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【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査

 はじめての妊娠時に頼れる人の数が、産後のメンタルヘルスを大きく左右し、産後うつ症状は、妊娠中に頼れる人の数が4人以上になると軽減され、妊娠中の社会的なつながりや支えがあると予防できる可能性があることが、429人の初産婦を対象とした調査で明らかになった。

 とくに25歳以下の若年初産婦では、メンタルヘルスを守るために、より多くの支援が必要であることも示された。研究は、東京都医学総合研究所が、初産妊婦を支える社会環境と産後のメンタルヘルスについて調査したもの。

 「妊産婦の妊娠時からの社会的なつながりは、産後うつを予防するために重要です」と、研究者は述べている。

妊娠中に頼れる人の数が4人以上だと産後うつは大きく改善

 産後うつ症状は、妊娠中に頼れる人の数が4人以上になると大きく軽減され、妊娠中の社会的なつながりや支えがあると予防できる可能性があることが、429人の初産婦を対象とした調査で明らかになった。

 とくに25歳以下の若年初産婦では、メンタルヘルスを守るために、より多くの支援が必要であることも示された。研究は、東京都医学総合研究所が、初産妊婦を支える社会環境と産後のメンタルヘルスについて調査したもの。

 産後うつ症状は、妊婦が出産後に経験するうつ症状。産後うつは、母親自身のメンタルヘルスの問題にとどまらず、子供の発達や親子関係、ひいては社会全体に及ぼす影響も大きく、公衆衛生上の重要課題とされている。

はじめての妊娠時に頼れる人の数が産後のメンタルヘルスを左右

 これまで、はじめて妊娠した妊婦(初産婦)は、妊娠出産を過去に経験した妊婦(経産婦)と比べて、産後うつになりやすく、とくに若い初産婦は、社会的孤立や経済的な困難に直面したり、予期せぬ妊娠も多いため、産後うつのリスクがさらに高いことが報告されている。

 一方で、妊娠中に信頼できる人の数が多いと、産後のメンタルヘルスが改善されることが明らかになってきた。しかし、具体的に何人頼れる人がいれば、産後うつ症状の軽減に十分なのかは分かっていなかった。

 そこで研究グループは、東京都内在住の初産婦を、妊娠時から産後まで追跡調査し、産後うつ症状を軽減するために必要な頼れる人の数を調べた。

 その結果、次の2つが明らかになった。

  1. 妊娠中に困ったとき、頼れる人が4人以上いる場合は、産後のうつ症状が大きく軽減される。
  2. 25歳以下の若年初産妊婦に限ると、産後のうつ症状を大きく軽減するために、頼れる人が6人以上必要。

 はじめての妊娠時に頼れる人の数が、産後のメンタルヘルスを大きく左右し、また若い妊産婦は、より幅広いつながりが必要であることが示された。

出典:東京都医学総合研究所、2025年

若年妊婦のメンタルヘルスを守るためにより多くの支援が必要

 東京都医学総合研究所の研究グループは今回、東京都内4自治体在住の初産妊婦を対象とした妊産婦コホート調査である「母子・新生児東京コホート(MINTコホート)」のデータを分析した。

 東京都内4自治体在住の429人を対象とした「MINTコホート」では、参加者が妊娠し、妊娠届を提出した妊娠早期に調査に参加し、その後も追跡調査が継続されている。研究では、MINTコホートの妊娠早期と産後1ヵ月時点のデータを用いて、頼れる人の数と産後のうつ症状は、妊婦自身に回答してもらった。

 研究グループはまず、初産婦全員のデータについて、頼れる人の数と産後うつ症状の関係を調べた。セグメント回帰分析を用いて、両者の関係が大きく変わるポイント(変曲点)を統計的に明らかにした。

 その結果、明らかになったのは次の2つ。

  • 頼れる人の数が3人までは、その人数が増えても産後うつ症状は大きく軽減しなかったが、4人以上になると、人数が増えるごとに産後うつ症状が軽減していく。妊娠中の社会的なつながりや支えが一定の量を超えることで、産後うつ症状を予防できる可能性がある。
  • 25歳以下の若年初産婦に限ったデータで分析をすると、頼れる人の数が5人までは、産後うつ症状は大きく軽減せず、6人以上になったところで症状が軽減した。若年妊婦はより多くの支援がなければ、メンタルヘルスを守ることが難しい可能性がある。
     若年妊婦では、実際にこの水準に達していた2割程度にとどまっており、支援の不足と格差の存在が浮き彫りになった。

妊娠期から切れ目なく支援を届ける地域モデルを

 研究は、東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センターの新村順子主任研究員、山﨑修道副参事研究員、西田淳志センター長らが、東北大学大学院医学系研究科の中西三春准教授らと共同で行ったもの。研究成果は、「Epidemiology and Psychiatric Sciences」に掲載された。

 「これらの知見は、妊産婦支援の仕組みや体制を設計する際の具体的な基準(支援者数の目安)を提供するものであり、とくに支援が行き届きにくい若年層に向けて、重点的・集中的に支援資源を配置する必要性を強く示唆しています」と、研究者は述べている。

 「今後は、研究の成果を活かしながら、妊娠期から切れ目なく支援を届ける地域モデルの開発や、若年妊婦に対するアウトリーチ強化、支援ネットワークの形成支援など、支援者数の"質と量"の両面から包括的に支える仕組みの構築が期待されます」としている。

公益財団法人 東京都医学総合研究所 社会健康医学研究センター
Investigating the association between the number of interpersonal supporters during first-time pregnancy and postpartum depression symptoms (Epidemiology and Psychiatric Sciences 2025年6月27日)

[Terahata]
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