トピックス・レポート
日本産業衛生学会 全国協議会

レポート#3 自律型管理における産業保健師の専門性

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 2022年9月29日~10月1日、北海道・札幌コンベンションセンターにおいて第32回 日本産業衛生学会 全国協議会が開催されました。

 本記事では、保健師・齊藤亜希さん(富士通株式会社)によるレポートを掲載します。

第32回 日本産業衛生学会 全国協議会

基調講演「多職種連携で進める自律的産業保健」

 2022年9月29日~10月1日に札幌コンベンションセンターで行われた日本産業衛生学会全国協議会へ現地参加し、いくつもの最新の知見に触れたことで、多くの学びを得たと共に産業保健師の専門性ついて考える契機とすることができました。

 基調講演「多職種連携で進める自律的産業保健」(演者:森 晃爾/産業医科大学産業生態科学研究所 産業保健経営学研究室)では、日本の産業保健はいま、大きな転換点を迎えていると知ることができました。

 たとえば、産業界では多種多様な新規化学物質が使用されることで、これまでの法規制ではカバーしきれず健康障害が頻発している現状があります。また、少子高齢化の進展により年齢にかかわらず労働者の健康の重要性が増し、国の健康寿命延伸政策も相まって健康経営が多くの企業で実践されるようになっています。
 さらには、国連の持続可能開発目標(SDGs)やESG投資の動きもあって、法令を超えた健康への取り組みは外部からの評価対象ともみなされるようになっています。

 このような産業保健ニーズの変化に対してその都度法令改正で対応するには限界があり、これからは移り変わりの激しいビジネスと共に歩むことができる、自律的な産業保健が重要であると学ぶことができました。

産業衛生技術部会シンポジウム「自律的な化学物質管理への転換」

 産業衛生技術部会シンポジウム「自律的な化学物質管理への転換―産業保健分野の専門家の業務はどう変わるか?~産業医・産業看護職の職務の視点から~」では、自律的な産業保健には、それぞれの領域において最も適した能力を有する人材、いわゆるプロフェッショナルが不可欠であると学ぶことができました。

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 化学物質を例として挙げれば、化学物質管理者や化学物質管理専門家といったコアとなる専門性を持った人材が、より重要な役割を担うといわれています。すでに海外では技術専門家、いわゆるハイジニストが広く活躍しており、日本においても、今後は医学面を担う産業医・産業保健師と技術面を担うハイジニストの連携は急務であるといわれています。

これからの産業保健師に求められる専門性とは

 いくつかの講演を拝聴する中で、これからの産業保健において保健師に求められる専門性を考えました。

 教育を受けることで、保健師がハイジニスト等それぞれの専門性を代行することも可能ではありますが、発揮できる専門性は他にあるのではないでしょうか。それは、保健師が従業員の一番身近な専門職であるという強みを活かすことだと思います。
 面談等で従業員の生の声を日頃から聴いており、さらには個・集団・組織を連動させて捉えているからこそ、チェックリストだけでは測れない職場の実状を理解しています。日頃の活動の中で得られる一つ一つの情報を整理し提供することで、より実状に合った柔軟な支援の一助になることができ、質の高い自律型管理へ貢献できると考えます。

 また、それぞれの専門家が単に存在するだけでは現場はうまく機能しないでしょう。専門家同士の連携をデザインする役割を、バランス感覚をもった保健師が担うことで、さらなる価値提供を行えると考えました。そのためには、専門家のよき理解者として、日々継続して知識を身に付ける努力を欠かさないことが重要だと思います。
 つまり、これからの産業保健に携わる者は、プロフェッショナルとしてコアとなる専門性の高さや周辺専門領域の幅広い知識と感性、さらにはマネジメント能力を身に付ける必要があり、これまで以上に大きな役割を担うという自覚が重要であると実感しました。

おわりに:現地参加でしか得られないメリット

 今回、全国協議会へ現地参加したことで、日常業務では得られない多くの刺激を受けることができました。
 オンライン参加には、開催地にかかわらず遠方であっても気軽に参加でき利便性が高いというメリットもありますが、現地参加でしか得られない臨場感や集中しやすさといったメリットはとても大きいと感じました。また、他参加者との交流もできるため、今後も現地参加する機会を持ち続けたいと思います。

 次回、第33回日本産業衛生学会 全国協議会は「多様化する社会と産業保健」をテーマに、山梨県・YCC県民文化ホール、山梨県立図書館にて2023年10月27日~29日にかけて開催予定です。

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