ニュース

薬局でHbA1c値を測定し糖尿病を早期発見 薬局での自己採血が解禁へ

 4月より薬局などでの自己採血検査が正式に認められることになった。身近な薬局でHbA1c値を測定し糖尿病を早期発見するプロジェクトが東京都足立区と徳島県で実施されている。今後はこうした活動が全国に広がりそうだ。

 この4月1日より、薬局などでの自己採血検査が正式に認められることになった。具体的には3月31日に厚生労働省より臨床検査技師法に基づく告示の改正が公布され、自ら採取した検体について、診療の用に供さない生化学的検査を行う施設が新たなカテゴリーとして新設された。

 これは、身近な薬局で簡易検査を行うことで、糖尿病の早期発見・治療につなげようというプロジェクト「糖尿病診断アクセス革命」の成果などを受けたもの。

 これまで薬局等での自己採血検査は法的位置づけが不明確で、いわゆるグレーゾーンとして扱われてきた。これが解消されたことにより、地域の健康拠点として、薬局の取り組みに弾みが付くと期待されている。

糖尿病の早期発見プロジェクトの成果を受け自己採血検査が解禁へ
 矢作直也・筑波大学医学医療系ニュートリゲノミクスリサーチグループ/内分泌代謝・糖尿病内科 准教授らは、糖尿病の早期発見・早期治療開始へ向けたプロジェクトとして、「糖尿病診断アクセス革命」を2010年10月より推進してきた。

 厚労省調査によると、「糖尿病を強く疑われる/その可能性を否定できない人」の合計は2,050万人に上る。糖尿病対策は急務となっており、血液検査による早期発見と早期からの治療の開始は特に重要だ。

 そこで「糖尿病診断アクセス革命」では、検査へのハードルの低い薬局やドラッグストアで簡易検査の機会を提供し、近隣医療機関と緊密に連携しながら、糖尿病の早期発見・早期治療へ繋げていく試みを行ってきた。

 現在は東京都足立区の10ヵ所の薬局と、徳島県の10ヵ所の薬局で展開されている。店頭に小型検査機器を設置し、薬局の利用者が、指先の自己穿刺で糖尿病の判定基準となるHbA1c値を測定する。結果はその場ですぐに分かり、糖尿病が疑われる場合には、薬剤師が医療機関への受診を勧めるという仕組みだ。

 HbA1cは血液中で酸素を運ぶ「ヘモグロビン」とブドウ糖が結合した物質で、過去1~2ヵ月の血糖コントロールの状態が分かる。HbA1c値が6.5%以上であると糖尿病であることが疑われ、6.0~6.4%であると医療機関での検査が勧められる。

 これまでの約3年半の間に約3,000人(糖尿病治療中の人は対象外)が指先HbA1c自己検査を受け、3割近くが糖尿病またはその予備群の疑いで医療機関へ受診勧奨となった。44%の人は定期的な健康診断を受けておらず、「新たなスクリーニング検査の場」が生かされた。

 同プロジェクトは筑波大学を中心に、東京都足立区では、NPO法人ADMS・足立区薬剤師会・足立区医師会、徳島県では徳島文理大学との共同研究として行われている。

薬局でHbA1c測定 結果で出るまでの所要時間は6分
 これまでは薬局で血液検査ができるかという課題があった。臨床検査技師法によると、通常の血液検査は都道府県に登録した衛生検査所で行うことになっている。微量の自己採血による検査はこれに当たる可能性があり、地域ごとに解釈や判断が異なるなども、取り組みを広げる際のハードルとなっていた。

 矢作氏らは、内閣府の規制改革ホットラインに規制緩和を要請。今回の改定により、薬局での自己採血検査に関して、衛生検査所としての登録は不要となった。改定は4月1日付で適用される。医師法や薬事法との関係も整理したガイドラインも近く示される予定だ。

 プロジェクト代表の矢作直也・筑波大准教授は、「糖尿病は初期には自覚症状に乏しいため、検査を受けなければ見つからず、重症化してから発見されることも少なくない。薬局での自己採血検査は今後、いっそう普及していくだろう」と述べている。

糖尿病診断アクセス革命

関連書籍「糖尿病診断アクセス革命」
矢作直也氏が2010年に発行した書籍「糖尿病診断アクセス革命」がインターネットで無料公開されている。プロジェクトの背景や狙いなどについて、さらに深く掘り下げて書かれている。

[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶