オピニオン/保健指導あれこれ
産業保健師と保健指導

No.1 産業保健師と保健指導とは?

大神労働衛生コンサルタント事務所 代表
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
保健師
大神 あゆみ
 一方で、「産業保健師」についてあらためて考えてみたいと思います。残念ながら、「産業保健師」はまだ十分な市民権を得ていると言いがたいです。保健師の成り立ちが公共性のある公衆衛生活動であったことから、その仕事は行政職として位置づけられ教育養成校は厚生省管轄が主流でした。その結果、工場や会社等事業所に就職する保健師は多くありませんでした。しかしながら、職業病対策、勤労者への結核対策を中心に保健医療専門職の需要はあり、医師をはじめ衛生管理者、看護師、少数ながら保健師等により、働く場の労働衛生管理体制整備に貢献しました。その活動が「労働衛生」活動と呼ばれ、国際的動向も踏まえて「産業保健」の呼称になりました。

 では、「産業保健」=「働く人にかかわる保健活動」なのかといえば、説明として十分ではありません。なぜなら、「働く」ことと「健康」の調和の観点が見逃される恐れがあるからです。「仕事による健康障害(健康影響)」は事業活動に付随したものという考え方から、事業主の責任範囲も見極める視点も必要とされますし、逆に、労働者側の働き方による健康障害(影響)の視点も必要です。産業医を含む産業保健専門職は、対象となる事業所の事業活動の継続を前提としながらも、健康障害(健康影響)防止、健康状態に応じた就業の継続(生活の継続)への支援を各職種の職能を活かして行うことが適当と考えられます。そしてそのベースは、「発生した・発生しそうな疾病への対応」ではなく「働き続けられる(生活し続けられる)ことを前提として、健康課題を解決していく組織としての『公衆衛生』」です。

 「産業保健」(活動)を、あえて「保健師」の上に据えたのは、排他的な職能誇示といった卑近な意図によるものではありません。産業保健分野においても前述の保健師職能に意識して着目することが公衆衛生活動に立脚した産業保健活動の広がりが期待できるからです。

 現在、保健師は広く産業保健に関連する雇用場所において、多様な雇用形態で就業しています。多くの職場で業務の効率化が重視され、ともすればこなし「作業」的対応になりがちだからこそ、「産業保健師」と「保健指導」、この2つの「要」のキーワードを表面的理解に留めないようにしたいと考えています。それが、効果的な公衆衛生活動につながることを確信していますし、保健師資格を持つ者はその効果を示していく責務もあるからです。

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