オピニオン/保健指導あれこれ
はじめて「産業保健師」として働く人へのエール

No.3 「自分は何者であるか」 はじめて産業保健師として働く人に伝えたいこと

独立行政法人 労働者健康安全機構 大阪産業保健総合支援センター
鈴木 純子

産業保健師のキャリアと学びの場について

 産業保健師は行政保健師と異なり、明確なキャリアの道筋は示されていません。学習の場がどこにあるのか不安になる方もいると思います。そこで、保健師が自立して継続的に自身の実践能力を高めていくためにどのような機会があるのかご紹介いたします

 公益社団法人日本産業衛生学会では、質の高い産業保健サービスを提供できるよう、2015年に「産業保健看護専門家制度」を設立しました。産業保健領域の保健師および看護師の実践能力の育成および質の担保と、保健師が自律して継続的に自身の実践能力を高めていくための継続教育支援が行われています。

 本制度は、「産業保健看護専門家制度登録者」・「産業保健看護専門家」・「産業保健看護上級専門家」の3つの資格から構成されており、それぞれ資格認定試験、審査に合格することで登録できます。合格に向けての準備講座や研修で産業保健に携わるための基礎知識を学ぶことが出来ます

 専門家資格に合格したあとは学会や全国協議会、地方会の定例研修会、日本産業保健師会や公衆衛生看護学会、日本産業ストレス学会、日本産業保健法学会など、関連する団体で開催されている研修に自主的に参加し継続的にスキルアップ、ブラッシュアップを行います。その他にも、産業保健看護職向けの教育を開催しているところもあります。

「学びの場」はきっとある 全国の地域で学べる産業保健

 また、47都道府県にある「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」では地域ごとの研修会を開催しています。

 例えば私の所属している大阪産業保健総合支援センターでは、今年度、経験の浅い産業保健看護職を対象として、産業看護職研修【これだけは知っておきたいシリーズⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ】を無料で開催予定です。産業保健の現状理解、健診結果の活かし方、健康教育の進め方、メンタルヘルス対策など業務に役立つシリーズをお届けしたいと考えています。

 まださんぽセンターを活用したことのない方も、地域の研修会を検索してみてください。参考になりそうな学びの場がきっと見つかるはずです。

 学会や研修会で知り合った保健師仲間もネットワークの1つとしてお互いに活用していきましょう。アンテナを高く、視野を広く持つことが実践力アップに繋がっていくのかもしれません。

「産業保健師」とは何者なのか?

 最後に、「自分たちは何者であるか」をきちんと伝えられるようになりましょう。皆さんは、上司や事業主に「産業保健師は何をする人?」と聞かれた時にどう答えますか?一般の人に理解できる言葉でハッキリと回答できますか? 実は、私自身が以前はきちんと答えられず苦労していました。

 同業者の中では何とか理解されていましたが、上司や従業員、一般の方に説明する時に、以前の日本産業衛生学会産業看護部会が出していた産業看護の定義を示すと「よく分からない」「分かる言葉に直して」と言われてしまいました。

 そのとき、産業保健師として働くにあたり、「自分の言葉で自分が何者であるかを語れるようにならなければいけない」と思いました。対象は?目的は?そのために何をする人なのか?これらを明確にすれば自分が何者であるか、自分の言葉で語れるのではないかと思います。

 日本産業衛生学会の産業保健看護部会が新たに示した「産業保健看護の定義」から抜き出してみました。「自分たちは何者であるか」の説明ができるよう、こちらを参考にしてみてください。

【対象】

 ・全ての労働者と事業者、個人だけでなく集団・組織も含む。

【目的】

 ・健康と労働の調和を保つこと。その先に労働生産性の向上、持続可能な社会を実現すること。

【目的達成に向けて行うこと】

 ・事業者と労働者の自主的な取り組みを支援する。
 ・系統的な情報収集・アセスメントにより個人・集団・組織の健康課題を抽出する。
 ・課題解決に向けて事業場内外と連携を図り、協働および仕組みづくりを行う。

【その先の実現に向けて行うこと】

 ・労働に関連する健康障害の予防
 ・労働者の生涯にわたる自律的な健康行動の確立
 ・労働者が健康で安全に働き続けることができる職場環境づくり
 ・職場風土の醸成

 自分が何をするべきか見失ったときには、一度立ち止まって、これらの言葉を見直し、進む方向の確認をしてみてください。

 この機会にこれから自分はどうしていくか、今後のライフステージとキャリアラダーを併せて考えてみてもいいですね。どんな未来が見えてきましたか?本連載を通じて、皆さんのこれからにエールを送ります。

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