オピニオン/保健指導あれこれ
公衆衛生看護に必要なマネジメント

No.1 公衆衛生看護活動とマネジメント

保健師、産業カウンセラー、MBA、博士(医学)
栗岡 住子
 1. はじめに

 公衆衛生看護職は地域や組織をマネジメントする仕事であるにもかかわらず、通常はマネジメントを学ぶ機会はありません。私にとって、必要に迫られて手にした経営学の本は、とても魅力的で役立ち、10年前にとうとう経営学を学ぶ大学院に進学してしまいました!

 経営学は、組織を運営するための学問です。個人にできる仕事には限界があるからこそ「組織」が必要となります。そして、経営学は「組織」がどのように運営されると、最も効率的に機能し、社会的に有益なものになるのかを研究する学問です。

 具体的にはマーケティング、経営戦略、マネジメントなどの経営学の知識を生かして、情報収集→課題の抽出→戦略立案→プランニング→実施→評価などを行うための、事業の企画・運営のために必要な内容であり、公衆衛生看護職に求められる学問だと思います。3回の連載で、その一部をご紹介しましょう。

 2. ミッション

 みなさんは、仕事を進めていく上で、「これでいいかしら?」と考えてしまうことはありませんか?
 そんな時には、自分自身が所属する組織のミッションを確認しましょう。

 ミッションを辞書で引くと「任務、使命」という意味ですが、組織のミッションとは「何のために組織が(社会のために)存在するか」というもので、簡単に言えば組織の「役割」です。たとえばGoogle社のミッションは「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」です。このミッションを遂行するためのプランのひとつが、ユーザーの利便性を考えた「図書館丸ごとデータベース計画」です(著作権の問題等障害は多いですが!)。

 公衆衛生看護の活動についても、仕事を進めるうえで迷った場合には、組織のミッションに近いと思う方を選択することです。

 3. ビジョンと行動規範
 ビジョンとは、ミッションを前提に、将来こうなりたいという理想像です。例えば、あなたは小さいときに、「大人になったらこうなりたい」という夢を持っていたのではないでしょうか。仕事についても同じように、将来像を描いたものがビジョンです。前述したGoogle社でいえば「「1クリックで世界の情報へアクセス」がビジョンです。

 組織によっては、ビジョンに近づくための見本となる行動を「行動規範」として示していることもあります。Google社の場合、行動規範に代わるものを「Google が掲げる 10 の事実」 として、(1)ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる、(2)1つのことをとことん極めてうまくやるのが一番、(3)遅いより速いほうがいい(以下省略)と社内外に示しています。

 公衆衛生看護職は組織の一員として活躍することが多いので、自分の所属するビジョンなどを理解することで、自分の仕事を俯瞰的に眺め、保健事業についても広い視野で検討できるようになると思います。また、組織の外からサポートする看護職であっても、サポートする組織のミッションなどを把握しておくことにより、もっと適切なサポートができるようになるでしょう。

*グーグルのオフィス(GoogleのHPより)「Google が掲げる 10 の事実」には「(9)スーツがなくても真剣に仕事はできる」という行動規範もあります!
 >>Google のカルチャー

 4. 保健事業を考える
 保健事業を考える際には、自分自身が所属する組織のミッション等を意識して作成すると、事務方や組織の上層部に届くメッセージを伝えることができます。また、保健事業を考える際には、次の7つの点を考慮すると、周囲の理解が得られやすい事業計画ができると思います。

  • 1) 対象者が望むものは何か?
  • 2) 対象者が望む最終的な「利益」はなにか?
  • 3) 提供すべきサービスは何か?
  • 4) 活用する資源(専門知識、技術、関係機関など)は何か?
  • 5) 組織のミッションに沿ったものか?
  • 6) 公衆衛生看護職本来のミッションや期待される役割にそっているか?
  • 7) 表現は、わかりやすく、簡潔で、魅力ある表現か?

 もし、組織にミッションなどがなければ、公衆衛生看護職として「あなた自身のミッションなど」を持つことで、仕事の優先順位を決めることができたり、ヤル気がアップする等のメリットがあります。日々の多忙さのなかで、自分を見失ってしまいそうになることもあるかもしれませんが、ミッションを自分に言い聞かせ、周囲に理解してもらいながら、理想を目指して一歩ずつ着実に進みましょう!

<参考文献>
1) アーサーアンダーセン・ビジネスコンサルティング:ミッションマネジメント 価値創造企業への変革.生産性出版,P67,1998
2) 大住荘四郎:NPMによる経営革新 WillとSkillの統合モデル.学陽書房,P6,2005
3) バート・ナヌス:1989/産能大学ビジョン研究会:ビジョン・リーダー.産能大学出版部,1994
4) 加護野忠男・井上達彦:事業システム戦略 事業の仕組みと競争優位.有斐閣アルマ,2004

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