オピニオン/保健指導あれこれ
公衆衛生看護に必要なマネジメント

No.2 現状分析のスキル

保健師、産業カウンセラー、MBA、博士(医学)
栗岡 住子
 1. はじめに

 前回は、保健活動を行う際には、あなたの所属する組織のミッションやビジョンを意識することについて紹介しました。今回は対象者に合った最適な保健事業を提供するための現状分析と、その結果から効果的な施策を検討する方法を紹介します。

 2. SWOT分析
 サービスを提供する対象集団にピッタリの保健事業を企画するためには、現在の環境分析が重要です。そんなときにビジネスでは、SWOT(スウォット)分析を行います。SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ったものです。

 SWOT分析は、看護職が所属する組織を取り巻く外部環境(機会・脅威)と、それに対応する組織の内部要因(強み・弱み)の4つの要素をマトリックス表にまとめることにより問題を整理することができます(図1)。

【4つの要素】
 強み:目標達成に貢献する組織の特質
 弱み:目標達成の障害となる組織の特質
 機会:目標達成に貢献する外部の特質
 脅威:目標達成の障害となる外部の特質

 SWOT分析は、一人で行っても良いですが、事業に関わる人が集まって、ワイワイガヤガヤとブレーンストーミング(自由に意見を出し合い、あるテーマに関する多様な意見を抽出する技法)をすると、いろいろな立場からの幅広い要因を確認することができるうえ、お互いの立場を理解し、信頼関係を高める良いチャンスにもなります。

 3. 分析結果の活用
 SWOT分析でマトリックス表ができれば、図2のようにクロス分析を行い、戦略オプション(効果的な施策の選択肢)を考えることができます。

【戦略オプションの例】
(1)「強み」×「機会」
 強みの「イントラでの健康ニュースのアクセス多数」と、機会の「社員食堂の外注業者が協力的」をあわせて、イントラでヘルシーメニューやカロリーを紹介したり、社員食堂の精算時に、カロリー表示や健康増進イベントのPRをしてもらう。

(2)「強み」×「脅威」
 脅威の「肥満増加」に対応するために、強みの「健康診断受診率100%」と「社外の専門家とのネットワーク」を生かして、健康診断の待ち合い場所で、待ち時間に少しずつ聞ける「楽しいダイエット・ミニセミナー」を開催する。

(3)「弱み」×「機会」
 弱みの「健康増進イベントの参加率が低い」という現状に対し、機会の「従業員の平均年齢が低い」という点を勘案し、若年層へのインタビューやアンケートをもとに、若年向けネット上イベントを開催する。

(4)「弱み」×「脅威」
 弱みの「健康増進イベント参加率が低い」と、脅威の「グルメブーム」をあわせて、イベントに参加しない従業員に対して、事業場周辺・飲食店の「ヘルシーランチ」、「ヘルシー居酒屋メニュー」等をイントラ等でPRする。

 SWOT分析の結果により、これからどのように事業を展開すべきかの方向が見えてきます。しかし、詳細な計画を立て始めると、ついビジョンやミッションを忘れてしまいがちになりますが、常に意識して立案しましょう。

<参考文献>
1) 嶋田利広 他. SWOT分析による経営改善計画書作成マニュアル.マネジメント社.2011
2) 嶋田利広. 分析コーチングメソッド. マネジメント社. 2014

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