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新型コロナワクチンの継続接種を優先すべきは誰か 名古屋大学ら、2,500人超を縦断解析し「抗体応答3タイプ」を特定

 ポストコロナ時代においても、新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチンの継続的な接種は重要な課題である。感染拡大の波は小さくなり、社会活動も回復しつつあるが、一方で免疫の減衰や変異株への対応を考えると、再接種の必要性は今後も続くとみられる。

 こうした中、限られた医療資源のもとで「誰を優先して接種を続けるべきか」が新たな課題となっている。名古屋大学と福島県立医科大学らの研究グループは、福島ワクチンコホート2,500名超を対象にmRNAワクチン追加接種後の抗体応答を追跡し、継続接種の優先対象を考えるうえで重要な知見を示した。研究成果は2025年9月18日付で国際学術誌『Science Translational Medicine』に掲載された。

抗体応答に3つのタイプ 免疫の個人差が固定的な可能性も

 研究グループは、福島ワクチンコホートに登録された2,526名のワクチン接種者を対象にデータを詳細に分析した。初回2回接種から1回目の追加接種後における血中IgG(S)抗体価の変動を縦断的に追跡した。その結果、ワクチン接種後の抗体応答には、明確に異なる3つのパターンが存在することを明らかにした。

  • 耐久型:追加接種後に十分な抗体価が上昇し、その後も比較的高い水準を維持する集団。いわば「ワクチンの効果が長持ちするタイプ」
  • 脆弱型:追加接種後の抗体価上昇が不十分で、もともと低い水準にとどまる集団。「ワクチンが効きにくいタイプ」
  • 急速低下型:追加接種後には一定の抗体価上昇が見られるものの、その後急速に低下してしまう集団。「ワクチンは効くが、効果が切れやすいタイプ」

 この抗体反応パターンは、初回接種後にも確認され、被験者の約半数が初回接種時と同じ応答パターンを維持しており、免疫応答の個人差が、ある程度固定的である可能性が示唆された。

出典:プレスリリース「新型コロナワクチンの継続的な接種を優先すべきは誰か?」P.2(名古屋大学、2025年9月18日)

早期ブレイクスルー感染は「脆弱型」と「急速低下型」に集中

 研究グループは、この3つのパターン別にブレイクスルー感染の発生頻度を比較した。その結果、「脆弱型」および「急速低下型」では、他の型に比べてより早期に感染が発生する傾向が明らかになった。
 さらに、感染経験の有無で群を比較したところ、追加接種後100日以内における血中IgA(S)抗体価が、感染経験者で有意に低いことが判明した。IgA抗体は主に鼻や喉などの粘膜での防御に関与するため、その低値がウイルス侵入を許しやすくしていたと考えられる。

 この結果から、血中IgA抗体価はブレイクスルー感染リスクを予測する有用なバイオマーカーとして活用できる可能性が示された。

「脆弱型」と「急速低下型」への優先接種が鍵に

 研究成果から継続接種を優先すべきは、抗体誘導が弱い「脆弱型」や抗体低下の早い「急速低下型」に該当する人々であることが浮かび上がった。

 継続接種(ブースター接種を含む)は、時間経過で低下する免疫を補強し、発症・重症化を防止するという目的だけでなく、ブレイクスルー感染そのものを抑制し、感染伝播を減らすという公衆衛生的な役割も期待される。
 従来の戦略は、年齢や基礎疾患の有無といった一律のリスク要因に基づいて実施されてきた。だが、本研究により抗体応答の個人差を把握して優先順位を調整することは、限られた医療資源を効果的に活用できると同時に、集団としての感染の波を抑える戦略にもつながることが示された。

 さらに、本研究で開発された数理モデルとAIを統合した解析手法は、他の感染症ワクチンや将来の新興感染症にも応用可能であり、将来のパンデミックやポストコロナ時代における個人および集団レベルの免疫強化政策の立案に寄与するものとなるだろう。

 研究グループは、「現在流行中の新型コロナウイルス変異株や、将来出現し得る新たな変異株への備えと、社会生活の維持を両立させるためには、新型コロナワクチンの継続的な接種が不可欠です。限られた医療資源を有効に活用し、より効果的なワクチン接種体制を構築するためには、戦略の最適化が重要となります」と、述べている。

【用語説明】

  • 血中IgG(S)抗体価:血液中に含まれる、ウイルス表面のスパイクタンパク質(S)に結合し、ウイルスの働きを抑えるIgG抗体の量を示す値。IgG抗体はワクチン接種や感染によって作られ、この数値が高いほど、体内にウイルスに対する免疫が備わっていると考えられる。
  • ブレイクスルー感染:ワクチン接種を完了した人が、ワクチンによって誘導された免疫の壁を越えて、ワクチンで免疫した同じ病原体(ウイルス)に感染すること。ワクチン接種を完了しても、感染そのものを抑制する免疫の不足や時間の経過による減少のために、感染する場合がある。一方で、新型コロナワクチン接種により、ブレイクスルー感染を起こしても発症や重症化するリスクが下がることが知られている。
  • 血中IgA(S)抗体価:主に鼻や喉などの粘膜で働くIgA抗体の血液中での量を示す値。粘膜のIgA(S)抗体はウイルスの体内への侵入を防ぐ初期防御の役割を担っており、血中IgA(S)抗体価は粘膜IgA(S)抗体価のバイオマーカーとして感染予防効果との関連が注目されている指標の一つ。

出典:プレスリリース「新型コロナワクチンの継続的な接種を優先すべきは誰か?」P.4(名古屋大学、2025年9月18日)

参 考

新型コロナワクチンの継続的な接種を優先すべきは誰か? ~抗体応答不良の集団特定で接種戦略を最適化、感染拡大・重症化抑制へ~|名古屋大学(2025年9月18日)
Longitudinal antibody titers measured after COVID-19 mRNA vaccination can identify individuals at risk for subsequent infection|Science Translational Medicine(2025年9月17日)
新型コロナウイルス感染症について|厚生労働省(2023年7月4日)

[保健指導リソースガイド編集部]
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