ニュース

女性の肩・腰・手足の慢性的な痛みは、運動・フィットネスで改善できる 週2回以上の運動でメンタルも改善

 女性の肩・腰・手足の関節などの慢性的な痛みは、運動・フィットネスによって改善できることが、大阪大学などが実施した研究で明らかになった。
 研究に参加した女性は、筋力トレーニングと有酸素運動を交互に実施する運動に週2回以上取り組み、破局的思考や、腰と膝の機能が改善した。
 運動器慢性疼痛(CMP)は成人の20%にみられ、女性に多く、身体・心理・社会的要因が相互に関与することが知られている。
 肩、腰、手足の関節などの慢性的な痛みを軽減するためには、運動が有効だ。
肩こりや腰痛は運動で改善できる?
 「健康日本21」(第2次)では、健康寿命の延伸は重要な課題とされている。その一方で、平均寿命と健康寿命の差が大きいのは深刻で、とくに女性では、「日常生活に制限のある期間の平均」は12.34年となっており、男性に比べても長い。

 とくに女性に多い慢性疼痛や運動器疼痛は、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を低下させる原因になる。国民生活基礎調査によると、日本人女性に多い病気やケガとして、「肩こり」(11%)、「腰痛」(11%)、「手足の関節の痛み」(7%)が挙げられている。

 運動器疼痛への適切な対処・治療が求められている。日本運動器疼痛学会などが作成した「慢性疼痛診療ガイドライン」によると、肩・腰・手足の関節などの慢性的な痛みを軽減するために、運動が有効だ。

 しかし、運動する意欲があるにも関わらず、痛みのために運動に支障をきたしている女性も多いとみられる。運動を習慣として行うことで、痛みや日常生活での困難さがどれくらい軽減するのかもよく分かっていない。

 そこで大阪大学などは、女性に特化したフィットネスクラブで、運動を開始する女性会員に対して調査を実施し、痛みと運動習慣について多面的にデータ収集を行った。
運動で肩・腰・膝の痛みが改善した
 研究は、大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学講座スポーツ医学の中田研教授を中心に、カーブスジャパン、日本イーライリリーが共同で行ったもの。

 研究では、運動器慢性疼痛の状態や運動での障壁、そして運動を励行できた場合の疼痛を軽減する効果についてデータをまとめ、研究成果は「Scientific Reports」に公表した。

 研究グループは、2,600人のフィットネスクラブの女性新規会員に入会時にアンケートを行い、痛みを評価するスケールである「NRS」で4以上で、運動器慢性疼痛(CMP)があると判定された女性139人を対象に、運動に取り組んでもらった。

 取り組んでもらったのは、筋力トレーニングと有酸素運動を交互に実施するサーキット式のトレーニング。

 1回30分のトレーニングを行ってもらい、3ヵ月後に、痛みの強さをNRS、疼痛による破局的思考をPCS(痛みによる破局スケール)、腰・肩・膝の自覚的機能をそれぞれ、RDQ、Shoulder36、KOOSといったスケールを用いて評価し、どれだけ改善したかを調べた。

 その結果、NRS、PCSは、3ヵ月間で有意に改善した。肩機能では変化はみられなかったのものの、腰・膝のADLスコアは改善した。

 運動頻度により参加者を3群に分け比べたところ、NRSは運動頻度に関係なく全群で有意に改善し、PCS・腰・膝は中強度と高強度の群(週2回以上の運動に相当)で有意に改善した。
3ヵ月の運動で運動器慢性疼痛(CMP)も改善
 このように、1回30分の筋力トレーニングと有酸素運動を交互に実施するサーキット式のトレーニングを3ヵ月続けた女性は、運動器慢性疼痛(CMP)が改善し、とくに週2回以上行うと、破局的思考や、腰と膝の機能改善も得られることが示された。

 3ヵ月以上継続、または反復するCMPは、成人の20%にみられ、とくに女性に多く、身体・心理・社会的要因が相互に関与している。身体機能低下、抑うつ、生活の質(QOL)の低下などを引き起こし、経済損失は年間26兆円(2,000億ユーロ)とも報告されており、医療上の重大な課題となっている。

 「運動療法が第一選択とされていますが、確立された方法はまだありません。運動習慣によって痛みや日常生活における困難さがどの程度軽減するのか、その学術的データを明らかにすることが重要です」と、研究者は述べている。

大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座 スポーツ医学
Chronic musculoskeletal pain, catastrophizing, and physical function in adult women were improved after 3-month aerobic-resistance circuit training(scientific reports 2021年7月22日)

慢性疼痛診療ガイドライン(慢性の痛み情報センター)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2024年04月30日
タバコは歯を失う原因に 認知症リスクも上昇 禁煙すれば歯を守れて認知症も予防できる可能性が
2024年04月25日
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠
2024年04月23日
生鮮食料品店が近くにある高齢者は介護費用が低くなる 自然に健康になれる環境づくりが大切
2024年04月22日
運動が心血管疾患リスクを23%低下 ストレス耐性も高められる 毎日11分間のウォーキングでも効果が
2024年04月22日
職場や家庭で怒りを爆発させても得はない 怒りを効果的に抑える2つの方法 「アンガーマネジメント」のすすめ
2024年04月22日
【更年期障害の最新情報】更年期は健康な老化の入り口 必要な治療を受けられることが望ましい
2024年04月22日
【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
2024年04月16日
塩分のとりすぎが高血圧や肥満の原因に 代替塩を使うと高血圧リスクは40%減少 日本人の減塩は優先課題
2024年04月16日
座ったままの時間が長いと肥満や死亡のリスクが上昇 ウォーキングなどの運動は夕方に行うと効果的
2024年04月15日
血圧が少し高いだけで脳・心血管疾患のリスクは2倍に上昇 日本の労働者8万人超を調査 早い段階の保健指導が必要
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶