オピニオン/保健指導あれこれ
「熱中症」の健康障害を防ぐために
No.1 体温調整の仕組みと体温上昇への対応
山田誠二産業保健センター所長
2018年08月21日
ヒトは暑熱環境下でどのように体温調整をするのでしょうか?
恒温動物である人間は、どんな環境になっても、体温を一定に保たなければならない。環境温度が30℃を超える暑熱環境では、伝導・対流、輻射などの物理的熱伝導因子では対応できず、暑熱環境での体温調節機構は、水分蒸発による熱放散しかない。水分蒸発に利用できる液体は体液である。 体液は各臓器に酸素と栄養物を運び、老廃物と二酸化炭素を運び去ることを目的としているが、循環血液量に余裕がある時には、体液を発汗として利用する。 この発汗による体液不足を脱水とよぶ。体液不足(脱水)を補う必要があるが、ヒトなどは、すぐに喪失した水分量を自発的に補うことができない(自発的脱水)。本人は十分に脱水に相当する量の水を飲んだと思っているが、40~60%ほどしか水分を補給されていない。ヒトでは約一日かけて、脱水を調節している。体温上昇による熱中症を防ぐには…
喪失水分量が補われないと蒸発に使用できる水分量が不足する。 体液は本来、各臓器に血液を供給することを第一の目的としているから、循環血液量の確保は最も大切な要件である。循環血液量の確保が優先され、体温調節に体液は使用できない。そうすると、すぐに発汗はとまり、それにともなって体温が上昇し、多臓器障害が起こって死亡する。 対策としては…
1.暑い環境に、なるべく近づかない。
2.脱水に対して、なるべく多くの水分補給をする。
※この際、体液には、細胞の浸透圧を調節したり、細胞の維持にかかわる電解質(イオン)が含まれており、発汗により電解質も失われるので、電解質も補給する。
3.熱中症を理解する。
4.熱中症になる危険信号を知る。
5.熱中症予防策を身につけ、実践する。
などが考えられる。このオピニオンでは、1~5を中心に、熱中症による健康障害を防ぐ方法について説明する。
「「熱中症」の健康障害を防ぐために」もくじ
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