育児中の男女間でキャリア形成への影響に大きな差 内閣府が調査報告

内閣府男女共同参画局はこのほど、「仕事と生活の調和推進のための調査研究~キャリア形成と育児等の両立を阻害する要因に関する調査~」の報告書を取りまとめた。
調査の結果、育児休業後のキャリア形成については男女間で認識の差があり、特に女性の側に育児負担感が大きく、キャリアをセーブせざるを得ない状況が垣間見られた。
身体的・精神的な負担への不安がキャリア継続に影響
共働き世帯が増える中、男女が家事や育児を分担しながら、どちらか一方ではなく共にキャリア形成とライフイベントを両立できる環境づくりが求められている。こうした背景を踏まえ、育児期にある男女を対象に意識調査を実施し、とりわけ育児休業からの復帰後におけるキャリア形成の実態と阻害要因を分析した。子育て世代のワークライフバランス推進につなげることを目的としている。
調査は、20歳から49歳までで小学生以下の子どもと同居し、末子について育児休業を取得した経験のある男女を対象に行われた(公務員は除外)。実施期間は令和7年1月17日から21日までの5日間で、インターネット・モニターを通じたアンケート方式で実施。事前にモニター6万人へのプレ調査を行い、条件に合致した2853人(女性1587人、男性1266人)から回答を得ている。
育児休業の前後で描いていたキャリアプランに変化があったかどうかを尋ねた設問では、35歳以上の女性の約半数が「当初の計画よりもキャリアをセーブせざるを得ない」と回答した。一方で、35歳以上の男性の約8割は「育休前のプランどおり」あるいは「むしろキャリアアップできた」と答えており、男女間でキャリア形成への影響に大きな差があることが明らかとなった。
また、育児休業後に正社員や正職員以外の形態で復帰したり、離職したりした理由として最も多かったのは「自分の体力や気力が持たないと考えたため」(46.9%)だった。「夕方や夜間等の勤務や残業があったため」(32.8%)、「保育所などの保育サービスが受けられなかったため」(28.1%)を上回っており、キャリア継続に身体的・精神的な負担への不安が大きく影響している様子がうかがえる。
育児をしながら働くことの影響に男女差
一方、育児をしながら働くことが業務評価にどのように影響しているかを問う設問でも、回答に男女差が見られた。
例えば、育児をしながら仕事をしていることが業務への評価に「ネガティブな影響があると思う」と回答した人のうち、45.4%が「責任のある業務を任せてもらえないため、評価されにくく、キャリアアップが図りにくいと考えるから」と理由をあげたが、男女別に見ると男性は55.7%、女性は38.7%と17ポイントの差がついた。この結果から、女性より男性の方が育児中は評価やキャリアアップ面で不安が大きいことがわかる。
同様にネガティブに捉えている人のうち、「時間外労働、宿泊を伴う出張、転勤ができず、仕事のチャンスが減ってしまっているから」答えた人は全体で20.4%いたが、男女別に見ると男性の13.7%に対して女性は24.7%と11ポイントの差があった。このことから女性の側に育児の負担がかかり、自由な働き方が制限されている様子が垣間見られる。
さらに、第一子が生まれる前に希望していた子どもの人数よりも「少なくなった、あるいは少なくなりそうだ」と答え、その理由に「仕事と育児の両立が予想以上に大変だった」と挙げている人がいる。
必要なサポートは何かを尋ねたところ、最も多かったのは、フレックスタイム制やテレワークなど「勤務先の柔軟な勤務制度とその利用のしやすさ」で54.1%だった。この回答について男女別に見ると男性が39.6%だった一方、女性は58.4%が該当したことから、育児と仕事を両立する困難さを女性の方が強く感じていることがわかる。
ほかにも男女差が大きかったのは「配偶者・パートナーの家事・育児への理解や参画」や「病児保育」で、これらの面からも女性の側に育児負担が偏っていることが見て取れる。
報告書では最後に調査結果のポイントと今後に向けた課題・取り組みについて整理しており、「仕事と育児の両立における課題解消のためには、配偶者等の育児等への参加を促進するための性別役割分担意識の解消に向けた取り組みや、柔軟な働き方を実現できる制度の整備に加えて、実際にそうした制度が利用しやすい環境づくりを更に進める必要がある」などとしている。
仕事と生活の調和推進のための調査研究~キャリア形成と育児等の両立を阻害する要因に関する調査~報告書(内閣府) 「仕事と生活の調和」推進サイト(内閣府)

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