「産業看護職の多様なキャリア形成」セミナーに取り組んで
No.2 セミナーから見えてきた、産業看護職の悩みとプロフェッショナルの共通項
産業医科大学 産業保健学部 看護学科 産業・地域看護学 准教授
中谷 淳子
当セミナーでは、午前中の講演後、昼休憩に入るタイミングで紙に記入していただいた質問を回収し、午後2時間ほどかけてこれらの質問への回答を中心に質疑応答を行っています。
この質疑応答は、登壇者の本音、生の声が聴けると毎回評判であり、当セミナーのこだわりでもあります。司会進行役の梶木繁之先生(産業医科大学産業生態学研究所 産業経営学講座講師)の仕切りも素晴らしく、2時間があっという間に経過してしまいます。
質問として毎回多いのが、「意見(相性)の合わない産業医、先輩と上手くやっていくには」、「組織の理解を得るためにどのような努力をしているか」といった仕事の進め方に関することと、「失敗や挫折をどう乗り越えたか」「やめたいと思ったことはないか」、「労働衛生コンサルタントになるためには」、「大学院に進学するためには」、「仕事と家庭の両立をどうしているか」、「転職をする方法は?」といった自分自身のキャリアに関することです。
毎回複数の方から同様の質問がありますので、これらは産業看護職に比較的多く共通する悩みなのではないでしょうか。質問への回答を詳細に掲載することは字数の都合上ここでは控えさせていただきますが、それぞれの登壇者から個性にあふれた本音の回答が得られ、“正しい答え”ではなく様々な考え方を示していただくことができます。
そして、これまで計22名の産業看護職から講演及び質疑応答でのご意見等をお聞きしてきた中で、見えてきた共通項があります。それは、
大きな変化(会社の組織替えや統廃合、スタッフ編成の変化、出産・育児、配偶者の転勤等に伴う余儀なき退職・転職など)にも慌てず、しなやかに対応している(かなりの苦労を伴ったとしても)。
みんな失敗や挫折をして、一度は辞めたいと思ったことがある。しかし上記の変化を含む様々な壁や失敗・挫折を「自身の成長機会」と前向きにとらえ、気を取り直して努力している。
目の前の仕事を誠実に行うために、その都度必要だと思う勉強をしながら、着実に実績を重ねてきている。
自分が行うべき産業保健、産業看護の目的や意義が明確にあり、ぶれない。
フットワークが軽く、業務をより良く遂行するためには社内外を問わず協力を仰ぎ、巻き込む。
まだまだあるかとは思いますが、ざっと思いつくだけでこのような感じでしょうか。これらの意識や行動が成果につながり、社員、会社から信頼され、同じ産業看護職を含む産業保健スタッフからも尊敬される存在になっていくのだと思います。
ちなみに、ご登壇いただく産業看護職は、企画委員会メンバーが「○○さんのお話を聞いてみたい」と推薦することから候補が挙がっていきます。人を惹きつける魅力も、成果と同時についてくるのではないでしょうか。