ニュース

iPS細胞から作った免疫細胞でがんを縮小 安全な再生医療の実現へ

 ヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った免疫細胞を使い、マウスのがんを小さくする実験に成功したと、東京大学幹細胞治療研究センターの研究チームが発表した。
がんを縮小する効果がより高い
 iPS細胞はさまざまな組織や臓器の細胞に成長させたり、ほぼ無限に増殖させる能力を有していることから「万能細胞」と呼ばれている。

 一方、体内にがん細胞ができると、がんを取り除こうとする免疫細胞の一種「キラーT細胞」が攻撃を始める。ただ、キラーT細胞はやがて疲弊し、がん細胞が増殖してしまう。

 研究チームは今回の研究で、攻撃能力の落ちたキラーT細胞を取り出してiPS細胞に変えて育てると、キラーT細胞が若返り能力が回復することを確かめた。

 実験では、iPS細胞を利用して作ったキラーT細胞を、がんを発症したマウスに投与した。その結果、免疫細胞の働きが活発になり、がんは20分の1ほどに縮小した。

 体内のキラーT細胞を取り出してで増幅し、ふたたび体内に投与する「T細胞療法」と呼ばれるがん治療法に比べ、今回開発された手法はがんが縮小する効果がより高く、生存期間も延びたという。
より安全な再生医療の実現に向け大きく前進
 また、iPS細胞から作製した細胞には、副作用の懸念もある。そのひとつは、投与した免疫細胞が暴走し、増殖に歯止めがかからなくなることだ。

 研究チームは投与した細胞の異常な増殖を止める「ブレーキ」も組み込んだ薬剤を開発。iPS細胞の段階で、特定の薬に反応する「自殺遺伝子」を入れ、副作用があらわれたときにこの薬剤を投与し、活動をとめることができるという。

 使ったのは「アイカスパーゼ9(iCaspase9)」と呼ばれる新しい遺伝子。特定の薬を投与すると、24時間後に80~99%のキラー細胞を細胞死(アポトーシス)に導き、始3日後から検出がほぼできなくなった。

 開発した薬剤、他のiPS細胞やES細胞を利用した細胞療法にも応用可能で、より安全な再生医療の実現に貢献するという。

 研究は、東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センターの中内啓光教授らによるもので、米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に発表された。
東京大学幹細胞治療研究センター
[Terahata]
side_メルマガバナー

「産業保健」に関するニュース

2025年08月21日
令和7年(1月~7月)の自殺者は11,143人 前年同期比で約10%減少(厚生労働省)
2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年08月20日
育休を「取りたい」若者は7割超 仕事と育児との両立で不安も 共に育てる社会の実現を目指す(厚生労働省)
2025年08月13日
小規模事業場と地域を支える保健師の役割―地域と職域のはざまをつなぐ支援活動の最前線―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈後編〉
2025年08月07日
世代別・性別ごとの「総患者数」を比較-「令和5年(2023)の患者調査」の結果より(日本生活習慣病予防協会)
2025年08月06日
産業保健師の実態と課題が明らかに―メンタルヘルス対応の最前線で奮闘も、非正規・単独配置など構造的課題も―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈前編〉
2025年08月05日
【インタビュー】2週間のデトックスで生産性が変わる?
製薬の『アルコールチャレンジ』に学ぶ健康経営
2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶