ニュース
「1日1万歩」が良いと言われる根拠は? メタボ改善に必要な歩数が判明
2014年03月14日

「健康のために1日1万歩を歩きましょう」と言われることが多いが、本当に1万歩を歩かなければならないのだろうか? 「ウォーキングには達成目標はありませんが、歩数を増やせば、健康上のメリットは確実にあります」と専門家はアドバイスしている。
「1日1万歩」の科学的な根拠は?
市販されている歩数計や活動量計は、「1日1万歩」を目標に定めているものが多い。この1万歩という歩数目標に根拠はあるのだろうか?
1万歩が健康目標として認知されるようになったきっかけは、意外なことに日本で販売されている歩数計の登録商標名だという。
米国の運動ガイドラインでは、1日に1万歩を歩くことは推奨されていない。「1週間に合計150分の活発な運動を行う」ことが推奨されている。これを満たすために、1日におよそ8,000~9,000歩を歩く必要がある。
日本の厚生労働省が推進している「健康日本21」でも、歩数目標は男性 9,000歩、女性 8,500歩だ。実際の歩数の平均値は、男性7,139歩、女性6,257歩だった(2012年調査)。
「1万歩を達成しなければならないという科学的な根拠はありません。ただし、歩数を増やす取り組みをすれば必ず成果を得られます」と、米ペニントン生物医学研究センターでウォーキングを研究しているキャトリーン チューダー-ロッケ氏は言う。
歩数が1,000歩増えるとウエスト周囲径は10%減少
チューダー-ロッケ氏らの研究チームは、1,446人の米国人を対象に調査を行った。参加者に活動量計を身に付けてもらい、1日の歩数により3グループに分けた。
メタボリックシンドロームの該当者の割合は、「5,000歩未満」のグループに比べ、「5,000歩以上1万歩未満」では40%、「1万歩以上」のグループでは72%少なかった。
1日に1万歩以上歩いているグループでは、男性で69%、女性で72%、それぞれメタボリックシンドロームの割合が減少した。
さらには歩数が1,000歩増えると、お腹のふくらみが引っ込み、スリムな体型になることが判明した。平均して1,000歩増えるごとに、ウエスト周囲径は男性で8~11%、女性で6~17%それぞれ減少した。
それだけではない、総コレステロール値や、善玉のHDLコレステロール、中性脂肪値なども、歩数が多い人では改善されていることが判明した。「1日の歩数が増えれば増えるほどメタボリックシンドロームになりにくく、体型もスリムになることが分かりました」と、チューダー-ロッケ氏は言う。
「1万歩を歩かなければならないわけではありませんが、もしも1万歩歩いたならば、それだけ運動で得られる恩恵は大きくなります。1日の歩数が多ければ多いほど、肥満やメタボリックシンドロームのリスクは低下します」(チューダー-ロッケ氏)。
10分のウォーキングで1,000歩を増やせる
米メイヨークリニックでは、2型糖尿病などの生活習慣病の患者や予備群に、運動に取り組むことを勧めている。具体的には、まずは1日に1,000歩増やすことを1週間続けることを短期目標にして、やがて1万歩まで増やすことを長期目標とすると効果的だという。
もしもあなたが1日に5,000歩しか歩いていないのなら、1日に30分だけ多く歩くことを心がければ、8,000歩に到達できる。余裕があれば、もうあと10分だけ歩けば、1,000歩増やすことができる。
腰やひざに障害があり、長時間歩くのが困難な人も多いが、そうした人でもウォーキングをできる範囲で続けば、多くの場合で病状は改善されるという。
「運動はどんなやり方でも効果を得られます。まずは立ち上がって、歩き始めることです。昨日できなかったことを、今日できるようになれば、やがては成果を得られます」(チューダー-ロッケ氏)。
別の研究では、歩数計を持ち歩いて歩数をカウントすることは、毎日の運動の取り組みを促す励みになることが示されている。
「運動は続けていれば楽しみに変わります。しばらく続けていれば、やがて運動をしないと気が済まなくなるでしょう。ウォーキングには、8,000歩でストップしなければならないという決まりはありません。実際に歩数が多ければ多いほど、効果も大きいことが確かめられています」と、チューダー-ロッケ氏は強調している。
WalkMore: a randomized controlled trial of pedometer-based interventions differing on intensity messages(健康行動プロモーション学 2014年2月15日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「運動」に関するニュース
- 2021年12月20日
- 「住環境」は健康増進にも影響 「断熱と暖房」が血圧や住宅内での活動量に寄与 足元が暖かいことも大切
- 2021年12月08日
- 「今求められる女性の健康サポート」へるすあっぷ21 12月号
- 2021年12月07日
- 「少食+運動不足」の女性は健康リスクが高い 運動習慣のない人も取り組みやすい「女性のためのエクササイズ」動画を公開
- 2021年12月07日
- 筋肉が減る「サルコペニア」は早期に対策すれば防げる 運動を意識して行い、筋肉の量と機能の低下を防ぐ
- 2021年11月30日
- 内臓脂肪が多いと認知症リスクが上昇 脳の異常も発生 内臓脂肪を減らせばリスクを減らせる
- 2021年11月16日
- 【新型コロナ】ウォーキングなどの運動でうつや不安を解消 座ったままの時間が長いとうつリスクが上昇
- 2021年11月09日
- 【世界糖尿病デー】東京都「今日から始めよう!糖尿病予防」キャンペーン 都民の4人に1人は糖尿病かその予備群
- 2021年11月08日
- 肥満のある人・肥満のない人の両方に保健指導が必要 日本人4.7万人の特定健診データを解析
- 2021年11月08日
- 音楽に合わせた軽めの運動が認知機能や気分を向上 「運動は、少し動きを速くして休憩を挟みながら行うと、より楽しく快適に」
- 2021年11月05日
- 「脳・心臓疾患の労災認定基準改正 働き方改革の一層の推進へ」へるすあっぷ21 11月号
最新ニュース
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】保健師がコロナ禍の拡大を食い止めている 保健師の活動が活発な地域では罹患率は減少
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】起床・朝食が遅くなった子供で運動不足や栄養バランスの乱れが 規則正しい食事・睡眠が大切
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?
- 2022年05月23日
- 【子宮頸がん】HPVワクチンの予防効果は優れている 接種9年後の感染率は0% ワクチンの有効率は100%
- 2022年05月23日
- 余暇に軽い身体活動をするほど健診結果は良くなる 活動量の実測データにもとづく世界初の研究
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ