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肥満はやはり寿命を縮める BMIが5増えると死亡リスクは31%上昇
2016年07月20日
過体重や肥満であると死亡リスクが高まり、肥満度が高いとそのリスクはより高くなるという調査結果を、米国のハーバード公衆衛生大学院と英国のケンブリッジ大学の研究チームが発表した。
重度の肥満の人では寿命が約10年短くなる
過体重および肥満の寿命への影響について調べた大規模な研究で、重度の肥満では寿命が約10年短くなるおそれがあることが分かった。これは、米国のハーバード公衆衛生大学院と、英国のケンブリッジ大学が中心となった研究チームによるもので、医学誌「ランセット」オンライン版に発表された。
発表されたのは、300以上の研究機関の500人以上の研究者が参加したグローバルな共同研究の成果で、1970~2015年に行われた239件の大規模疫学調査から、32ヵ国の1,060万人のデータを解析した。
研究チームは、別の疾患による死亡リスクを取り除くために、喫煙経験者、調査開始時に慢性疾患のある人、調査開始から5年以内に死亡した人のデータを除き、最終的に残ったアジア、欧州、北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの395万1,455人のデータを詳しく調査した。
13.7年間(中央値)追跡して調査した結果、「重度の肥満の人では寿命が約10年短くなり、2人に1人は70歳より前に死亡するおそれがある」ことが判明した。
BMIが5上昇するごとに死亡リスクが31%上昇
解析した結果、BMI22.5~25の「標準体重」の死亡リスクがもっとも低く、BMIが上がると死亡リスクも上昇した。肥満と判定されない「過体重」の段階から死亡リスクは上昇し、BMI25~27.5で7%、27.5~30で20%、それぞれ上昇した。
死亡リスクは、BMI30~35の「肥満(1度)」で45%、35~40の「肥満(2度)」で94%、そして40以上の「肥満(3度)」では3倍近く上昇した。BMI25以上では、数値が5上昇するごとに死亡リスクは31%上昇する計算になる。
疾患別にみると、BMIが5上昇するごとに、心血管系疾患の死亡リスクは49%、呼吸器疾患の死亡リスクは38%、がんの死亡リスクは19%、それぞれ上昇した。東アジア人ではBMIが5上昇するごとに、死亡リスクが31%上昇した。
高齢者より若者、女性より男性のほうが、肥満の死亡リスクへの影響は強い傾向がみられた。
体重が少し多い方が長生きできるという、いわゆる「肥満パラドックス」はみられなかった。また、喫煙者は非喫煙者よりもBMIが低い傾向があるが、喫煙習慣があると死亡リスクが大幅に上昇することも分かった。
肥満は明らかに不健康な状態 改善指導が必要
世界保健機関(WHO)は、国際的な基準として、BMI(体格指数)25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と定めている。
日本人ではBMIが25を超えると2型糖尿病や循環器疾患のリスクが高くなり、内臓脂肪が増えていく傾向がみられるので、日本肥満学会は日本人の肥満を「BMI 25以上」と決めている。
厚生労働省の調査によると、日本でも肥満は特に40歳以上で、この20年間で増え続けている。20~60歳代の男性の28.7%、女性の21.3%が肥満だ。
肥満=食べ過ぎは、高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病を引き起こし、最終的に、脳卒中や心筋梗塞などで命を落とす危険性が高まる。健康を維持するためには、肥満を解消し、標準体重を維持することが重要だ。
研究では痩せの場合にも死亡リスクの上昇がみられた。BMI指標には下限も設けられている。これは「高齢者の低栄養」という問題があるからで、食事での摂取エネルギーが少ない状態が続くと、筋力が低下するため、転倒や寝たきりのリスクが高まる。免疫の働きも低下するので、肺炎などの呼吸器疾患も増える。
「これまで"肥満パラドックス"を理由に、肥満や過体重の解消に消極的な人が少なくなかった。今回の研究では、肥満は明らかに不健康な状態であり、2型糖尿病や心血管疾患などのリスクを高めることが確かめられた。医師や保健指導に従事している専門家は、迷わず肥満の改善を指導することが望ましい」と、ハーバード公衆衛生大学院のフランク フー教授は述べている。
As overweight and obesity increase, so does risk of dying prematurely(ハーバード公衆衛生大学院 2016年7月13日)Body-mass index and all-cause mortality: individual-participant-data meta-analysis of 239 prospective studies in four continents(The Lancet 2016年7月13日)
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