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日本の「喫煙対策」は待ったなし 4つの方法でタバコを今度こそやめる

 たばこを吸うことで、多くの健康障害が引き起こされる。また、たばこの煙は、自分だけではなく周囲への悪影響も引き起こす。糖尿病の人にとって、喫煙のもたらす健康障害は特に深刻だ。
 たばこを吸う人の禁煙を促す「脱たばこキャンペーン」が本格化してきた。たばこを確実にやめるための「4つの心得」も公表されている。
受動喫煙防止ロゴマークを発表
周囲の人にも多くの危険が
 喫煙は、吸っている本人の健康にとって良くないが、周りの人の健康にも悪影響を及ぼす。受動喫煙が健康に悪影響を及ぼすことは、科学的に明らかで、心筋梗塞や脳卒中、肺がんに加え、子供の喘息や乳幼児突然死症候群などのリスクを高めることが分かっている。

 厚労省は、受動喫煙防止対策の推進を訴えかけるロゴマークを公表した。たばこの煙に困っている子供の顔をイメージした作品を採用した。公共施設や医療機関、企業などのホームページや印刷物に自由に使えるフリー素材として公開されている。

 厚労省が発表した「2015年国民健康・栄養調査」によると、習慣的に喫煙している人の割合は18.2%で、過去最低を更新した。男性は30.1%で2014年調査より2.1ポイント下がり、女性は7.9%で同0.6ポイント下がった。

 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて受動喫煙の規制強化を検討しており、「受動喫煙の対策が必要であるという認識を広めて、社会的な機運を高めたい」と述べている。
たばこをやめるための4つの心得
 日本循環器学会の禁煙推進委員会によると、たばこの煙にはニコチンに加え、一酸化炭素をはじめとする7,000種類以上の物質が含まれている。たばこの煙に含まれるニコチンは、交感神経系を刺激して、末梢血管の収縮と血圧上昇、心拍数の増加を引き起こす。

 さらに、たばこの煙に含まれている一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンと結合して、酸素欠乏状態を引き起こす。たばこの煙はコレステロールの変性を促し、血管内皮を傷つけるだけでなく、善玉のHDLコレステロールを減少させ、動脈硬化を促進する。

 脳には、ニコチンが結合すると快感が生じる受容体がある。たばこを吸うと、ニコチンが肺から血中に入りすぐに脳に達する。ニコチンがニコチン受容体に結合すると、快感を生じさせる物質(ドパミン)が放出される。ドパミンが放出されると快感が生じるので、さらにもう一度たばこを吸いたくなる。

 これを繰り返すうちに、イライラなどの離脱症状(禁断症状)が現れるようになる。それを避けるため、喫煙をやめられなくなる。たばこを吸い続けており、やめようと思ってもやめられない状態は、「ニコチン依存症」という立派な病気だ。

 最近の研究で、ニコチン依存症に対して薬物療法が、心理的依存に対しては行動療法が効果的であることが分かってきた。日本循環器学会は「たばこをやめるための4つの心得」として、次のことをアドバイスしている。

たばこをやめるための4つの心得
吸いたい気持ちをコントロールすることが必要

1. 喫煙と結び付いている今までの生活行動パターンを変える
 「洗顔・歯磨き・朝食など朝の行動順序を変えてみる」「食べ過ぎない、夜更かしをしない」など、生活行動パターンを変えてみる。

2. 喫煙のきっかけとなる環境を改善する
 「たばこ、ライター、灰皿などの喫煙具をすべて処分する」「たばこが吸いたくなる場所を避ける」「自分が禁煙していることを周囲の人に告げる」など、喫煙のきっかけとなる環境を変えてみる。

3. 喫煙の代わりになる行動を実行し、
  たばこ以外のストレス対処法をみつける

 「落ちつかないときに深呼吸をする」「ウォーキングや体操などの運動をする」「庭仕事や部屋の掃除をする」「身の周りを整理する」「音楽を聴く」など、ストレス対処法になる行動をする。

4. 医療機関を受診する
 たばこをやめられないのは、意志の弱さのせいではなく、たばこに含まれるニコチンのせいかもしれない。禁煙外来では、生活環境などの見直しを行い、禁煙補助薬を使用して「ニコチン依存症」の治療が行われる。禁煙外来を利用すれば、たばこを無理なくやめられる可能性が高い。
喫煙がんの原因に 心疾患・脳卒中・糖尿病のリスクも上昇
 たばこはさまざまな健康障害を引き起こす。厚生労働省の検討会は9月に、「喫煙と健康影響」に関する報告書(たばこ白書)をまとめた。

 白書では、喫煙と病気の因果関係を、「レベル1(十分)」「レベル2(示唆的)」「レベル3(不十分)」「レベル4(ないことを示唆)」の4段階で科学的に判定した。

 たばこの煙には60種類以上の発がん物質が含まれている。煙の通り道はもちろん、唾液や血液に移行したり、消化管や血液の経路などでもリスクが高くなる。たばこ白書では、喫煙はさまざまな部位のがんを引き起こすことから、喫煙とがんの関係は「レベル1」と判定された。

 たばこは循環器疾患も引き起こす。喫煙によって血管の壁が傷つき細胞の機能不全につながり、血液の成分も血栓が作られやすくなり、酸素運搬能が低下するなど複数の要素が循環器に影響する。虚血性心疾患、脳卒中、腹部大動脈瘤、末梢性動脈硬化症についても「レベル1」と判定された。

 たばこは、2型糖尿病の発症とも関連がある。喫煙は交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、インスリンの働きを妨げる作用がある。さらに、たばこを吸い続けると、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病性腎症などの合併症のリスクも高まる。禁煙によって耐糖能異常が改善するなど、リスクが減少するのは明らかで、「レベル1」と判定された。

 たばこは喫煙者以外にも受動喫煙の弊害をもたらす。受動喫煙によって肺がん(レベル1)、乳がん、鼻腔・副鼻腔がん(レベル2)のリスクがそれぞれ高まる。受動喫煙は虚血性心疾患と脳卒中のリスクも上昇させる(レベル1)。
日本でも屋内の100%禁煙化を目指すべき
 世界保健機関(WHO)は「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(FCTC)を2005年に制定、2008年にはたばこ対策を7項目にまとめた「MPOWER」を作成した。

 厚労省研究班の白書によると、日本で達成度が高いのは「たばこの使用と予防政策のモニター」のみで、「受動喫煙の防止」「脱たばこ・メディアキャンペーン」「たばこの広告・販売・後援の禁止」の3項目は「最低」だ。

 日本では、2013年の健康増進法や2015年の労働安全衛生法の改正により受動喫煙を防止することが「努力義務」とされた。学校や病院、官公庁などの禁煙化が進んできたが、喫煙室を設置してもたばこ煙の漏れが防止できないことや、喫煙可能な店舗での受動喫煙などの問題はいまだ残っている。

 世界の49ヵ国では、医療機関や大学・学校、飲食店、公共交通機関などの公共の場で「屋内全面禁煙」とする法規制をしている。そうした国では、喫煙関連の疾患による入院リスクが減少したことが報告されている。

 白書では受動喫煙対策として「日本でも喫煙室を設置することなく、屋内の100%禁煙化を目指すべきだ」と強調している。

日本循環器学会禁煙推進委員会
たばこと健康に関する情報ページ(厚生労働省)
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