低出生体重児で生まれると生殖可能年齢が短くなる傾向が明らかに
国立成育医療研究センター
国立成育医療研究センターはこのほど、出生体重と思春期・成人期の初経・閉経年齢や生理周期の乱れといった「生殖アウトカム」との関連について研究結果を公表した。
研究では2.5kg未満の低出生体重児だった人は、出生体重が3kg台だった人に比べて初経年齢が遅く、また閉経年齢が早いという関連があり、結果、生殖可能期間が短縮される傾向が見られたとしている。
出生体重と生殖アウトカムの関連について、周閉経期(更年期)女性を対象とし、包括的に評価した初めての研究成果となる。
日本では10人に1人が低出生体重児
同センターの女性の健康総合センター・女性の健康推進研究室と、社会医学研究部・森崎菜穂らの研究グループによる研究。
低出生体重児で生まれた場合、成人期に高血圧や糖尿病、心疾患などのリスクが高いことはよく知られている。同様に低体重で生まれた女性は生殖機能へ影響を及ぼすリスクが高いことも報告されていた。
しかし、研究対象が若年層や妊娠適齢期の女性に限られ、女性の生涯にわたる生殖アウトカムを包括的に評価する研究はこれまで行われていなかった。また過去の報告は諸外国の研究だったことから、今回、日本人を対象に出生体重と生殖アウトカムの関連を包括的に評価したことに意義がある。
研究対象は2011年〜16年の次世代多目的コホート研究対象地域(秋田県、岩手県、茨城県、長野県、高知県、愛媛県、長崎県)に居住し、質問に全て回答した40〜68歳の女性約4万800人。アンケートでは自分の出生体重と、初経年齢・閉経年齢・月経不順の有無について質問した。
研究の結果、出生体重が3kg台だった人に比べて、2.5kg未満で生まれた低出生体重児の人は初経年齢が平均して約2カ月遅かったことがわかった。また閉経年齢も約3〜7カ月早かった。そのため結果として、生殖可能期間が約5〜8カ月短縮される傾向が考えられる。
一方、1500〜2499gの低出生体重児と1500g未満の極低出生体重児の人には、月経不順との関連も確認された。
これらの関連は1948年〜59年生まれの年長世代で顕著に見られた一方、1960〜77年生まれの年少世代では傾向が弱まっていた。
研究グループは「本研究は、出生体重とその後の生殖アウトカムとの関連を包括的に報告した初めての研究で、女性のライフコース全体にわたる生殖機能の形成において、出生前の要因が重要な役割を果たす可能性を示唆している」と説明。
日本では10人に1人が低出生体重児、100人に1人が極低出生体重児で生まれる、としたうえで「今後、低出生体重児が増えないための取り組みや、低出生体重児として生まれた方の成人後のプレコンセプションケアのために、本研究の知見が正しく周知され、予防医学の精度の向上に役立つことが期待されます」としている。
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