆円に 企業や行政による働く人への健康支援が必要
- 2025年07月07日
- 子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市