ニュース
食物繊維をとって脳卒中を予防 1日7g増やすと効果的
2013年04月01日
食事で食物繊維を多くとると、脳卒中を発症する危険性が低下するという研究が英国で発表された。食物繊維の摂取量が1日7g増えると、脳卒中のリスクは7%低下するという。
食物繊維が悪玉のLDLコレステロールを減らし、肥満や高血圧の改善に役立つことは、多くの研究で指摘されている。今回の研究は日本を含む5ヵ国の8件の研究をメタ解析したもので、食物繊維を多く摂取していると脳卒中の発症が減ることを裏付ける結果になった。 研究チームは、1990~2012年に発表された研究論文の中から、米国、日本、フィンランド、スウェーデン、オーストラリアで行われた8件の前向き観察研究を解析した。いずれの研究も、健康な人を対象に、食物繊維の摂取量と脳卒中の発症について調査したものだ。 4件の研究は脳の血管が詰まり発症する脳梗塞などの「虚血性脳卒中」に関するもので、3件の研究は脳の血管が破れて発症する「脳出血」と「クモ膜下出血」を中心に報告していた。 解析した結果、食物繊維の摂取量が1日7g増えると、脳卒中のリスクは低下することがあきらかになった。食物繊維の摂取量を1日に7g増やすと、脳卒中の発症リスクは7%減少したという。これは、これは全粒粉のパスタ1皿、野菜2皿に含まれる食物繊維と同じくらいの量だ。 食物繊維は「食品に含まれる消化酵素で消化されない成分」と定義されている。タンパク質、脂質、炭水化物などは、消化管の中で消化液中の酵素によって分解され体に吸収されるが、食物繊維は消化酵素の作用を受けずに腸を通過する。 「食物繊維の摂取量を増やすために、食生活の全てを変えなければならないというわけではありません。食物繊維を豊富に含む野菜や果物食品を、毎食一皿ずつ加えるといった、ちょっとした工夫で食物繊維を増やせます」と、リード大学栄養サイエンス学部のビクトリア バーリ氏は話す。 日本人の食物繊維の摂取量は、1950年代では1人あたり1日20gを超えていたが、食生活の欧米化や、ライフスタイルの変化にともない、年々低下しつつあるのが現状だ。最近の報告によると、平均摂取量は1日あたり14g前後と推定されている。 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2010年版)によると、1日あたりの目安量は、男性19g以上、女性17g以上となっている。エネルギー摂取量とあわせてみると、おおよそ1,000kcalに対して8g以上の食物繊維を取ることが望ましいとされている。 食物繊維は、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、海藻類などに多く含まれている。さつまいも、かぼちゃ、ごぼう、いんげん豆、たけのこ、ブロッコリー、モロヘイヤ、しらたき、切り干し大根、しいたけ、ひじきなどには、1食中に食物繊維が2~3g含まれている。 食物繊維は、小麦ふすまに含まれるセルロースに代表される水に溶けない「不溶性食物繊維」と、野菜や果物に含まれるペクチンや海藻類に含まれるアルギン酸など代表される水に溶ける「水溶性食物繊維」とがある。 今回の研究では、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維のどちらが、脳卒中を予防する効果があるか、はっきりとした結果は出なかった。 「野菜や果物、小麦ふすま、ナッツ類など、食物繊維を豊富に含む食品を食べることで、脳卒中の発症リスクを減らせます。脳卒中の危険因子は、肥満、喫煙、高血圧などがありますが、身近な食事を見直すことで、はっきりとした効果を得られます」と、研究者は指摘している。 Eating more fibre may lower risk of first-time stroke(リード大学 2013年3月13日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「栄養」に関するニュース
- 2023年08月28日
- 極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
- 2023年08月28日
- カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
- 2023年08月28日
- 週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
- 2023年08月28日
- 高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
- 2023年08月21日
- 朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
- 2023年08月21日
- ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
- 2023年08月15日
- スマホやゲーム機で遊ぶ時間が長いと睡眠障害に 子供の言語力や認知力の発達が低下 食習慣も大切
- 2023年08月08日
- 若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
- 2023年08月07日
- 【がん予防の経済効果】 がんのリスク要因を減らして1兆円超の経済的負担を軽減 生活スタイルや環境の改善が重要
- 2023年08月01日
- 肥満やメタボになりやすい生活習慣は子供のうちに身についている 子供の頃から保健指導が必要