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日常生活での活動性が高い高齢者は認知症リスクが低い 生活範囲別に評価する質問票を開発 国立長寿医療研究センター

 国立長寿医療研究センターは、高齢者の生活範囲別に(戸外~1km、1~10km、10km以上)、1ヵ月間の活動性の高さを6項目の質問で評価する質問票「AMI:Active Mobility Index」を開発した。

 この質問票を用いた、平均年齢74.4歳の高齢者2,740人を対象とした調査では、活動性が高いことは認知症の発症リスクが低いことと関連していることが示された。

 質問票の点数がもっとも高い高齢者では、認知症発症のリスクは51%減少することが分かった。

高齢者の活動性の高さを生活範囲別に評価する質問票

 国立長寿医療研究センターは、高齢者の生活範囲別に(戸外~1km、1~10km、10km以上)、1ヵ月間の活動性の高さを6項目[範囲・頻度・目的・手段・交流・身体活動]の質問で評価する質問票「AMI:Active Mobility Index」を開発した。

 研究は、国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センターの土井剛彦予防老年学研究副部長、島田裕之センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the American Medical Directors Association」に掲載された。

 「生活範囲」とは、個人と周囲の環境との関係にもとづき、家から移動できる範囲。生活範囲や活動性を高く維持することは、健康増進に寄与するとみられているが、認知症との発症との関連性については十分に分かっていない。

 そこで研究グループは、日本の地域在住の高齢者を対象に、生活範囲やそれにともなう活動性が高いことと、将来の認知症の発症との関連を検討するために、同研究グループが開発した「AMI」を用いた検討を行った。

 「AMI」では、生活範囲別(戸外~1km、1~10km、10km以上)に、移動の頻度・目的・手段・交流・身体活動について評価を行い、それぞれの回答に応じた配点を合計し点数を算出する(0~216点)。点数が高いほど活動性が高いことを示す。

生活範囲別に活動性の高さを評価する質問票「AMI:Active Mobility Index」

出典:国立長寿医療研究センター、2025年

活動性の高い高齢者は認知症リスクが低いことを確認 2740人の高齢者を調査

 「AMI」を用いて、大規模な調査・分析を行ったところ、日常生活での活動性が高い高齢者ほど、認知症の発症リスクが低いことが明らかになった。

 研究グループは、大規模コホート研究「NCGG-SGS:National Center for Geriatrics and GerontologyStudy of Geriatric Syndromes」のデータを用い、調査開始時に認知症ではなかった高齢者2,740人(平均年齢74.4歳、女性58.8%)を対象に分析し、この質問票を用いて生活範囲にもとづく活動を評価した。

 認知症の発症は、医療診療情報と介護保険情報を用いて、活動の評価から何ヵ月後に認知症の発症がみられたかをデータ化した。

 最大5年間の追跡期間に(平均追跡期間 53.7ヵ月)、質問票のスコアにより三分位数で3群に分け解析したところ、点数が高い人は、低い人に比べ、認知症発症の割合が有意に少なく、ハザード比が低く、認知症の発症の割合が少ないことが示された。

AMIの点数が高い者は、低い者に比べ認知症発症の割合が少なく、ハザード比が低く、認知症発症の割合が少ないことを確認
  • 「AMI」のスコアをもとに三分位数で3群に分類[T1:52点以下、T2:53-77点、T3:78点以上]
  • 認知症発症のハザード比(HR)は、もっとも点数が低いT1と比較し、T2、T3で低値だった[T2:HR 0.76、95%CI 0.59~0.97][T3:HR 0.49、95%CI 0.36~0.68]
出典:国立長寿医療研究センター、2025年

今後は高齢者の生活範囲の拡大や活動の促進を行う介入方法を開発

 これらの結果から、高齢者は活動性が高いほど、認知症の発症リスクが低い可能性が示された。認知機能低下や認知症のリスクを低減するために、活動性を高めることは、世界保健機関(WHO)のガイドラインなどでも推奨されている。

 生活範囲やそれにともなう活動の評価では、国内外を含めさまざまな方法が用いられているが、これまでの評価方法には、家屋内での活動評価や自立度の評価が含まれているなど、日常生活が自立している高齢者を評価する場合には適さない点があった。

 「今後は、高齢者の生活範囲の拡大や活動の促進を行うために、どのような介入方法が効果的かを検証するなど、さらなる研究の実施が期待されます」と、研究者は述べている。

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
生活範囲別に活動性の高さを評価する質問票(Active Mobility Index)を用いて、大規模な調査・分析を行ったところ、日常生活における活動性が高いほど、認知症の発症リスクが低い事が明らかになった (国立長寿医療研究センター 2025年2月26日)
Life-Space Activities and Incident Dementia Among Older Adults: Insights From a Cohort Study (Journal of the American Medical Directors Association 2025年2月)

[Terahata]
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