レポート#1 360度動画を用いたVR職場巡視体験実習
2022年9月29日~10月1日、北海道・札幌コンベンションセンターにおいて第32回 日本産業衛生学会 全国協議会が開催されました。本協議会は「連携と協働 -職種、組織の壁を越えて-」をテーマに、ライブおよびオンデマンド配信も行われ、約1,900名(現地参加:約1,140名)が参加しました。
本記事では、全国協議会に参加した保健師・中村 彩さん(株式会社 電通)によるレポートを掲載します。
実地研修「360度動画を用いたVR職場巡視体験実習」
私は、産業保健師1年目から職場巡視を担当し、職場環境改善に繋がる巡視を目指して、人事担当者・現場の責任者と連携して施策を展開しています。
今回、VR巡視体験やグループワークを通じ、巡視に関する知識・技術のブラッシュアップを目指して、実地研修「360度動画を用いたVR職場巡視体験実習」(以下、「VR巡視体験」)に参加しました。
VRでどのように職場巡視するか
VR巡視体験では、「重量物を取り扱う製造業」と「飲料・インスタント食品を中心とした倉庫業」、二つの事業場の事例を基にグループワークを行いました。
VRは、画面が動いた方向に沿って、天井から床を含むすべての景色を確認できるため、参加者がそれぞれツールを用いて巡視し、良かった点・課題点をグループ内で話し合い、その内容を発表しました。
私は普段、執務室を巡視しているため、工場や倉庫を巡視した経験がほとんどありませんでした。そのため、動画を1度視聴しただけでは、良かった点・課題点の評価まで及ばず、状況の把握も十分ではありませんでした。
時には動画を停止して周辺環境を見渡し、繰り返し再生していく中で、通路や避難経路・作業する設備の高さや照度・作業場所周辺の安全確保など、環境が変わっても作業環境管理の視点は変わらないと理解でき、少しずつ評価が進みました。
VRで「リモート巡視」する利点
今回のVR巡視体験を通じ、リモート下での巡視はとても画期的だと実感しました。
たとえば、実際に他社を巡視させていただく機会が得られたとしても、業務の妨げとならないように速やかに巡視しなければならないかもしれませんが、動画の場合、初見では網羅できなかった場合も繰り返し確認でき、確実な情報収集が可能です。
また、動画を活用した職場巡視は、現場に赴いて作業環境を確認することが難しい職場(遠方に複数の拠点・支店がある企業や小規模事業場等の赴くことが難しい職場や、日中と夜間帯で作業・作業環境が変化する職場等)に対するアプローチも実現可能となり、産業保健看護の定義にある「すべての労働者および事業者」を対象とした支援に繋がると感じました。
VR巡視のむずかしさ・課題
一方、匂いや音、温度は確認できず、照度においても正確には把握できませんでした。VR巡視体験でも「工場内の照度が暗いのではないか」という声がありましたが、事例を提供した担当者から「実際に現場を見ると十分な明るさが確保されている」という情報が追加されました。
リモート下での巡視は「画面に映る景色」でしか現場を確認できないため、実際に赴き、五感を使って職場の情報収集をすることも欠かせないと感じました。
また、産業保健職は、業種・業態や働き方に応じた組織の課題やニーズを把握し、支援していくことが求められますが、日々の業務を通じて獲得できる知識・技術には限りがあり、自身の知見がいかに実務に伴う偏ったものであったかを再認識する機会となりました。
「#2 産業保健スタッフとしての災害への備えと対応」へつづく
最新ニュース
- 2025年01月30日
- 2月1日から初めての「化学物質管理強調月間」を実施 化学物質による労働災害や健康リスクの減少を目指す(厚生労働省)
- 2025年01月27日
- 座位時間の長い労働者は睡眠の問題を抱えやすい 立ち上がって体を動かし対策 運動で血流を改善
- 2025年01月27日
- 働く人のストレスに効果的に対策 わずか10分間の「マインドフルネス」でメンタルヘルス改善 スマホアプリの効果を検証
- 2025年01月27日
- コロナ禍のウェルビーイング格差は所得格差に連動 コロナ禍に孤独を感じている人が増加 健康的な高齢化に関する調査
- 2025年01月27日
- 「孤独」と「社会的孤立」は心臓病・脳卒中・感染症などのリスクを高める 人との交流は健康を維持するために必要