オピニオン/保健指導あれこれ
「産業看護職の多様なキャリア形成」セミナーに取り組んで

No.1 「産業看護職の多様なキャリア形成」セミナーで目指すもの

産業医科大学 産業保健学部 看護学科 産業・地域看護学 准教授
中谷 淳子

 「『産業看護の新たな価値を見出し、産業看護職としてより豊かに生きる』そんなキャリア形成について一緒に考えてみませんか?」

   これは、産業医科大学主催により年1回東京で開催している「産業看護職の多様なキャリア形成」セミナーの案内文に掲載しているメッセージです。

 当セミナーは、元の名称を「産業看護職セミナー」として、平成21年より本学の産業保健推進事業の一環として始まったものです。私は第3回目となる平成22年2月のセミナーから企画委員長を務めさせていただき、その回から「産業看護職のキャリア形成」に焦点を絞ってこれまで計6回開催させていただきました。今回は、このセミナーのねらいについてご紹介させていただきたいと思います。

 仕事をしていれば誰もが、「このまま今の職場で働いていていいのか。」「もっとスキルアップしたい、もっと良い仕事がしたい。でもどうすればいいのか。」等、自分のキャリアについて悩むことがあるのではないでしょうか。そんな時、尊敬できる先輩をロールモデルにしたり、身近な先輩や同僚に相談したりしながら自分なりの答えを見つけていくことが多いかと思います。

 しかしながら、産業看護職は少人数あるいは1人体制で勤務している場合が多いため、気軽に相談できる仲間も少なく、自身のキャリアについて1人で悩んでいる方が少なくありません。そのような状況にある産業看護職の方々に、このセミナーに参加して演者の話を聞き、あるいはそこで出会った仲間との交流を通して自分のキャリアを振り返り、今後のことを考える機会にして頂ければ、との思いからこのセミナーが始まりました。

 当セミナーでは、毎回3~4名の産業看護職にご登壇いただき、ご自身が築いてこられたキャリアの過程を辿りながら、“キャリア選択の転機・決め手となったこと”“産業看護の魅力・やり甲斐”“産業看護を続ける上での困難をどう乗り越えてきたか”“産業看護職としてこれからどうありたいか”などについて語っていただいています。また、産業医からも「産業看護職に期待すること」としてご講演いただいています。

 一口に産業看護職といっても、新卒から産業一筋、臨床看護や自治体保健師を経て産業へ転向、独立開業、同じ職場で続けるのか転職をするのか、企業か労働衛生機関か健康保険組合か、オフィス系か現場系か、大学院への進学、結婚や出産育児、配偶者の転勤など働き方や働く環境は様々であるため、ご登壇頂く産業看護職のバックグラウンドも意図的に多様にしています。

 それぞれの立場で、時には挫折しそうになりながらも意欲的に仕事やスキルアップに取り組む産業看護職の話を聞くことで、参加者が産業看護の魅力を再発見し、「自分も明日からがんばろう!」と新たな気持ちで仕事に取り組んだり、仕事のやり方をちょっと工夫してみたり、自分に必要な知識やスキルについて勉強を始めたり、進みたい方向を発見したりと、豊かな職業生活、豊かな人生を築くための一助にしていただければ、主催者の一人として大変嬉しく思います。

 これまでのセミナーを通して確信したことは、「産業看護の働く場や働き方に“正解”や“王道”はない。どんな条件でも、素晴らしい仕事をしている人、輝いている人はいる。」です。

 次回は、そんな輝いている人たちの共通項にも触れてみたいと思います。

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