オピニオン/保健指導あれこれ
「外国人小児の発達の遅れ・発達障害に関する早期発見・早期支援モデルの構築」の研究を通してわかったこと

No.2 外国人母と保健師の情報探索行動の調査を通して分かったこと

福岡国際医療福祉大学 看護学部看護学科 准教授
森山 ますみ
 今回は、「外国人の出身国および我が国のECD(Early Childhood Development )事情のデータベース作成」と題する私どもの研究に関連して行った2つの調査をご紹介します。

 一つは、「乳幼児の子どもを持つ外国人母の妊娠・出産・子育て関する情報探索行動」の調査です。乳幼児を持つ外国人母を対象にWebの自記式質問紙調査を行いました。言語的障壁によって母子保健サービス情報へのアクセスができなくてサービスを受けられず、情報が著しく不足した状態で子どもを育てている事例があることが分かりました。

 もう一つは、「保健師による外国人出身国のECDに関する情報探索行動」の調査です。外国人集住自治体の保健センターの保健師を対象にWebも利用した自記式質問紙調査を行いました。保健師による情報収集の状況にはばらつきがあること、情報源としてさまざまなリソースが利用されていることが分かりました。

 保健医療福祉教育サービスが十分に行き届いていない外国人への支援を充実させる必要があることは言うまでもありません。

 その方策の一つとして、ECDデータベースを作成し、今回お話する2つの調査を実施した後、外国人保護者と専門職の方々の双方に向け、妊娠・出産・子育てECDに関する情報を得られる場として、『日本で暮らす外国にルーツを持つ子ども・子育て支援サイト』を開設しました。

ECD(Early Childhood Development )に着目した理由とは?

 2017年より、「外国人の出身国および我が国のECD(Early Childhood Development )事情のデータベース作成」(科学研究費助成事業の助成 2017-21年、JP17H044710001)の研究に取り組んでいます。ECDに着目した理由と外国人母とそれを支援する保健師の情報探索行動に関する調査についてお話します。

 ECD(Early Childhood Development )は、受胎期から初等教育就学前までの乳幼児やその保護者に対して行うマルチセクターのケアと教育活動を通して、乳幼児の最善の全人的発達、すなわち身体的、知的、社会的、情緒的発達を包括的に促すものです(※1)

 WHOも着目しているECDの概念を核として外国人への支援体制構築を進めれば、外国人乳幼児の疾病や障害を早期に発見し支援する体制の確立が早められると考えました。

 保健医療・福祉・教育のサービスの手が届いていないかもしれない外国人の抱える問題を専門職や市民の方々に広く知っていただき、皆で、外国人の子育て支援を推進したいと願っています。

調査1:乳幼児の子どもを持つ外国人母の妊娠・出産・子育てに関する情報探索行動の調査

 まず1つ目の調査として、乳幼児を持つ外国人母を対象にWebを利用した自記式質問紙調査を行いました。

 調査概要と質問紙にアクセスするQRコードを記載した研究協力者募集のポスターを中国語・韓国語・台湾語・英語・タガログ語・ポルトガル語・スペイン語・ベトナム語・ネパール語・インドネシア語に翻訳し、在留外国人集住自治体の保健センター・保育所・幼稚園・こども園・外国人支援団体・日本語教室・宗教施設・スーパーマーケット・外国人支援団体などに、2017年1月から2018年10月、9,864部を配布しました。

 回答数は147、協力してくださった方々の出身国はブラジル60、中国52、その他35で、日本語能力は、「よく/ある程度できる」110、「あまり/全くできない」37、でした。

 利用されている機器は、スマホ125、PC98、タブレット82、利用する情報源は、公的機関提供の情報サイト97(日本語48、母国語57、その他10)、公的機関以外の団体が提供する情報サイト73(日本語29、母国語61、その他13)、SNS47(日本語21、母国語46、その他7)、その他、書籍・雑誌61、広報機関紙28、TV 34、ラジオ 1、新聞8でした。

 人的情報源としては、友人を挙げた人が88と最も多く、病院の医療従事者46、親(夫・自分)45、知り合い37、夫36、職場の同僚・先輩35、保健センター職員(保健師等)33、市町村の担当部署職員26、保育所・幼稚園の職員12, その他3でした。

 下のグラフは、子育てに関する事柄についてどの程度調べたかという問いに対する回答を示したものです。

■図1「妊娠・出産に関する情報探索行動」

 いずれの項目においても、「少し調べたがわからない」という回答が10~20%あり、「全く調べていない」と合わせると10~40%強が十分な情報を得られないままであるということが分かりました。

 母子保健サービスでは、「母子健康手帳の存在を知らない」5、「妊婦健康診査の存在を知らない」11、「日本で妊婦健康診査を受けていない」13、「両親学級・母親学級を受けてない」67、「新生児健康診査を知らない」4、「乳児健康診査を知らない」10、「幼児健康診査を知らない」11、「子どもの予防接種を知らない」1、といった結果でした。また、自由記述には、「情報収集が困難」32、「情報が欲しい」47、「医療職とのコミュニケーションの問題がある」6といった記述があり、言語的障壁によって母子保健サービス情報へのアクセスができずサービスを受けられていない事例が多数あることが分かりました。

調査2:保健師による外国人出身国のECDに関する情報探索行動の調査

 2つ目の調査として、外国人出身国のECDに関する保健師の情報収集行動について、2019年3月から10月、Webも利用した自記式質問紙調査を行いました。外国人集住自治体の保健センター217か所に協力をお願いして調査票等を送り、30の回答を得ました。

 外国人の出身国の妊娠/出産/子どもの健康、保健医療福祉教育サービス、文化的特徴に関する情報収集の状況は、以下の通りでした。

■図2「外国人の出身国の妊娠/出産/子どもの健康、保健医療福祉教育サービス、文化的特徴に関する情報収集の実施状況」

 「全事例」、「だいたいの事例」、「必要時」の3つを合わせると、情報収集を行っている数が一番多い項目は「乳幼児の予防接種」「育児(子育て)に関する文化的特徴」でした。

 こうした情報を得るための情報源としては、外務省、WHOなどの国際機関、国際協力を行うNGO団体、出身国の公的機関、書籍・雑誌の順で回答数が多く、無いという回答も4件ありました。 

 保健師の方々による外国人に出身国に関する情報収集の状況にはばらつきがあること、様々な情報源が利用されていることが分かりました。

 以上の2つの調査を経て、外国人保護者と専門職の方々に妊娠・出産・子育てECDに関する情報を得ていただく場として『日本で暮らす外国にルーツを持つ子ども・子育て支援サイト』の開設に至りました。

 次回は、『日本で暮らす外国にルーツを持つ子ども・子育て支援サイト』の内容についてお話します。

■参考
(※1)出典:三輪千明(2004), 『Early Childhood Developmentの支援に関する基礎研究』 (最終閲覧日:2021年10月15日)

■リンク
『日本で暮らす外国にルーツを持つ子ども・子育て支援サイト』

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