ニュース

わずか10分の「階段昇降」が実践的な運動に 階段なら続けられる

 高負荷と低負荷の運動を交互に繰り返す「インターバル・トレーニング」に、「階段昇降」を組み合わせると、わずか1日10分の運動でも心血管性フィットネスが向上し、体力がつくことが判明した。
 昼食後の休み時間や、家事の合間、休みの日の自宅でも、少しでも多く運動の時間をつくることで、長い間に大きな差が出てくるという。
運動はいつどこでやっても効果がある
 運動療法には万能薬のような作用がある。運動を続けることで、糖尿病や高血圧が改善し、心筋梗塞や脳卒中、腎臓病、がんなど、さまざまな病気の予防や改善につながる。

 運動は体の老化を遅くする最良の手段になるだけではない。メンタル面でも良い効果があり、うつや認知症の予防・改善にも役立つことが確かめられている。

 しかし、運動をすることで多くの恩恵を得られることは分かっていながら、「時間を毎日つくるのが難しい」という理由で、運動を始められないという人は多い。

 米国の運動ガイドラインでは、18~64歳の成人はウォーキングなどの適度な有酸素運動を週に150分以上、あるいは筋力トレーニングなどを取り入れた活発な運動を75分以上行うことが勧められている。

 しかし、米国疾病予防管理センター(CDC)の調査によると、推奨された量の運動を実際に続けている人は5人に1人だという。

 そうした人に福音となる研究が発表された。「インターバル・トレーニング」を取り入れれば、1日に10分の運動でも効果があるという。週に3回以上行えば、たとえ数分の運動でも、体を変えることができる。
階段の昇降は、いつでも、どこでもできる運動
 「インターバル・トレーニング」は、高負荷と低負荷の運動を交互に繰り返すトレーニング方法。やや早歩きのウォーキングとゆっくりとしたウォーキングを数分毎に繰り返すのが代表的だが、これに「階段昇降」を取り入れると、より効果的であることが判明した。

 「階段の上り下りは誰でも、いつでも、身近でできる運動です。わずか20秒の階段昇降であっても、やらないでいるよりも、やった方が良いのです」と、カナダのマックマスター大学運動生理学部のマーチン ギバラ教授は言う。

 過去の研究では、階段昇降の運動は週に70分行わないと効果がないと報告されていたが、ギバラ教授の研究では、それより少ない時間でも十分に効果を得られ、心血管性フィットネスが向上することが判明した。それを実現するのが「インターバル・トレーニング」だという。

 「インターバル・トレーニング」は運動を日常生活の中に取り入れるために、非常に便利で実行しやすい手段となる。運動の時間を作れない人でも、「インターバル・トレーニング」であれば、生活の空いた時間にできるので、続けられる可能性が高い。運動の強度を高めれば、短時間のトレーニングでも効果を得られることが実証されており、近年は特に注目されてきている。
短い時間の階段昇降でも効果はある
 階段昇降はいつでも行え、しかも無料でできる。「いつでも身近にできる階段昇降が、血管や心臓を健康にする有益な選択肢になります。しかも時間的な効率の点でもメリットが多いのです」と、ギバラ教授は言う。

 研究チームは、運動週間のない1日に座ったまま過ごす時間の長い31人の女性を対象に、2種類の運動に取り組んでもらった。

 ひとつは、階段昇降をできるだけ早く20秒間行ってもらい、次の20秒間はゆっくり昇降してもらうという「インターバル・トレーニング」。参加者に1回30分、週に3回行ってもらい、運動の前後に10分間のウォームアップとクールダウンも行ってもらった。

 6週間の実験の結果、参加者の最大酸素摂取量は12%増え、心血管性フィットネスが改善したことが明らかになった。これを、エアロバイクで自転車こぎを30分、休みなしに行った場合と比較したところ、「インターバル・トレーニング」と体力の向上には差はなかった。

 もうひとつは、階段昇降をできるだけ早く60秒間と、ゆっくりとした昇降を交互に、3回行ってもらうというもの。このシンプルな運動でも、6週間続けると最大酸素摂取量は7%改善した。階段昇降を短い時間だけ行った場合にも、十分ではないにしても運動の効果を得られることが確かめられた。
運動はどんな治療薬よりも効果のある最良の薬
 「階段昇降は、昼食後の休み時間に、家事の合間に、休みの日の自宅でも、すぐに取り組める運動です。実際にやってみると、階段を上るのはなかなかハードな運動ですが、呼吸を整える時間を取り入れれば、誰でも安全に効果的に取り組める運動になります」と、ギバラ教授はアドバイスしている。

 1日に40分のウォーキングやエアロビクス運動、自転車こぎを行ったり、スポーツジムやプールに通うのが難しいという人でも、10分間の階段昇降であれば問題なく行えるはずだ。

 ギバラ教授は、運動に体が慣れて余裕が出てきたら、本格的な「インターバル・トレーニング」を取り入れることを勧めている。具体的には「3分間ゆっくり歩く→3分間息が上がる程度に活発に歩く→また3分間ゆっくり歩いて呼吸を整える」という運動を繰り返すことだ。

 1日30分間行うのが目標で、運動の前のウォームアップと、後のクールダウンを加えるとさらに効果的だという。

 「運動はどんな治療薬よりも効果のある最良の薬です。運動経験のない年齢を重ねた人にとっても、運動は効果があります」と、ギバラ教授は強調している。

Researchers find brief, intense stair climbing is a practical way to boost fitness(マックマスター大学 2017年2月7日)
Brief Intense Stair Climbing Improves Cardiorespiratory Fitness(Medicine & Science in Sports & Exercise 2017年2月7日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「運動」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
2025年07月07日
日本の働く人のメンタルヘルス不調による経済的な損失は年間7.6兆円に 企業や行政による働く人への健康支援が必要
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年07月01日
生活改善により糖尿病予備群から脱出 就労世代の1~2割が予備群 未病の段階から取り組むことが大切 日本の企業で働く1万人超を調査
2025年07月01日
東京糖尿病療養指導士(東京CDE) 2025年度申込を受付中 多職種連携のキーパーソンとして大きく期待される認定資格
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶