心地よく働ける職場が業績を上げる!
「ウェルビーイング経営講座」シンポジウム
基調講演「トップのためのウェルビーイング経営講演会」海原 純子氏(昭和女子大学客員教授)
私は心療内科医、産業医として診察や企業従業員の健康指導に携わっています。「そのような医師がなぜ経営の話を?」と思われる方が多いと思います。しかし、従業員の健康問題、とくに適応障害と関わっていますと、働く人の健康を改善するには環境や組織、文化から変えなければいけないことを切実に感じます。そのため、健康経営の必要性に気付き、これまで研究を続けてきました。
本日は、健康経営の歴史的背景や日本と海外の違いについて簡単にお話しし、そのあと、この10月に英国から発表されたばかりの健康経営に関するグローバルレポート(CCLA Corporate Mental Health Benchmark Global 100 Reports 2022)を紹介したいと思います。
健康経営の歴史的背景
健康経営の基本は、従業員の健康をサポートすることで企業価値と業績をアップさせるということにあります。
米国では、日本のような皆保険制度がないため、企業が従業員に保険を提供することになりますが、病気になると莫大な費用がかかります。そのため、1990年代から「従業員の健康管理はコストではなく投資」であるという考え方が広まりました。疾病管理に1ドル投資すると3.8ドルのリターンがあるというデータもあり、とくに、喫煙対策やメタボ対策に投資するとリターンも大きく、かつウェルネス業界の収益も増加するという視点です。
欧州では、社会のサステナビリティ(持続可能性)の意識が高く、投資家は、環境・社会貢献・企業ガバナンス、そういう視点で企業の健康経営に関する取り組みに目を光らせています。投資家の目線を気にするといのが欧州の健康経営の特徴です。
一方、日本は、労働安全衛生法を順守しているか否かが重視され、禁煙対策や健診受診率、ストレスチェック実施率などで評価される傾向があります。
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